第3分科会
設営:共同求人委員会

若い力と共に時代を切りひらく企業づくり  

パネラー
(株)ホットマン・
イエローハット
社長 伊藤信幸氏
パネラー
(株)ヴィ・クルー
社長 佐藤 全氏
パネラー
東北福祉大学
助教授 
千葉喜久也氏
コーディネーター
日東イシダ(株)
社長 鍋島孝敏氏

鍋島 宮城同友会で共同求人活動がスタートしたのは15年前です。 それから時代は大きく変わりました。 そんな時代に我々中小企業が人を採用し育てていくというのはどういうことでしょうか。 また、 企業にとって新卒採用し若者を育て会社の戦力にしていくことは社会的にどんな意味を持ってきているのでしょうか。 今回は企業側だけではなく東北福祉大学の千葉先生にも加わって頂き、 産学でこれからの時代の若者を育てるということを広い視点で捉える場にしたいと考えています。

なぜ新卒採用なのか?

鍋島 多くの中小企業が 「なぜ新卒を採用しなければならないのか」 と考え、 また、 新卒採用になかなか踏み切れないでいるというのが現状だと思います。 そのような中、 新卒採用に取り組んできた企業の事例として、 そのきっかけと経緯についてお聞かせください。 まずは佐藤社長からお願いします。
佐藤 わが社 ((株)オートパル;自動車整備業) は、 私が大学卒業後会社に戻ってきた当時、 経営の危機でした。 地元では会社は潰れると言われ、 取引先からは取引してもらえないというひどい状況下であれば当然人は採用できないと考えるのが普通です。 しかし、 わが社のような労働集約型の会社は人がいなければ売り上げは伸びず、 何をやるにも発展できません。 人を採用するにも来てもらえなかったという現実の中、 地元の高校から新卒を採用して会社を活性化したいと始めたのがきっかけです。 「今は厳しいけれども必ず良い会社にしたい!」 大きな賭けでしたが、 以後新卒採用を12年間継続してきました。 決して儲かったからではなく会社の発展と可能性を考えてのことです。
  今年10月、 @バスの販売からアフター、 A解体部品のリサイクルパーツ事業、 B製品開発の3つの事業で(株)ヴィ・クルーとして分社し、 30名でスタートしました。 その内の26名が新卒採用です。 12年間の継続が新しい会社を生むきっかけになったと思います。
伊藤 23歳で独立し、 カー用品の小売、 自動車整備業として創業34年を迎えました。 昔はお客様の中心が若者でしたから働く人も若い人が良いと考え31年前から新卒採用を続けています。 10数年前、 社員数90名の時に新卒60名を採用しました。 企業として10年後、 20年後の夢を持っていたからです。 正しかったと思うのは、 当時採用し残った人のほとんどが現在店長となっていることです。 商品は問屋さん、 お金は銀行、 しかし人だけは自社で育てていかなければ企業の発展はありません。 今年も46名を採用し、 入社式後はかなり厳しい研修をやっています。 「子どもは親の後ろ姿を見て育つ」 と言いますが、 採用し育てていくことが会社としての責任だと考えています。

今の若者について

鍋島 千葉先生は日々学生とかかわっておられますが、 今の若者の現状についてお話しいただけませんか。
千葉 一言では語り尽くせないというのが特徴で多様化しています。 語弊があるかもしれませんが、 幼児っぽく、 もう少し社会性が身についていればと危惧される若者も目につきます。 大人になるための社会的な仕組みが欠けているところから来ていると思います。 生まれた時から自分の部屋を持ち、 兄弟も少なく、 独りの生活を保障されてきたことが、 若者にそういう育ち方をさせる原因となってしまったのかもしれません。 コミュニケーションの能力が落ちていますから、 結果として問題を解決していく力も落ちています。 分からなければ人に聞く、 入社して1年〜2年は大いに聞いて学ぶようにと当たり前に行われてきたことが今の若者たちには育っていないのです。
  企業が新しい社員を迎え入れるように、 大学も毎年4月になると新入生を迎えます。 しかし最近の若者は手間暇かけなければ大学生としては育ちません。 私は彼らを大学1年生というよりも高校4年生と捉えています。 夏休みを終え、 学校に戻る頃になるとようやく大学1年生の顔になってきます。 これは、 会社も同じだと思います。 今日から社会人ですと言われても若者の中に自覚が芽生えるにはかなりの時間がかかります。 会社の中での教育が必要になってきていると思います。 しかし、 それは若者が好んでつくってきたのではなく、 私達大人がつくり続けてしまったと考える必要があると思います。

それでは今の若者をどう育てていくか?
鍋島 若者が育ちにくい時代になってきたというのは若者だけの責任ではないと思います。 そういう若者をどう育てていくか。 それがなければ採用には踏み切れません。 若者を育てるという点から自社の社員教育を含め、 伊藤社長はどのようなことに取り組まれていますか。
伊藤 会社説明会には必ず足を運び、 私の考えを学生に伝えます。 内定者には必ずアルバイトを勧め、 早い時期から仕事や先輩のことを覚えてもらいます。 また、 わが社の社員教育はトイレ掃除を核にしています。 学校のトイレを借りて、 外部団体と掃除活動するなど、 心を磨く活動に参加してもらいます。 今年の採用者にも活動に参加してもらい事前に社風を感じ取ってもらっています。 仕事に加え人間としてどう育てていくかだと思います。
佐藤 わが社はシンプルです。 入社した新卒者が翌年は学校に置き換えれば2年生になります。 2年生が1年生の面倒をみるという考え方です。 指示待ち型が今の若者の大きな特徴だと感じています。 ですから、 指示ではなく問いかけをするようにしています。 例えばトラブルがあると、 上司や私のところに来ますが 「あなたがお客さんだったらどうしてもらいたい?」 という問いかけしかしません。 最初はしどろもどろですが、 2度3度になると考えられるようになってきます。 時間がある程度必要なのかなと思います。 また、 先輩が後輩に技術を教えるだけではなく、 人間としての教育ができる社風が必要だと感じています。

学生を見て企業に思うこと

鍋島 千葉先生、 学生を通して見える現在の企業についてはいかがですか。
千葉 最近の学生の受け入れ先の傾向としては常勤雇用ではなくて嘱託や契約が多くなり、 求められる人材は即戦力です。 しかし、 即戦力が会社にとって本当に良いのかは考える必要があります。 経営者に聞くと 「この子はどうかな?」 と思いながらも採用した人材が逆に会社を担っていく存在になることがあるとよく聞きます。 期待する人材は本当に将来会社を担っていく人材なのか、 それとも今すぐに使える人材がいれば良いのか、 ということです。 大企業は大学3年生時に 「あなたにとって大学生活はどんなものでしたか?」 と聞きます。 いかに大学生が分かっていないかです。 大学の1年〜3年は準備期間の時期です。 その子の一番パワフルな部分は4年生になってはじめて花開きます。 そのような場面を会社の中でどうやってつくるかをもっと考える必要があると思います。 優秀な人材を企業は欲しいと思います。 しかし、 企業が期待するような優秀な人材は今の学校教育では育ちません。 それだったら自社で優秀な人材に育てるという選択肢もあるのではないでしょうか。

中小企業の求人活動とは?

鍋島 中小企業の求人活動とはどういうことなのでしょうか。 学校と企業が共通の認識に立って取り組んでいかなければなりません。 今年10月、 はじめて仙台以外の地域 (県南) で説明会を開催しました。 佐藤社長、 その経過と感じたことをお願いします。
佐藤 これは地域づくりの運動だと考えています。 きっかけは地元の高校を学校訪問する中で高校生の働く場がないという厳しい現実を知ったことです。 地元の若者が去っていけば高齢化は進み、 町には活気が無くなります。 もっと地元の企業が新卒を採用できる取り組みをしなければならないと思いました。 その取り組みの中で改めて分かったことは企業と学校はお互いの特徴をよく分かっていないということです。 企業は学校のことをほとんど分からない。 学校も有名な会社は 「良い会社」 だと生徒に勧めますが、 聞いたことのない中小企業は 「よく分からないけれど良いのではないか」 という勧め方になる。 そういう意味で学校と企業が相互に分かり合う機会が必要だと懇談会を重ねました。 様々な問題はありましたがとにかく第一歩を踏み出しました。 大きな成果としては当日40名の生徒が可能性を感じて来てくれたことと、 15社の地元企業が新卒採用しようと説明会に参加したことです。 中小企業は大企業と違い地域から逃げられません。 地域に若者が残れる場として 「あの会社に就職したい」 と思われるような企業づくりをしていく必要性を強く感じています。
鍋島 千葉先生は 「新卒採用を企業の大きな柱とし、 企業の取り組みを外部に発信していく必要がある」 というお考えをお持ちですね。 若者に選ばれる企業づくりのポイントとはどういう点でしょうか。
千葉 人が将来に展望を持つとき、 若い時の仕事は非常に大事だと思います。 仕事を覚え、 喜びを感じ、 将来こう在りたいと描くのは若い時です。 新卒はそういう存在になりうると注目する必要があります。 若者への期待をどう伝えるかです。 期待と希望が持てるよう 「頑張ってるね、 頼むよ、 ありがとう」 と日常的な声がけが必要です。 自分が認められていると思えば仕事への意欲は向上していきます。 若者についていろいろと言われますが若者への期待が少ないのではないかと思います。 その点をもっと気にかけていく必要があると思います。
  私はよく 「自分の夢を200言えますか?」 と学生に問いかけます。 しかし学生たちからはなかなか出てきません。 自分のことにだけ関心をもっているためです。 「人」 に関心を向ければ、 その数だけ夢や希望が生まれます。 コミュニケーションとは自分のことだけではなく 「人」 に関心を向けるということです。 それを会社でやって欲しいと思います。 相手から来るのではなく、 皆さんから若者に投げかけてください。 見続けること、 認めること、 そして見届けてください。
  地域から見れば雇用を確保していくことは大事なことです。 お二人が現在このような企業づくりができているのは景気が悪くても、 会社が潰れかかっても、 雇用を確保し会社のビジョンを示し、 社内一丸となって頑張ったからです。 その結果、 会社を担っていく人材が育っているというまさに教科書がここにあるのだと思います。 中小企業が若者にメッセージを送り続けて欲しい。 若者一人ひとりに中小企業の魅力を語りかけていくことが大事だと思います。
伊藤 100%を期待せず、 空振りでも良い。 しかしその繰り返しが少しずつ会社の力になっていくと思います。 コツコツとやり続けていくしかありません。 自分の会社が中小企業なのに採用する人材だけはレベルの高い社員を求めても無理だと思います。 まず、 入社してくれる人材を育てる以外にないと思います。
  近年、 同友会が開催する合同企業説明会への学生参加数が少なくなっているようですが、 数がすべてではありません。 ある雑誌に若者が離職する会社に未来はないと書いてありました。 考え直さなければと思いました。 福利厚生や給料の問題ではなく、 若者が求めているのは 「将来への夢」 と 「経営者が公私混同しないというけじめ」 です。 今の若者は意外と潔癖です。 同友会で勉強していくことで、 われわれ経営者は、 若者が辞めない会社をつくれるのではないかと思っています。
鍋島 同友会には3つの目的があります。 「良い会社をつくろう」 は若者に魅力があり大企業ではなく小さいけれどもここで働きたいと思える会社をどうつくっていくか。 「良い経営者になろう」 は自社の魅力を社長自身がどう発信していくか。 「良い経営環境をつくろう」 は現在、 我々にとって最大の目的です。 若者を企業に入れるということはその時代を企業に入れるということです。 若者が育ちにくい時代の中で中小企業が何とか雇用を確保し、 学校や行政と連携しながら地域で若者を育て、 宮城の若者を流出させないことが大切です。 それが中小企業なのだと地域に知っていただく活動としての 「共同求人活動」 にわれわれは取り組んでいるのです。



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