昨年8月27日、残暑きびしい宮城大学に61名の受講生を迎えて第11期同友会大学の開校式を行ってから、全15講座が12月3日に終了、本年1月14日に57名の卒業式を行いました。卒業式には、東北福祉大学准教授千葉喜久也氏が参加、卒業生一人ひとりに励ましのことばを贈っていただきました。以下、受講生のレポートを抜粋しながら11期同友会大学の軌跡をたどります。
「開校式、“素直になること”― 今回のキーワードになりそうだ」。まず受け入れるという準備ができ、期待が膨らんだところから毎週1回、3時間の講座の出発です。
第1講、宮城大学初代学長野田一夫氏の講義は、「自由な発想で窮屈でなく、希望と勇気が湧いてくる」内容で、「自然な愛国心を利用して政治家は国民を支配しようとするもの」という指摘は「衝撃だった」。「利用されない為にはもっと小さく(ローカルに)考えることが大事」であり、「あらゆる国に友達をつくりその友を通じて国を考える…マスコミや政治家を通じた世界観を人間的視点に置きかえる」ことである。そして、「どこにいても必要とされる人間になることという話にその通りだと思った」。
9月15日、サブプライムローン問題から破綻したリーマンブラザースショックが世界を覆う中、19日には立教大学山口義行氏の金融論がテーマになるタイムリーさ。「日々起きている世界の出来事は決して自分に無関係ではない、巡りめぐって自分たちの生活に影響を及ぼす。しかし、何がどう変わっていくのか、その中でどう生きていくのか、今の自分では分かりません」という告白や「激動の情勢を他人事でなく直視するきっかけをつくってくれた。対岸の火事と聞き流していたことが中小企業経営にも計り知れない影響を与える厳しさを目の当たりにした」。―― 知ることは勇気や意欲を掻きたてる源泉でもあります。山口先生は「生かす」「つなぐ」「問う」という3つのキーワードを与えてくれました。「生かすには」「情報、お金、人、地域、捨てていたもの…など、たくさんの言葉があてはまる」。「つなぐ」からは、「人はひとりでは何もできない」のだから「足りない部分を補い、連携し、結束する」。そして、「なぜ?」と「徹底的に問いかけ、語り合おう。自分たちで考えたことが具現化される状況を自分たちでつくっていこう」。
「自立というキーワードを身近な社会でどう生かすのか、共育というキーワードをどのように行って創造性を高めていくのかを考えていかねばならない」と、社内に持ち込んで討議を起こした受講生もいます。「重要なことは一人ひとりの思考と行動のスタイルを変える必要がある。仲良しクラブの域を脱し、創造的なコンフリクト(摩擦)に耐える対話力をどのように獲得すべきか」と問題を投げかけて、改めて「“なぜ×5回”を日常の中で実践しよう」と呼びかけ、地域の為に何ができるかと取り組み始めています。
「人間と教育」の講座で大田堯先生は「生命は本来自己中心である。しかし、孤独を嫌い正反対の 『共に生きる』 との間をバランスを取りながら生きてきたのが人間の本質である。」と話しながら、「もう一度、『命の絆』 をつくることこそ中小企業の役割であろう」と呼びかけました。職場の仲間と、お客様と、地域で、命の絆を強く、深くつくることが卒業生には期待されております。大恐慌に匹敵する危機の時代、あてにできる確かな基準を持つことがひとり一人に求められており、その為にも、仲間と一緒に「なぜ?」と語り合い、繰りかえし問い続ける営みを続けていただきたいものです。
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