経営者としての私の失敗
ただ、 私自身まだまだ経営者としての自覚が甘く、 3年前に大きな失敗をしました。 みんなに同じ方向を向いて仕事をしてもらいたいと思い、 歩合制を導入したことです。 現場の利益の20%を営業と現場に振り分けるというやり方でした。 多い人では月収100万円近く稼ぐ社員もいました。 しかし、 「自分の現場が儲かればよい。 自分さえよければ」 という雰囲気を招き、 結果として歩合制を辞める決断をしました。 一番稼いでいる社員に聞くと 「前の会社の方がよかった。 給料は安くてもよいから、 社内がギスギスしないほうがいい」 と言われました。 本当に自分はバカなことをしてしまったと反省をしました。 「仕事は金じゃない、 金で人は動かない」 と本当に思ったものです。
また、 現場員の楽を考えるあまり、 直行、 直帰を認めるなどもしていました。 会社にとっては非常にマイナスです。 お金の面でも、 時間の面でも待遇をよくすれば働いてくれる、 それをするのがよい経営者だと思っていたのです。 大変恥ずかしいことですが、 それがつい最近までの私の考えでした。
社員の成長こそがわが社の強み
東北黒沢建設工業が今あるのは、 この会社にかかわった多くの社員がこの会社を作ってきたからです。 中学校卒でオペレーターになった者、 高校中退で土建屋に入り、 当社に来た者。 その人たちが、 現場代理人として立派に仕事を終えてくるようになりました。
つい一週間ほど前に終わった現場ですが、 木造建物の解体現場がありました。 現場を持たせる人間が不足している状況でしたので、 部長から、 「この現場を K に持たせていいでしょうか?」 と相談があり、 任せました。 K は中学校を卒業して、 18歳の時に入社し、 現在22歳になる社員です。 最初は不安でしたが、 K は最後までやり遂げました。 ある時、 お昼休み後に現場に行ってみると、 30人くらいの下請けの作業員を集めて、 午後からの作業の指示を出していました。 自分よりも年上の作業員が多い現場で堂々としていました。 「いつの間にか、 こんなことも出来るようになっていたんだなあ」 と、 涙が出る想いでした。 彼がこの大きな現場を持ったことは、 K にとっても大きな自信につながったと思います。
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