No.211(2009年1月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

新春対談
〜2009年を大いに語る〜

【参加者】
  2008経営研究集会実行委員長   真壁英一氏
  共同求人委員会委員長        佐藤 全氏
  仙台支部青葉地区会長        菅原俊樹氏
  コーディネーター(若林地区会長)  玄地 学氏

 2008年3月、宮城同友会が主幹となって行われた全国研究集会では、全国から1300名以上の参加者迎え、また、11月には史上初めて500名を超える参加者で経営研究集会が開催され、その場で決議された「金融危機に対する緊急提言」の実現に向けて会員が総力をあげて取り組んでいます。
 2009年、宮城同友会はこの勢いをすべての会員の理解と団結の下、県内外の関係諸団体や行政に対しわれわれの運動を隅々まで浸透させ、伝えていくことがとても大事な1年となりそうです。宮城同友会にとって2009年はどのような1年になるのでしょうか?そして2009年はどのように同友会運動を進めていくべきでしょうか?宮城同友会の将来展望と方向性について、2008年の振り返りとともに、おおいに語っていただきました。

玄地:あけましておめでとうございます。本日はお忙しい中、お集まり頂き有り難うございます。早速、2008経営研究集会の実行委員長であった真壁さんより、昨年の振り返りを中心にお話いただきたいと思います。

経営研究集会を振り返って

真壁:2008年、私は第19期「経営指針を創る会」(以下「創る会」)のグループ長に任命されました。経営理念を作る過程を経営者に助言するということは半端なものではありませんでした。自分のカラーが出せるようにと取り組んでいるときに、研究集会の実行委員長の話が来て、自分の勉強にもなると思い「はい」と応えたわけですが、任命を受けた直後の県理事会においてあまりにも軽く考えていた自分に対し厳しい指摘を受け、自分ひとりでは何もできない、各支部地区の皆さんの「連帯」の力を借りることから始めようと考え直したわけです。
玄地:実行委員会の皆さんがすごくまとまっているなという印象が強く残ったのですが。それもその気付きが大きかったのですか?
佐藤(全):皆、楽しそうに取り組んでいましたよね。やらされ感が全く感じられなかった。
真壁:やるからには新しいものへの挑戦をしようと、「量の確保」と「質を上げる」両面の追求を行ったわけです。
佐藤(全):「各社の課題を持って参加する」これが当たり前のようでこれが初めての取り組みでした。参加者にとってもシンプルで解り易かった。
真壁:外部環境がここまで崩壊している中で、課題テーマが提示されたことが今回の参加につながったのではないかと思います。

共同求人活動の原点に返って

玄地:佐藤社長、共同求人委員会を1年運営して、2008年はいかがだったでしょうか?
佐藤(全):共同求人委員会はこれまで「仙台」が中心でした。しかし受けるからには「県内の各支部地区で共同求人がやれればいいな」とシンプルに思ったわけです。県南で3年間継続できたのは学校訪問での「地元の求人が全く無くて、子どもたちが地元で働きたくても働けない」という先生の言葉が出発点であったことを思い出しました。県南でも確実に地域に浸透していることが実感できていたため、全県でもできると思ったことが引き受けるきっかけにもなりました。
 共同求人というのは「新卒」を採用し企業の新しい風土を作っていくという印象が強くなっていますが、採用はできなくても、共同求人活動に参加することにより、子どもたちに「働くことの意義」を伝えることはできます。県南で、今年初めてブースを出し、高校生の真剣な取り組みに接した経営者が、「この子達を採用して会社を良くしていきたい」「業績云々ではなく、採用できない会社にしているのは自分の責任だ」そして「採用できるよう春までに社内の体制を整えたい」と言って貰えました。各支部地区で「働き甲斐」を伝えることは普段の取り組みの中で絶対にできるはずです。委員会も各支部地区で出た悩みなど(例えば就業規則の問題など)を勉強する場に変えていこうと思っています。既に気仙沼では学校との懇談会も始まっており、栗原、大崎でも取り組んでいきたいとの確認がされています。今年の春の共同求人委員会では「大企業が根こそぎ採用し、中小には人が回ってこない」という話をしていました。それが今や、「内定取り消し」が騒がれています。多くを採用できなくても、地域に根ざした活動をやっている意義がここに来て出ているような気がします。
菅原:いっぱい内定を貰っているときは自分のステータスと捕らえていたものが、取り消されることによって自信がなくなってしまう。いいも悪いも大企業に翻弄されているのが現状でしょう。
佐藤(全):新卒採用の大事さはもちろんですが、「働く意義」を伝えることは新卒も中途も同じだと思います。大企業の派遣削減のニュースを聞いて、1〜2年前までは「だから派遣ではなく新卒だ」と考えたと思いますが、削減された人たちに対する対応策もこれからは配慮の必要があるのではと考えています。
真壁:本来、会社と働く側の都合があって生まれてきた派遣という形態が、規制緩和によって土台全てが派遣社員という変な仕組みができてきてしまいました。
佐藤(全):やっぱり最後は「経営指針の必要性」を感じています。「働く意義を伝えること」、「雇用していくこと」を考えた場合、「新しい仕事作り」を進めない限り、やり続けることはできないと思います。指針が無い会社でもまず「自分の会社でもこんなことができるな」と感じてもらうことが大切だと思います。
菅原:自社の方向性がなければ、「人に任せる」ことはできません。社長の言葉に沿うのではなく、経営指針に沿う、社長自身が沿っていなければ、「それは違う」といわれます。
佐藤(全):新たに人を採用することによって自分にも考える余裕ができます。新しい仕事作りがそこで生まれてきます。

支部の運営について

玄地:では次に、県内の支部地区の中でも、仙台の青葉地区という支店経済の中心部ともいえる特別な地区での運営についての現状や課題とともに、2009年の展望などをお話いただけないでしょうか?
菅原:2007年から会長を務めていますが、1年目は事務局とともに、これまでの役員さんと運営方法などについて調整を重ね、理解を深めていくことに努めてきたというのが正直なところです。この地区にはどのような特徴があるのか、むしろ会社規模が小さく、トップマネジメントに専念できない会社の役員さんが多いというのが実態の中、2008年は役員それぞれがこの青葉をどのように考えているのかを引き出しながら取り組むという、本当の1年目になったのではないかと思っています。運営委員は同友会活動の理解者、リーダーであるとともに経営者としての資質を同時に高めていかなければなりません。
玄地:支部の「目標達成」の為の話し合いというにはどのように行ってきたのですか?
菅原:勿論目標は同友会運動の推進にあり、役員全体が同友会運動の必要性を共通認識として持てるように取り組んでいるというのが現状です。
真壁:宮城野は「経営者の仲間意識」というのがとても強く、その連帯意識の中に「学び」の大切さを共有しています。青葉の役員さんも、個々に危機感を持っている方は多いはずで、その相互理解、共通認識が若干足りない感じを受けます。
菅原:青葉でももっと委員会をつくりたかったのですが…。宮城野は委員会がたくさんあり、夫々の委員長が力を発揮していますね。
真壁:人間としてのコミュニケーション作りも重要要素の一つです。夫々の委員長は義務感からではなく最終的には自分の勉強になったと、自主的に取り組んでいます。
玄地:若林では「生活の場」と「仕事の場」が違っていると「地域」が見づらいといわれています。仕事をする場が地域というのか、生活をする場が地域というのか、繁華街や他地区の資本が多く参入している中で、「地域」というのは業界団体の目でしか見られないようになっているのかもしれません。
佐藤(全):仙台は「昔ながらのもの」が全て消えてしまい、地元が「存在しづらい状況」になっています。それを「郷土愛」として置き換えて「なんとかしたい」という強い気持ちを持つことも大切ではないでしょうか?
菅原:青葉には「創る会」を受講している方も少ないというのが、なかなか理解につながらない要因の一つかなとも思いますが・・。
佐藤(全):私も何もわからないまま「創る会」を受講しました。でもあの時は楽しかった。意見をぶつけ合い、本音で語るっていいな、と思いました。本音でぶつかっていればそこに人が自然に集まってくる、結果、白石蔵王は「創る会」の受講者が多くなりました。しかし今は現状認識を確認しているだけで、誰も本気でぶつかることが少なく活力が失われつつあります。以前は忙しさ、辛さの中にあっても「あそこにいくとやってみようという気にさせられる」と持ち帰れるものがありました。「経営指針」を受けている、受けていないはあまり関係が無く、まずは本音で語り合える土壌作りが必要ではないかと思います。
菅原:経営指針の必要性は訴え続けています。青葉の会員に同友会活動の重要性をもっともっと訴え続けて行きたいと思います。

昨年の取り組みを2009年にどう活かすのか

玄地:経営研究集会の委員長として一番感じられたことはなんでしょうか?
真壁:会社組織と同友会活動は全く同じだということを痛感しました。各支部地区の支部長、会長は経営者、役員は幹部社員、会員は社員という位置づけです。使命と目的が明確になっている地区は役員に徹底が図られています。また「自主・民主・連帯」の精神に欠け、事務局にあまりにも頼りすぎていると感じられた地区もありました。「自分たちで実践していく」という強い気持ちがなければ「地区運営」はできないと思います。
玄地:「事務局に頼りすぎる」とは、具体的にどのようなことですか?
真壁:事務的なものであれば問題はないのですが、運営委員会の中で「事務局はどうなんだ?」「これは事務局がやってくれよ」など、本来自分たちがやるべきである声がけや会員同士の交流などを簡単に依頼してしまう。われわれが自分たちの問題として捉え、会員同士で活性化を図らなければならないことを忘れて、本末転倒なお願いをしている一面も感じられました。
玄地:残念なことにゲストの参加も少なかった。
真壁:各支部地区でなんとか目標を達成して、達成感を味わって欲しかった。支部地区で達成できなくても、全体で500名を達成できれば同じ達成感を味わうことができるのではと考えました。未達成であってもその原因を追究し、次に生かすことが大切で、何が足りなかったのか、地区の現状を見つめなおす一つの要素ともなります。ただ正直、ゲスト参加の声がけが遅すぎたという反省は否めません。
菅原:しかし真壁委員長の真剣な取り組みが、ずっと達成していなかった青葉地区の実行委員をも動かしてくれました。
真壁:グループ長の技量が問われた研究集会でもありました。ただの事情聴取で終わってしまったというグループもあったようです。常日頃の例会の討論でグループ長がどれだけ訓練されているか、付け焼刃ではかえって逆効果になってしまいました。
玄地:会全体で継続したグループ長の育成に取り組んでいく必要性を感じます。
真壁:参加人数が多いと社員の参加も多く、グループ長が理解していてもなかなか社員には伝わりません。目線を下げてという取り組み、努力を常日頃から行っていくという必要性も感じます。
真壁:各支部地区での例会での取り組みも大切で、日頃からの早い準備が必要でしょう。
菅原:今までのグループ長は育てる側に廻り、今回経験した方たちのフォローに廻るような仕組みを作っていくことが大切ですね。社員共育塾などへの参加も大切だと感じます。
玄地:グループ長が育っていないということは、会社でのミーティングの質も問われる事になります。では2009年につなげていきたい内容についてお聞きしたいのですが。
真壁:「金融危機に関する緊急提言」にも研究集会の達成感の勢いをつなげることができたと実感しています。そしてその勢いとともに宮城同友会の真価が内外に問われ始めています。「各政党の中小企業政策を聞く会」も、他からも認められるための試金石になっているような気がします。この経験を活かし、自地区の運営にも活かしていくことが大切だと感じています。「井の中の蛙」にならないよう、若手がもっと全国行事に積極的に参加して血の交わりを経験する必要性も感じています。
玄地:ありがとうございました。では佐藤社長にお聞きします。先程、他の地区で共同求人の芽が出始めたとお聞きしましたが、2009年にどうつなげていくかをお聞きしたいのですが。
佐藤(全):シンプルにいうと「おらほうの地域には同友会があるさ」となってもらいたい。例えば学校の先生が子どもたちが働くところがないといって同友会に相談してくるような活動につなげることができればと考えています。その地域に高校が一校しかなければ、中学校、小学校まで巻き込んでの活動をしていけばいい。支部地区夫々が独自の取り組みをして、お互いに学んでいくことが大切です。決して合同企業説明会をすることだけが目的ではありません。学校訪問など地域としっかり向き合って「働くことの意義」を伝える取り組みを実践していくことが大事です。
玄地:共同求人は「採用が目的」と勘違いしてしまうと、本来の「働き甲斐を伝える」ことがおろそかになってしまいます。
佐藤(全):共同求人は「地域づくり」の運動です。地域の子どもたちが「働く意義」の考え方を変えるだけで、5年後、10年後の地域への種を蒔いたことになるかもしれません。
 2009年は私も「井の中の蛙」にならないよう徹底的に「良いもの」を見に行くことから始めようと思っています。学校も巻き込んで地域みんなで熱くなり、そこから「何かをやろう」という気運を高め、宮城オリジナルが生まれるように取り組んでいきたいと思います。
玄地:では最後に菅原会長に2009年の取り組みについての豊富をお願いしたいと思います。
菅原:引き続き地区役員が同友会運動の真の理解者となって、リーダーの自覚を持って役割と責任分担を明確にした取り組みと、会員自らが「地域の未来」に向かってどんどん思考を広げていけるように習慣づけを行っていきたいと考えています。そして会外にも目を向けて発信し、協力していけるような土壌作りができるようなリーダーづくりに積極的に取り組んでいきたいと思います。
玄地:今日のお話を聞いて同友会の取り組みは、どこから入っても本質が見えてくるなというのが実感することができました。経営指針、社員教育、地域との取り組みなどにも、全ての要素が入っていることが確認できました。しかし、2008年の反省と取り組みが具体的な実践に活かされなければ組織の発展はないと思います。2009年は、宮城同友会の全ての力を結集してさらなる飛躍の年にしたいものです。本日はお忙しい中、有り難うございました。

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