No.214(2009年4月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

 

対話のある企業風土をつくろう
〜気づく力・感じる力・考える力を育てよう〜
【2009 社員共育塾】が終了する

1月〜3月の隔週一度、4度にわたって【2009 社員共育塾】が行われました。今年で5期目を迎えた今回は、「社内に対話を起こす」をテーマにカリキュラムを進めました。なぜ今、【社員共育塾】で“対話”をテーマに取り上げたのか、またどんなことを対話していくのか。全講義を通して皆さんから出された特徴的な質問や意見を通してお伝えいたします。なお、質問や意見についての見解は社員共育委員会で検討したものです。

●社員共育塾のカリキュラム

 

日 時

テーマ

報告者・講師・問題提起

第1講

1月21日(水)
18:00〜21:00

【社長と幹部の共育ち】
気づき、感じとり、考える社風づくり

(有)ほのぼの介護

社長

澤田修次氏

第2講

2月4日(水)
18:00〜21:00

【幹部の役割とは】
自分の"役割"を力強く推進する人づくり

(株)サイコー

部長

谷津武弘氏

第3講

2月18日(水)
18:00〜21:00

【人が育つ環境づくり】
人の可能性を引き出す環境とは?

大東文化大学

教授

太田政男氏

第4講

3月4日(水)
18:00〜21:00

【グループ討論】
どんな自分になりたいですか?
どんな会社を作っていきたいですか?

日東イシダ(株)

社長

鍋島孝敏氏

●【第1講】「社長と幹部の共育ち」〜気づき、感じとり、考える社風づくり〜

@社長と社員とは平行線なものではないか?立場の違う社長と社員が理解し合うことは、はたして可能なのか?

 社長と社員は「平行線」と感じている内容をみたとき、相手と感情で一致しようとしていないでしょうか? 結論から言えば感情で一致するのは不可能です。なぜならば一人ひとりの価値観が違います。そして立場が違えば視点も変わります。だからこそ、理念や理性による一致、わが社と業界と地域の未来像・展望を描き、共有できているかどうかが重要ではないでしょうか。それが立場を超えて理解しあうこと、この困難な時代だからこそ「対話によって合意と納得を追求する社風」をつくる源になりうるものだろうと考えます。
 皆さんはどう思われますか? また皆さんの会社ではいかがでしょうか?

A考えて何になるのか?考える時間があったら実践する方がよっぽど大切なことではないか?

 日々の仕事・行動・成果と課題を自社の経営理念と照らし合わせて、「経営者と幹部」「上司と部下」「社員同士」の深い対話を基本に検証するということが社内において不足していないでしょうか? そのため、「実践」をいくらしても「認識」が育っていかない・広がらないという現状が、自分の会社で起こっていないでしょうか?
 「経営理念や経営者の考え方は一応理解している」が、それが日々の仕事・行動・成果とつながっているという認識がないために、経営理念と日々の実践が切り離され、積みあがっていかないという、大変もったいない報告が聞かれます。社内で対話を通して自分たちの実践を確認したり認識したりするのはまさに理念経営の実践であり、絶好の社員共育の機会です。
 いま一度「経営者や幹部からの一方通行になっていないか」「理念やビジョンが絵に描いた餅になっていないか」「理念が実践されているという錯覚に陥っていないか」どうかを、問いかけてみませんか。

●【第2講】「自分の“役割”を力強く推進する人づくり」

@自分の“役割”は何なのか? 部署を超えて団結し、支えあう社風はどうしたらつくられるのか?

 「部署を超えて団結し、支えあう社風をどうつくるか?」というテーマは、どの会社でも大切な課題だったようです。さて、自分の役職としての責任や役割はどこまでなのでしょうか。役割の境目はどこまでなのでしょうか。例えば【営業】と【製造】と【総務】、それぞれの役割はどこまでなのでしょうか。
 下の図をご覧ください。一つの仕事に取り組むとき、部署(役割)同士が交わりあう部分が必ずあり、役割はここまでだと画然とあるものでないことが分かります。
 この交わり部分を大切にして関わり合う会社こそが、役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。言い換えれば、この交わり部分にこそ真の「仕事」があり、役割を超えて仕事をして交わり部分を大きくすることで本当の役割が果たせるということではないでしょうか。

A社長や上司の、部下へのどんな対応が是か非かということについて

 今回の幹部社員の報告((株)サイコー・谷津武弘氏)で注目して見ていただきたいのは、会社の草創期から現在までの、信頼関係がつくられる一連の流れと変化です。斎藤社長の大きな愛情を身にしみて感じ、その恩に報いようとする谷津氏の素朴で素直な感謝の念は、23年の歳月をかけて、社会的な使命を共有し、強い信頼と尊敬で成り立つ信頼関係に発展していきました。そのプロセスの中で谷津氏が「斉藤社長と同じ認識と覚悟を持ったもう一人の経営者」に変化し、今度はそのプロセスを部下に還流し共有しようとしていることをよく見ていただきたいのです。
 同時に、信頼関係のありようが変わっても、変わらずにある人間としての愛情や誠実さがベースにあるのも、大切な点かと思われます。
 谷津部長の報告に触れて、「こういう幹部社員がほしい」「こういう上司がほしい」という意見が出されたのは、率直な声だと思います。表面に現れた行為や現象の是非を問うよりも大切なのは、その本質に働きかけたり反応したりすることではないでしょうか。

●【第3講】「人が育つ環境づくり」〜人の可能性を引き出す環境とは?〜

@講義の中で触れていたような社会的な問題は、わが社の経営課題にどんな関連があるのか?
 こういう社会的な問題は国や行政に任せればいいのではないか?

 今回の社員共育塾に太田先生の講義を盛り込んだ目的をお伝えいたします。
 太田先生の講義の中に、ベネトンというイタリアの会社の広告ポスターの話がありました。ベネトンのポスターに商品は登場せず、取り上げられているのは民族間紛争、人種差別など、人類的課題と言えるような世界中の社会問題です。1999 年、そこに日本の若者が取り上げられました。その内容は「日本の若者は、世界一清潔でおしゃれで、暴力とも無縁、まるで天使のようだ。しかし、誰一人として政治や社会について語らない。日本の現実を無意識に拒否する彼らは、実は悲劇の天使ではないか。現実感と目的を失って想像の世界に遊ぶ天使。それは貧困や暴力にも増して、今後われわれが直面する、悲劇の前触れなのではないか。」
 “人類的課題”と位置づけられたこの課題は、実は、自分たちの普段の生活や仕事の中から生み出されています。他の誰かがつくった問題ではありません。仲間やお客様への関心の薄さ、関わりのなさ、表面的な関わりで済ませていることが、感動のない仕事、感動のない人生にしてしまっていないかどうかを問うてみる必要があります。事実から私たちは目をそらしてはならないと思いますし、事実に基づいて「自分はどうしたいのか」「自分はどう生きるか」を考えあい、語りあっていくことが根本的な解決につながるのではないかと問いかけ続けたいと思います。

●【全4講のふりかえりにかえて】「奪い合い」から「分かち合い」へ
  〜社会も/経済も/会社も〜

 人間の生き物としての本質は自己中心です。しかし人間は同時に孤独を嫌い、人間関係をつくり、家庭をつくり、会社をつくり、他者との関係を結びながら生きています。今までの人間の歴史は自己中心と他者との関係の間を選びながら、“自己中心に生きる”と“共に生きる”が繰り返されてきました。
 今はまさに“自己中心に生きる”に社会の力点が置かれているのが事実です。この危機の時代、人間関係の密度を濃くして共に生きる力量を蓄えることが、一番具体的でしっかりした、自分たちを守りあう方法ではないかと思います。
 奪い合えば足りない。しかし、分かち合えば余る。この価値観をベースに「共に生きる地域の砦」としての中小企業をつくる時ではないでしょうか。

今月の内容

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