No.211(2009年1月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
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発行日/毎月1日発行

11月例会報告 千賀ノ浦地区支部

「地域になくてはならない会社をめざして」〜自分の足元を耕す〜


報告者:(株)櫻井建設 代表取締役 櫻井一義氏

 私が社長就任した平成7年は公共工事が激減しはじめており、わが社も企業変革を迫られていました。自社施工体制に変えたり、業種を広げてみたりしましたが、これという決め手がありませんでした。
 平成11年に同友会入会、同時に「第12期 経営指針を創る会」を受講しました。そこで問いかけられたのは「あなたは何のために仕事をしていますか?」「あなたの会社のお客様は誰ですか?」「社長として、どうしていきたいのですか?」……その答えを見出せず、活字を並べただけの経営指針書は不完全燃焼で終ってしまい、そこに不安を感じた社員たちは全員退職していってしまいました。

●「住まいの便利屋さん」〜地域になくてはならない企業をめざして

 不完全燃焼のままでいたとき、当時の担当事務局員に熱心な誘いを受け「第4期 同友会大学」を受講しました。どの講義も自分のためだけに話してくれていると錯覚するほど、具体的かつ課題に直結したものばかりでした。
 その中でも東北大学・大滝精一先生の講義で「これからは御用聞き復活の時代」という話がありました。同時に「何のための企業か」「地域にとって当社の役割は何か」という問いかけがあり、地域を歩いてみました。すると高齢者の方から「昨年まで出来ていたことが今年は出来なくなっている」という声を聞いたりして、地域では予想以上に高齢化が進んでいることに気づきました。暮らしの中の困りごとを何とか解決してあげたいと思いました。
 そういう地域の状況を社員と話し合いながら立ち上げたのが「住まいの便利屋さん(以下、便利屋さん)」という事業部です。平成14年から本格的に取り組みました。最年長(70 歳)の社員が社内ミーティングで「うちの会社は地域の人のために何でもやる会社、みんなで頑張れば何でも出来る」と言って地域内を宣伝車でまわり、率先して実践してくれたのです。その言葉と様子に社員全員が奮起して、今まで一緒にやってきてくれました。そして「櫻井建設さんがあることで、一生何があっても心配せずに暮らせるよ」という地域の人からの言葉。今年で7年目を迎える「便利屋さん」ですが、そう言っていただけることが私たちの喜びであり、わが社が地域に存在する理由なのだと確信を持つことができます。

●どこまでが仕事・・・?

 「便利屋さん」は具体的にどんなことをしているかをお話しますと、先日こういう問合せが事務所に入りました「包丁を3本、研いでほしい。今日の夕食の時間まで間に合わせて」。ところがそれができる社員がおらず、電話を受けた事務員さんがそのお客様のところに飛んでいき、現場に出ている大工のところに持って行ってその場で研いでもらい、お客さんのところへ戻しに行った。・・・この仕事は包丁一本500円、1500円の仕事です。
 「便利屋さんは事業として成り立つのか」、こういう質問を必ず受けます。答えを先に申し上げますと「便利屋さん」だけで事業採算はとれません。しかし「便利屋さん」の取り組みは、東松島市という地域においては櫻井建設の代名詞になりつつあると自負しております。「便利屋さん」は利益度外視、採算は別の形で現れる。別の形になったときは、櫻井建設だから頼みたいと仰っていただけることがほとんどです。
 また「うちの会社は地域の人のために何でもやる会社、みんなで頑張れば何でも出来る」と言い、「便利屋さん」を先頭になって推進してきてくれた社員が今年、定年退職しました。そして退職してからは個人事業主として活躍しています。うちと同業者ですが、お互いに訪問し合ったり仕事を紹介したりしています。退職後も夢をもってイキイキしている元社員の姿を見られることが本当に嬉しく感じられます。それが社長としての一番の収穫なのではないかとつくづく思います。そういうイキイキしている人が地域に増えて、お互いに協力しながら生きていければ地域もイキイキしていくのだろうと思います。

●一社だけの取り組みにとどまらず、地域の人との連携へ

 平成16年に起こった宮城県北部連続地震のあと、「便利屋さん」は小さな困り事だけでなく大きな困り事も解決することになりました。私の自宅も全壊したので「古い木造住宅は地震に弱い」ということを実感し、今後に起こるだろう宮城県沖地震による被害をできる限り少なくしたい、地域の人々の生命や財産を守りたい、被害を受けた人の弱みにつけこんだ仕事はしたくないとの思いから、木造耐震改修工事事業部を立ち上げました。
 また「住まいの相談会」や「エコイベント」を通して、地元の協力業者さんと一緒に住まいの困り事相談に応じたり、地元の同業者70社が集まる東松島建設業者協会で海川の清掃活動、地元の小・中学校の施設整備のボランティアを始めました。お客様や地元の人とのやりとりの中で、地域の人に喜ばれる実感が持てます。職人さんたちや協会の人たちの目が輝くのが分かります。
 当社は、地域との結びつきなしでは存続しえない企業です。一方的にわが社が地域に何かをしてあげるということではなく、わが社も地域に育てられていることを実感しています。小さな会社ですが、一人でも多くの地域の人の困り事を解決でき、安心して暮らしていけたら幸いです。今のわが社の究極の目標は、業種を超えてすべての困り事を解決する企業をめざし、地域に愛される企業になることです。

櫻井建設の広報誌『住まいの便利屋さんだより』。
内容はお客様から寄せられた感想や、社員さんの思いを伝えるものとなっています。
ちなみに社員さの鹿野さんの似顔絵は櫻井社長の手によるもの。

今月の内容

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