No.209(2008年11月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
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発行日/毎月1日発行

白石蔵王地区 9月例会報告

「地域資源の付加価値を高める仕事づくり」


はたけなか製麺(株) 社長 佐藤 隆氏

 「みちのく手延べ温麺」で有名なはたけなか製麺は、創業が明治23年、118年の歴史を持ち、麺づくり一筋に、近代化への取り組みとともに、伝統の継承を大切にする「高級品のはたけなか」として多くの皆様に支えられ今日に至っています。事業を継承する以前、薬剤師であった佐藤社長は、製薬会社の第一線で35年間「健康」と取り組み続け、そこで学んだ知識と“麺”を結び付け、消費者の“健康・長寿・美味”の実現に少しでも役立ちたいと、社員と一丸となった経営に日々取り組んでいます。

 まず、私の義理の父親であり会長である佐藤孝一のご紹介をします。会長は現在85歳で白石市の商工会議所の名誉会頭、社会福祉法人白石ひまわりの理事長も務めております。戦時中は日本海軍のゼロ戦のパイロットをしており、8月15日の出撃寸前で戦争が終わり、故郷に戻ってきました。25歳で社長に就任し、55年の社長歴を持ち現在のはたけなかの礎を築きました。
 この岳父が、平成11年の冬、当時東京で働いていた私のところへ突然訪ねてきて「会社を継いでくれ」と言われたのが、私の現在に至るまでのきっかけとなりました。
 当時私は56歳で、製薬会社の営業から本社勤務に移り部長職をやっていましたが、55歳で役職定年になったのをきっかけに、「これまで34年も頑張ったのだから家を継いでくれ」と言われ、躊躇することもなく素直に「はたけなか」で働くことを決意しました。そして平成13年に入社し3年間の「経営者見習い」の後、社長に就任し、5年目を迎えています。

【地域資源活かし、開発した「あかもく麺」】

 会長は、私が社長に就任すると「仕事は全てお前に任せた」と全ての面で信頼をしてくれました。先程も述べましたが、伝統を継承するとともに、薬剤師の経歴も活かしたいと考え、「美味しくて体に優しい麺づくり」をテーマに商品開発を始めました。
 今回開発したのが今年の3月に発売した、「神馬草麺」(うどん・そうめん・温麺)です。「神馬草」というのは、海藻である「あかもく」のことをいいます。
 この「あかもく」とは、松島の漁師さん達の間では「海の厄介者」「ジャマモク」といわれていたものです。
 なぜ厄介者かというと、栄養分は豊富といわれているものの、食べるには適さず、さらに秋から春にかけて成長が著しく、5、6月には7、8メートルまでになる海藻なのです。そして「あかもく」は6、7月になると海に流れ始めて、漁船のスクリューに絡まったり、カキや海苔の養殖棚にも絡んでしまうなど、直接漁獲にも影響が出るなど、漁師さんの間では「処分に困る厄介なもの」として扱われてきたそうです。
 そこで「健康・長寿・美味」の商品開発を考えていた私は、海水中の栄養をふんだんに吸収しながら大型化し、食物繊維(特にネバネバ成分のフルコダイン)やポリフェノール、ミネラルを多く含んでおり、体の抵抗力を高め、抗酸化能も高いこの「あかもく」に着目し、「あかもく」を活用した商品の開発に着手しました。そして“麺”とのコラボレーションの試行錯誤を繰り返し、やっと商品化することが出来たのです。“海の厄介者”が“食の救世主”となり、新食感と海草の旨み、磯の香りが楽しめる、つるりとした美味しい麺に仕上げることが出来ました。
 この商品の開発には、麺類という従来の「枠の中」だけの発想では実現することは出来なかったと思います。薬の世界での「健康」に対する強い思いが実現の原動力にもなっているのだと思います。

【地域資源【経営理念と事業方針】

 会長は毎朝7時40分頃になると会社の前に立ち、出社する社員一人ひとりに声を掛けます。特に元気のない社員に対しては特別大きな元気な声で挨拶をして、全社員を出迎えます。そして全員で行なうラジオ体操後、朝礼を行ないます。その会長が自分の教訓として掲げていることがあります。それは「信用」と「お客様の大切さ」です。
 私が事業を継承し、経営理念創りを考えたとき、まずはこの二つを理念にしようと思いました。そして「あかもく麺」の開発のところでも述べたとおり、麺を通して「美味しくて体に良いもの」を作りたいとも強く思っていましたので、経営理念の中にも盛り込み、「信用とお客様を第一に、麺を通し健康と美味しさで社会に貢献します」と成文化を行いました。
 また、事業方針の根幹は、「良い研究、良い生産、良い販促、良い利益、良い給料」として、最初はものづくりから始まり、良いものをつくり、良いものができたら、良い生産をする。簡単に「良い」と言っていますがこの「良い」という意味は沢山の意味が込められています。生産効率、品質、工場の安全、商品の安心・安全、改良など、あらゆるものが含まれています。そして商品を売るための販促として、社員自らがわが社の商品の良き理解者、お客さんとなり営業をしていただく。ただ売るだけではなく、みんなが連携して正しい売り方をする。そして社員みんなが正しい売り方をして、正しい利益をあげる。そしてその得られた利益を良い給料として還元していく。これが私の中での「よい」として捉え、それがこの事業方針になりました。

今月の内容

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