No.199(2008年2月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
〒981−3133 仙台市泉区泉中央2−11−1 リバースビル302
TEL (022)218-2571  FAX(022)218-2575
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

第1分科会 設営:宮城野地区・栗原登米地区

なぜ、 同友会が企業と地域を結びつけて中小企業憲章を唱えるのか

(株)佐元工務店
社長 佐藤元一氏

【社長としての失敗】

 1978年、 個人事業から法人にしました。 社長になってすぐに大きな不渡り手形を掴んでしまい経営責任の重さを痛感しました。 「会社が危ない」 という噂も流れ、 「社長は誰でも簡単になれるが、 経営者にはなかなかなれない」 「片手にロマン、 片手にソロバン」 の意味が分かりました。 また、 売上の安定拡大のためには、 一発勝負よりリピート客を増やすことが大切で、 利益確保は価格決定権を握るか否かによるということに気づきました。
 1988年、 会社の体制固めのために、 大手から引き抜きをしましたが、 失敗して辞められたうえに大切に育ててきた社員にも辞められてしまいました。 この頃、 同友会の先輩に、 「同友会ごっこじゃだめだよ」 と教えられました。 「会社は社長一人では何もできない」 「自分の考えや夢を文章化して伝えることが重要」 と気づきました。 その時、 同友会で成文化を呼びかけていた 「経営指針の必要性」 を認識しました。 そして、 「第1期経営指針を創る会」 (以下 「創る会」) を受講し、 自分ひとりで経営指針を創りました。 ところが、 社内にはまったく浸透せず、 会社はなかなか良くなりませんでした。

【二度目の 「創る会」 受講】

 1998年、 「これではやっていけない」 と思い、 「第9期創る会」 を再受講しました。 20世紀は 「モノの時代」 でしたが、 21世紀は 「心の時代」 であると気づきました。 「今までのことは全部俺のせい」 と腹を括り、 「ゼロから出発して第二創業をするぞ!」 と誓いました。
 それまでの自分を振り返ると、 「社員は最も信頼できるパートナー」 ということを、 頭では分かっていても実態は 「俺が俺が」 だったのです。 そこで、 「社員やお客様が幸せになれる会社にしよう」 と、 幹部と共に3ヶ月かけて創りました。 そうしてできあがったのが、 現在の経営理念です。 (下記参照) そのなかで、 「会社は社長を含めた全社員が幸せになるためにあり、 幸せになるためにはお客様を第一に仕事をしなければならない」 「社員の成長なくして会社の発展はなく、 会社の発展なくして社員の幸せはない」 と気づきました。 したがって 「社長の一番の仕事は人育て」 ということを、 肝に銘じることができました。

【(株)佐元工務店 経営理念】

一、 私たちは自然との調和を図り、 快適な生活環境を創造します (科学性)
一、 私たちは人と人とのつながりを大切にし明るく豊かな地域づくりに貢献します(社会性)
一、 私たちはともに成長し、 豊かな人生を実現できる自立した会社を目指します(人間性)

【わが社の目指すもの】

 1993年、 中同協の総会宣言で 「21世紀型中小企業づくり」 ということが提起されました。 その頃は 「俺が俺が経営」 でしたから、 その意味が分かりませんでしたが、 「創る会」 を再受講して 「21世紀型中小企業づくりとはどういうことか?」 が理解できました。
 第一に、 「自社の存在意義を改めて問い直すとともに、 社会的使命感に燃えて事業活動を行い、 国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業」 という意味です。 これは私なりに 「私たちの街は私たちがつくるリーディングカンパニーを目指すこと」 と解釈しました。
 第二は 「社員の創意や自主性が十分に高まり、 十分に発揮できる社風と理念が確立され、 労使が共に育ち合い、 高まりあいの意欲に燃え活力に満ちた豊かな人間集団としての企業」 という意味です。 これは 「行け行けドンドン企業より、 生き生きルンルン企業を目指すこと」 と解釈し、 今も社員に話しています。 「お客様のニーズが多様化し、 高次元化は当たり前」 な今の時代には、 経営理念を理解し、 自分の頭で考えて行動できる自立した社員をどう育てるかが大切だと思います。
 今、 わが社では、 「あなたの会社は何屋ですか?」 と問われたら、 「『快適生活環境創造業』 です」 と答えられるようになりました。 「住んでよかった」 「暮らしてよかった」 と思っていただける住まいづくりのお手伝いをすることによって、 お客様に120%満足していただきたいと考えてやっています。

【佐元工務店の取り組み】

 わが社の方針では、 一つ目に 「明るく豊かな地域づくりのリーディングカンパニー=災害時に役に立ち、 地域住民から頼りにされる会社」 二つ目に 「生き生きルンルンの自立型企業=社員満足度が高く、 社員一人ひとりが自分で考えて行動できる会社」 を目指しています。
 現在わが社では、 作業現場と近隣道路を毎日5回清掃します。 月1回の町内道路清掃は、 毎月第一土曜日に会社周辺1qぐらいを全社員で行います。 現場をきれいにすることは、 「まちづくり」 につながるとともに、 近所のお客様に満足していただけます。 現場や会社の周りを清掃している時は、 通りすがりの方々に挨拶もします。 全然知らない人に挨拶するのは抵抗がありますが、 最近やっとできるようになりました。 すると今度は相手の方からも挨拶をしていただけるようになりました。
 地域に必要とされあてにされる会社を目指して、 現在は 「鉄筋コンクリート戸建分譲住宅」 の 「プラザハウス」 を企画・施工することで、 「資産価値のある住宅によるまちづくり」 に取り組んでいます。 「プラザ」 というのは 「広場」 という意味で、 近所同士の垣根のない住宅を提案しています。 鉄筋コンクリートですから、 20〜30年経ってもスラム化はしないのです。 駐車場も広場のように設計・施工し、 垣根をつくりません。 交流の場に使えるので、 お客様にも説明して理解していただいたうえでお買い求めいただいております。
 また、 毎月 「真心」 いう広報誌を発行し、 本社所在地から1.5qエリアに自分たちの手でポスティングをしています。 私も200件ほど担当して配っております。
 さらに、 毎年11月3日には地域の方々や協力業者の方々への感謝の気持ちを込めて 「ふれあい大感謝祭」 というイベントを開催しています。 社員の手づくりで企画・運営するこのイベントも、 年々来場者も増え、 昨年は1100名もの方々に来ていただきました。

【中小企業憲章とは?】

 今、 同友会で取り組みが始まっている 「中小企業憲章制定運動」 は、 「同友会の三つの目的の総合実践」 と言われています。 つまり 「地域の発展なくして中小企業の発展はなく、 中小企業の発展なくして地域の雇用維持拡大と発展はない」 という考えのもとに、 広く社会に 「中小企業の大きな役割」 を認識していただくための運動です。
 ヨーロッパには 「EU小企業憲章」 というものがあります。 今から10年前にできたもので 「小企業はヨーロッパ経済のバックボーンであり、 主要な雇用の源でありビジネスの発想を育てる大地である」 と規定しています。 ヨーロッパは2000万社ある企業のうち1900万社が小企業です。 同友会の仲間が5年前にヨーロッパを視察し、 「これに学ぼう!」 と提唱しました。
 日本もヨーロッパ同様、 全事業者数の99%以上が中小企業で、 就業労働人口の約80%を中小企業が担っているのが事実です。 いわば 「日本経済を支えている裾野」 です。 富士山が雄大で美しいのは裾野が磐石で安定して高くそびえているからです。 その裾野であるわれわれ中小企業がプライドと使命感を持って元気に働くことが、 日本経済を盤石なものにすることに繋がると考えます。
 そのためには、 中小企業の存在を地域の皆さんに正しく認識してもらい、 地域のあるべき姿を共に語り、 力を合わせていかなくてはなりません。 行き過ぎた規制緩和政策を選択した日本は、 失業や老後の不安を抱えています。 これは、 「市場原理主義」 のもとで、 一部の勝ち組と大多数の負け組という誰も否定できない構図ができてしまったことによります。
 今、 日本は先進国の中で、 起業率が低く、 後継者不足に陥っています。 「明るく豊かな社会」 を次世代に残していくために、 「中小企業憲章」 を制定して、 中小企業庁を省に格上げし、 中小企業大臣を置き、 毎年中小企業の予算をきちんと組んで政策を進めることです。
 ただ求めるだけではなく、 大切なのは、 われわれが制定された憲章を実践できるシステムに対応できる中小企業家になることです。 地域経済を支えるリーダーになれる会社をつくりあげることです。 大変厳しい責務ですが、 それを目指していきたいと思います。
 同友会の三つの目的のひとつに、 「よい経営環境をつくろう」 というものがあります。 経営環境を変える歯車になることが、 われわれ中小企業家の使命です。
 経営は 「片手にソロバン、 片手にロマン」、 同友会運動は 「片手に経営指針、 片手に中小企業憲章」 だと私は考えます。 皆さんには、 「中小企業憲章」 がわれわれの日々の暮らしや企業経営と不離一体のものであると感じていただければ幸いです。
 同友会での私の最大の学びは、 「人の話を聞く耳を持つ」 ということと、 「謙虚な姿勢と素直な心を持つ」 ということです。 このことを胸に刻み、 これからも大いに学び実践していきたいと思います。

今月の内容

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