No.212(2009年3月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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発行日/毎月1日発行

【ドイツ環境対策企業 視察報告D】

ドイツの町と村 〜視察企業以外の印象と観察から〜

同友会事務局 若松友広


緑生い茂る北の国

 ドイツ連邦は、35万平方qの国土に8240万人、日本とほぼ同じ面積(日本は37万平方q)に3分の2ほどの人口です。一人当たりの GDPは、35,368ドル(日本は34,252ドル(06年 OECD 統計))。今回訪れた町の中でいちばん北のハンブルグやリューベックが北緯53度付近で、自然条件の厳しさが想像されます。
 ところが、5月の農村には花が咲き、樹木も豊富で、食糧自給率91%を誇るドイツの大地は菜の花畑、麦畑、牧草地、ジャガイモ畑が整然と広がっていました。菜の花はバイオ燃料として使われています。農家の庭先もきれいで、食糧はカネを出して買えばいいという発想ではなく、「しっかり農業を守っているなあ」という落ち着いた豊かな印象です。
 日中の気温は27℃と5月にしてもう暑い夏の様相です。木陰に入るととたんに風が涼しく、とにかく「木」が多い。町の中は街路樹が生い茂り、マロニエ(栃の木)、プラタナス、樫、藤の花はちょうど見ごろを迎えていました。ドイツ中北部のハノーファー、人口50万人のこの町はパーク&ライド方式がとられていて、中心部への車の乗り入れが制限されています。近年はこの方式をとる町が増えており、どの町にも歩道、自転車道があり、郊外まで電車が走っています。自転車レーンは歩道と色が違っているのですが、知らずに歩いていていると自転車に吹っ飛ばされそうになりました。この町は、第2次世界大戦で大きな戦災を受け、町は全滅、王宮も焼けてしまいましたが、戦後、人々がヘルンハウゼン庭園を復活させ、町の中心部に人造湖を掘り、端から端まで7qもある大きな公園を造ったのだと通訳の方が誇らしげに話してくれました。また、この町は広島市と姉妹都市で、毎年8月6日には原爆忌を行い、広島と同じように灯篭流しも行われるそうです。町の中心部に公園(それもとてつもない大きさの)があるのは珍しいことではないようで、北部の水の都ハンブルグの中心部にもありました。

自然エネルギー先進国

 北部へ近づけば近づくほど風車(風力発電)が次々に目に飛び込んできます。年間50億ユーロを売る世界一の風力発電輸出国であり、既に15380基(2004年)の風力発電が稼動しています。2030年までに風力発電の比率を24%まで高めるというだけに、ケルンからハンブルグまでの道々には当たりまえのように巨大な風車群がそびえていました。この分野では世界をリードしています。最近は太陽光発電でも日本を抜いて世界一の太陽光パネル生産国になっています。
 アウトバーンでは大型トラックが整然と並んで走っています。大陸を横断するトレーラーの幹線道路は活気がありました。アウトバーンは無料ですが、ガソリン代は高く、約1.5 ユーロ(240円上)します。税金は1ユーロを国に納め、その10%が環境税であると教えてくれました。
 環境税は1999年に導入され、電気、ガスなど CO2 を排出するものにかけられます。市民は車の利用を減らし、電車など公共の乗り物の利用が増えています。ケルン市ではライン川沿いのホテルのまん前で地下鉄工事が盛んに行われており、近い将来パークアンドライド方式を導入するとのこと。低炭素社会への移行を着実に進め、1990年比で CO2 排出を−18%にしたドイツ。国民は旧東独を吸収し、20世紀型の経済成長一辺倒を克服し、重い負担を受け入れながら、地球環境保全型社会へ方向転換の舵を切っています。それで尚GDPを伸ばし続け、2030年には低炭素社会をめざす環境エネルギー産業が自動車産業を追い越すだろうというしたたかな計算も忘れていません。
 賃金も高く、高コストな国でありながら古いものと調和させ、高層建築は造らず、12世紀以来の建物を保存し、どこからでも協会の尖塔が見えるような街づくりをしています(ケルン、リューベック、ハンブルグなど)。税・社会保障負担などを合計した国民負担率は56%(05年)と高いものの(日本は43.5%)、社会保障還元率も58%と高い(日本の還元率は41.6%)水準を保っています。
 個々の技術、企業力では優れていながら社会全体としてみたときには、環境、エネルギー、食糧など基本的なあり方で方向が定まらない私たちの国日本。EU、ドイツのあり方は21世紀の社会と人間のあり方を投げかけているようで、尽きせぬ興味がそそられます。

今月の内容

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