2007 新春講演会
みんなで聴こう!
「人は誰でも主役になれる」
〜徳島県上勝町・(株)いろどりの“人を生かす組織づくり”〜

 2007新春講演会にさきがけて、 9月に徳島で行なわれた中小企業家同友会全国協議会・第34回青年経営者全国交流会での見学分科会、 上勝町と(株)いろどりの様子――“葉っぱ”を上勝ブランドまでに押し上げた、 いろどりの事業について――をご紹介します! (この記事は、 岩手同友会のご協力を得て作成しました。)

■山あいのまちに笑顔が咲いた

 徳島県上勝町は総人口2086人。 高齢者は983人と町の人口の約47%。 平地は少なく山林に囲まれた傾斜地が町の大半を占め、 耕地はほとんどありません。
  その上勝町がいま、 70代〜90代のおばあちゃんがイキイキと働く元気な町として注目されています。 年間約4000人の視察者が訪れ、 テレビ、 ラジオ、 雑誌、 新聞での報道が途切れることがありません。 ここ数年、 都会に住む20代の若者が 「ここに移住したい」 とIターンしたり、 町を一度は出た息子・娘、 孫、 128名が町に戻ってきています。
  なぜこんなことになっているのか。 いろどりにはどんな魅力があるのでしょうか?

■葉っぱが人生を変える !?

 そこには26年前にはじまった 「彩 (いろどり)」 事業の存在がありました。 現在、 (株)いろどり・代表取締役である横石知二さんが、 高齢者の多いこの町で女性のできる仕事はないかと悩んでいたときのことです。 たまたま大阪の寿司店で見かけた若い女性のお客さんたちが、 料理に使われている葉っぱを見て 「これ、 綺麗ね。 持って帰ろう」 と大切そうにハンカチにはさんでいました。 「そうか。 都会では葉っぱを集めるのは大変なことだ。 これは上勝の自然を生かせる」 とひらめいたことに始まります。

■タヌキじゃあるまいし・・・

 しかし、 どんな葉っぱを料理に使うのか、 料亭はそう簡単に教えてくれるわけはありません。 お客として料亭に通い、 やっと手に入れた情報は・・・? これは上勝でやれる、 そう確信した横石氏。 「うちの山にあるもみじの葉や瑞々しい松葉も商品として出してみよう。」
  しかし上勝町の人たちは半信半疑です。 「葉っぱがお金になるなんて・・・、 おとぎ話のタヌキじゃあるまいし」、 始めはほんの数人が興味を持っただけでした。 そこで横石さんはおばあちゃんたちを都会の一流料亭に連れて行きます。 料理ひと皿ひと皿に綺麗に彩られている松の葉、 もみじ・・・。 「ひょっとしたら、 いけるかも」。 おばあちゃんたちの驚きが自信に変わっていきました。

■"仕掛け人"の26年諦めない努力が実を結んだ

 26年経った現在では平均年齢70歳、 190名が参加する事業になりました。 320種類の商品群、 短納期即日発送。 全国各地の料亭では 「上勝の彩ブランド」 が定着しました。
  この背景には現在、 横石氏が何年もかけて全国数千件の料亭を廻って営業した積み重ねがあります。 そしておばあちゃんたちに毎日欠かさず、 手書きの激励ファックスを送りました。 「ちょっと元気がないかな・・・」 そんなとき横石さんの声とファックスで 「またがんばってみるか」 と元気を取り戻すおばあちゃんたち。 見えないところでの"仕掛け人"の26年の努力が、 実を結んだのです。

■背景にはITをフル活用する仕組みが

 "彩"事業にはITを最大限に活用した盤石なしくみがあります。 農協と町が協力し、 町の防災無線を活用、 190人の生産者であるおばあちゃんとつなぎ、 ファックス・携帯電話・パソコンをフルに活かした発注から納品まで一貫した体制が組まれています。
  お年寄りでも使える、 シンプルなパソコンの開発もその一つです。 ボタン一つで自分の現在の売り上げを見ることができます。 町の中で自分の順位は何番目か (これが一番人気のサイトだそうです)、 市場の状況なども、 おばあちゃんがパソコンを駆使して閲覧することができる。 電話申込の順番で自分の納める数量が決まるため、 発注の時間帯には携帯電話・ファックス・電話と3本の通信網を自在に使い分けるおばあちゃんたち。

■人は誰でも主役になれる

 下の写真でパソコンを駆使するの菖蒲 (しょうぶ) さんは現在81歳。 お化粧をして、 見学分科会の参加者を待っていてくれました。 一枚一枚の葉っぱに霧吹きで水を拭きかけ、 白いプラスチックのトレーにのせて"商品"に仕上げていきます。 参加者たちと記念写真を撮る姿は、 まるで女優さん。 「上勝にはほんとうに寝たきりの人が少ないのです。 みんなからあてにされ、 自分で工夫してみて、 それが市場からも評価される。 隣のばあさんには負けないぞ・・・、 競い合ってまた考えて工夫する。 寝ている暇がないんだね」、 このしくみを町に浸透させた横石氏は、 笑顔で話します。 おばあちゃんたちは出番を待っていたのです。
  自分の居場所を見つけてがんばる姿。 おばあちゃんたちの目はキラキラと自信と誇りに輝いていました。 その姿に共鳴して若い人たちが過疎の町に戻ってくる。 近い将来、 超高齢化社会を迎える日本。 生きることに不安を持たなくていい、 そんな気がしました。
  「私の夢をまっきょんじぁ・・・」、 そう言ってもみじの種を播くおばあちゃん。 後継者への夢を託し今日も元気にがんばる姿。 ――上勝に生まれてよかった。 そんな誇りがおばあちゃんたちからにじみ出ています。



■第9期同友会大学より

 

■第9期同友会大学のレポートから

■第17期経営指針を創る会

 

■岩沼亘理地区のミニ例会シリーズ
■2006全国共同求人交流会より
卒業生実践報告
  ■2007 新春講演会
■中同協発行書籍紹介E   ■2008 共同求人参加企業募集