No.206(2008年8月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

リーダー研修会開催報告

「学びと実践で築く私たちの会社・私たちの地域」
〜 リーダー研修会が行われる 〜

 リーダー研修会が6月27〜28日、 秋保ホテルクレセントにて、 講師に(株)ヒロハマ 会長 広浜泰久氏 (中同協幹事長) を迎えて行われました。 全県の役員を対象とした研修会で、 役員26名と事務局7名が参加し、 第1講 「同友会の学びを経営に生かす」、 第2講 「会員増強、 組織強化はなぜ必要か」、 第3講 「中小企業憲章について、 千葉県の中小企業振興基本条例について」 というテーマの報告を聞き、 3回にわたるグループ討論を行い、 内容を深めました。 座長を務めた鍋島孝敏代表理事は 「同友会はどこを切っても“自社の会社づくりと経営指針”“地域づくり”“会の組織強化”が一体なのだと感じました。 他をうらやむだけではなくて、 私たちの手で私たちの望む姿をつくることができると確信し、 明日からの実践に生かしましょう」 とまとめました。
  以下、 広浜幹事長による講義の骨子をご報告いたします。

「経営課題の重点は何か」 (株)ヒロハマの経営実践

 わが社は灯油や塗料、 業務用の食用油や醤油などに使用する一斗缶のキャップを作っております。 同業者は全国でも3社しかなく、 当社のシェアは 45%です。 堅調に推移していますが、 缶の業界全体が好調なわけではなく、 市場は毎年 1.5〜2.0%ずつ減っておりますし、 資材も高騰しております。
  わが社の基本スタンスは 「缶業界に対して供給責任を果たす」 ということであり、 製缶会社のお客様である缶の中身をつくるメーカーへも出向いて技術サービスや新製品開発を怠らないようにしています。 経営理念に 「缶の業界の全面的な支援」 を掲げ、 具体的な中身として 「いいものを」 「早く」 「安く」 「品ぞろえ」 「技術サービス」 の5点を重視しています。 計画は各事業所・各課から業務計画を出してもらい、 各係で週単位での計画の落とし込みをしてもらっています。 いいものの定義も 「自分たちが自信を持って設計しているもの」 ではなく 「お客様の使い方にマッチしているもの」 という考え方で仕事をしています。 缶の中身である塗料や醤油のメーカーに行くと、 使い方の違いがよくわかります。 また、 私たちの社会的責任の問題について社内でよく話をします。 そうすると結局 「何のために経営しているのか」 ということに立ち返るのですね。 当社の場合は安定供給して供給責任を果たすことが原点です。 リスク管理を含めた対策を取り、 品質へのクレームにはすぐにリコールをかけます。 社内で隠し事をしない、 言いにくいことをつくらない、 という社風にしておくように心がけています。 当社には労働組合があるので、 労使協議会を通して意見は伝わってきます。
  実は私は同友会に入る前に労働争議を経験し、 『労使見解』 をもっと早く知りたかったと強く思いました。 景気が悪く、 期間雇用のパートさんの雇い止めをすることにしたとき、 社内にストライキが起こり、 そのリーダーとなった社員を解雇することにしたのが原因でした。 『労使見解』 には 「経営者の責任」 という項目があって、 「経営者である以上、 いかに環境が厳しくとも、 時代の変化に対応して、 経営を維持し発展させる責任があります」 と記されています。 つまり雇用を守る責任があるということです。 このような衝撃的な出来事のあと 『労使見解』 を学ぶ中で、 「しくみづくり」 と 「主体性重視」、 つまり人が育つ環境を社内にどうつくりあげるかに力を注いできました。 私たちは 『労使見解』 をていねいに繰り返し学ぶ必要があります。 大変短い文章ですが、 書かれていることを自分の姿勢や社員との関係に照らして検証できる、 バイブル的な存在です。 私も先輩経営者たちが半世紀にわたって築いてきたこの財産を生かして、 一言一句、 自分の実践を通して 『労使見解』 をいつでも語られるようにしておきたいと思っております。

「誇れる企業づくり・学べる同友会づくり」 中小企業憲章制定運動に向けて

 中小企業憲章にしても中小企業振興基本条例にしても、 その中心には中小企業の役割と重要性が座っているはずです。 これらの制定運動には国民・県民・市民の協力が必要です。 この人たちが中小企業をどういうふうに見るかということです。 それに私たち中小企業家自身が自分たちの役割や重要性にどれだけの誇りや気概を持っているかということです。 このことは一般的に見て総論賛成だと納得されることかもしれませんが、 ここから先、 一社一社を見たときに 「自分の会社はどうか」 と置きかえて考えることが大切です。
  私が同友会に入会して初めて参加した例会の報告でこういう報告を聞きました 「中小企業は脱税する、 脱税しないまでも少し儲かると働いていない身内に給料を払ったりしてなるべく税金を払わないようにする。 本当は毎年税金をしっかり払って、 残った利益を自己資本に組み入れていけば無理なく自己資本を大きくできて借り入れも起こしやすく、 急場にも強くて成長できる会社になるのだ」 「一人でも他人を雇用したらその人の人生設計に対して責任を持ち、 企業の安定を図り成長の チャンスを捉えるのが会社の役割だ」。 また、 千葉県の中小企業振興基本条例制定に取り組むときには、 私は行政の方に本気で言われました 「中小企業の皆さんに援助してもいいのですが、 所詮、 社長の車がベンツになるだけのことでしょう?」 と。 それだけに私たち一社一社が地域のモデル企業となる努力をする重要性を、 身にしみて感じました。 行政も同友会の会員企業の経営努力に触れることで、 応えてくれる中小企業経営者がいるという認識を持ってくれましたし、 千葉県に中小企業振興基本条例ができたおかげで、 私たちも自分たちの企業を変えることで地域を変えられるという確信が生まれました。
  行政が理解を示してくれたのは、 私たちが陳情ではなくて、 中小企業の役割と重要性を中心に据えてほしいと提唱したうえで 「こうしたいが、 よく分からないので相談をしたい」 と具体的課題を示したからです。 同友会に 『労使見解』 があり、 同友会理念があり、 それにもとづく経営指針成文化運動があり、 自助努力をベースに活動してきたからこそできたのです。 こういう団体は他にないからこそ同友会が声をあげる必要があるのです。 例えば、 建設基準法改正による混乱、 それに追い討ちをかけた原油高騰は、 中小企業のビジネスチャンスを埋もれさせてしまった側面があります。 また、 中小企業基本法だけでは中小企業問題にとって必要とされる多様な政策をカバーできません。 これまでの中小企業運動は国民の理解の追求が弱かったと思います。 これが中小企業憲章制定運動の意義です。 私たちが声をあげ、 国民的運動に展開すること。 それはまず私たち自身が私たちの役割と重要性に誇りを持ち、 その誇りを持って自分の会社を良い会社にすること。 そして良い会社を増やし、 同友会運動を推進して会の組織を広げることから始まります。

『労使見解』とは… 「中小企業における労使関係の見解」 の略称で、 中同協が1975年に発表したものです。 中小企業の歴史の中で同友会の先輩たちが、 力と力の対決による労使問題の解決ではなく、 話し合いを基調にして中小企業らしい近代的な労使関係を確立した体験を体系化しており、 社会情勢が変化しても 「経営の本質を突いている」 と共感を生んでいます。 中同協発行パンフ 『人を生かす経営』 (300円) に9ページの小文で収められています。

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