No.191(2007年6月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
〒981−3133 仙台市泉区泉中央2−11−1 リバースビル302
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

総会記念講演 代表理事によるパネルディスカッション
「我が経営と同友会を車の両輪として」

パネラー
(株)ホットマン・イエローハット 社長
伊藤信幸氏

パネラー
(株)ジェー・シー・アイ 社長
佐藤隆雄氏

パネラー
(株)佐元工務店 社長
佐藤元一氏

パネラー
(株)メガネセンター(弐萬圓堂) 社長
福王 進氏

コーディネーター
マルチプライ(株)社長
五十嵐弘人氏

同友会との出会い

五十嵐 最近、 会員の皆さんから 「東京・大阪は小バブルで景気が良い話を聞くけれども、 地方の中小企業ではその実感が持てない」 という話を耳にします。 今日はこの点を深く掘り下げながら、 参加者の皆さんが活路を見出せるパネルディスカッションにしたいと考えております。 それではパネラーの皆さん、 順に自己紹介をお願い致します。
福王 社名はメガネセンター、 店の名前は 「弐萬圓堂」 ということで、 今、 荒川静香さんを全面に打ち出した広告戦略で、 展開エリアを広げております。 同友会には知人の勧めで会社設立後すぐに入会しました。 早いものでもう30数年になります。
佐藤(元)  今日は皆さん創業者ですが、 私だけ二代目ですね。 創業は1955年です。 ガラス1枚・紙1枚から本格建築までをモットーに若林で建設業を営んでおります。 29歳で同友会に入会し、 今年還暦を迎えます。 こうして皆さんの前でお話しできるのは、 夢のまた夢でしたが、 とにかくつぶれないでここまで来ることができたのは、 同友会のおかげだと思います。
佐藤(隆)  1976年に車いすなどの福祉用具の販売を目的に設立しました。 障害者施設で指導員をする中で、 障害を持った人の働く場を作りたいという思いで創業しました。 創業して10数年間、 障害者の人たちと福祉施設しかわからない人間だった私に、 ある時、 高校の同級生から同友会を勧められました。 1989年の入会です。 異業種の皆さんからたくさんの気づきをいただき、 経営指針を創る会の受講で会社には理念が必要だと学びました。
伊藤 カー用品販売のイエローハットを中心に、 ビデオレンタルの TSUTAYA、 中古車買取りのガリバー、 中古カー用品売買の UP GARAGE、 ゲームセンターのセガワールド、 100円ショップダイソーと合計53店舗を運営しています。 同友会に入会したのは社員が90名の頃です。 すぐに共同求人活動に参加し、 60名の新卒を採用しました。 当初は毎月赤字でしたが、 3月の決算時には、 黒字に転換しました。 現在ではほとんどが店長になり、 各店で活躍しております。 現在ではパート・アルバイト含め750名の社員がおります。

地方の中小企業を取り巻く現状

五十嵐 今の時代・地域をとらえ、 どのように地域と関わっていらっしゃるのかお聞かせいただけますか。
佐藤(隆)  福祉業界はこの25年間で大きく変わりました。 1976年の設立当時、 定款に 「福祉機器の販売およびレンタル」 という事業目的を書き法務局に持参すると、 まだ日本の職業分類の中に福祉機器の販売という職業がないということで医療機関の一部と書き加えることで受理していただきました。 それから25年後の2000年、 介護保険制度が始まった時に、 「介護保険法による福祉の販売およびレンタル」 と文言を変えないとこの事業はできなくなり定款を変更したのですが、 ようやく産業として認められたということです。 介護保険制度のスタートに伴ってこの事業は儲かると夢を見た新規参入業者もたくさんおり、 3814社が名乗りを上げました。 そして現在では9400社です。 しかし2005年の介護保険の改正により、 この業界全体の売上げは20〜35%の減に転じていることに加え、 今後のさらなる制度の改正、 そして国家予算では年金と医療と福祉の中から毎年2200億円の予算削減政策が出されています。 「介護の社会化」 ということがよくいわれておりますが、 一体何なのでしょうか。 福祉に対する最初の理念を忘れているように思えてなりません。 私どもでは、 このような事態が起こることを既に予測していたので、 次の手をどう打つかを常に考えながら経営にあたってきました。
佐藤(元)  建設業も、 業者が半分になるだろうといわれています。 人口が減れば歳入も減る、 仕事も減ります。 われわれの仕事はひとことで言えば 「快適生活環境創造企業」 だと私は考えます。 どういう商売も同じですが、 一番つらいのは大競争の中で、 相撲でいえば横綱と序の口が同じ土俵で相撲を取るという状況を、 国が政策的につくっているということですね。 しかし横綱が百戦百勝するのを黙って見過ごすわけにはいきません。 そこで私は 「地域」 の定義を広い意味では宮城県全域に、 狭い意味では仙台商圏ととらえております。 人間の生活として 「食べる」、 「着る」、 その次に 「住む」 ですから、 地域が豊かにならないとわれわれの商売も発展しえません。 だから何としてもこの仙台が豊かになって発展してほしいと考え、 そのためにも自社が地域発展にどう貢献するかを考えなければなりません。 地域になくてはならない会社、 地域に必要とされる会社になれれば、 厳しい環境下でも生き残りは可能だと私は考えております。
伊藤 ダーウィンは進化論で 「強いものが生き残ってきたのではない、 変化に対応してきたものだけが生き残っている」 と言っています。 創業当時、 ホットマンはカーショップのチェーンでした。 しかし途中で独自のチェーン展開で戦うことの限界を感じ、 イエローハットへの加盟を選択しました。 皆さん、 自動車整備の間の待ち時間が退屈に感じることはありませんか。 この視点から、 お客様に待ち時間も喜んでもらえる方法はないかと考え、 複合店舗展開を始めました。 また、 地域を広げることで商売を伸ばそうと、 宮城・岩手・福島に加え、 今年から関東への展開を計画しているところです。
福王 メガネセンターは1975年、 ディスカウントから始まりました。 しかしこの戦略で 「お客」 は拾えても、 「顧客」 と 「贔屓 (ひいき) 客」 は拾えないとも学びました。 ディスカウンターは、 永遠にし続けなければならないという運命にあるのです。 企業が成長していく中で、 ディスカウント戦略から脱却しようと 「弐萬圓堂」 の業態を確立しました。 目的はあくまでも 「ノンディスカウント」。 ハイイメージとハイクオリティというものが前提となってのロープライスです。 「2万円」 というワンプライスになったことで、 以後個別に価格を入れた宣伝をしたことはありません。 しかしながら、 品質 (レンズ) へのこだわりはありましたので、 オプションをつけても20,000円という 「純正弐萬圓堂」 にするまでに9年かかりました。 無名ブランドのレンズを使えば可能でしたが、 そうはしたくありませんでした。 東京の町田での成果を手ごたえに、 私はこの 「純正弐萬圓堂」 というビジネスモデルを持って、 今度は攻めに転じました。 山梨・静岡・富山・金沢・福井・岡山・沖縄と店舗エリアを順次拡大しているところです。

大競争時代を生き抜く戦略

五十嵐 それでは現在、 どのような考え方・方針で経営にあたっているか、 その中での成功事例や失敗事例も交えてお話ししていただければと思います。
佐藤(隆)  新規事業の立ち上げと、 商品開発ですね。 商品開発は、 広域展開の有効な手段です。 それに関連して、 新規事業として今年の10月に認知症のグループホームを始めます。 収益を上げることが目的ではありません。 設計から運営まで、 会社の中にノウハウをため込もうと考えてのことです。 これまでのようにベッドや特殊浴槽などひとつひとつひとつの設備で商売をするのではなく、 設計から運営まで一連して関われば、 お客様の相談にトータルして乗れる体制ができます。 そんなモデル的なグループホームを目指しています。
五十嵐 近年、 福祉を学んだ学生の業界離れ、 他業種への就職も増えているようですがどのような採用活動を行っていますか?
佐藤(隆)  一つは定期採用です。 これまで福祉施設そして企業もそうですが、 人がいなくなったから補充しようという採用を行ってきたところが多くありました。 しかし景気の回復とともに、 他業界の会社にどんどん人材は流れます。 我が社もこれまで、 同友会に入って共同求人で定期的採用をし、 社員共育活動で人育てに取り組んできました。
五十嵐 採用と人づくりの話について皆さんに伺ってみましょう。
福王 やはり店づくりに必要なのは人づくりだと改めて実感しております。 エリア拡大に伴い、 中途採用の即戦力を求めると、 同業他社の経験者の応募も多くなりました。 確かに経験者は助かりますが、 やはり考え方や会社の共通理念が全く違いますので、 それを我が社の経営理念にあった社員として育成していくのはとても難しいことです。 地元宮城など既存のエリアでは同友会の共同求人などで新卒採用を続けています。
伊藤 若い人を採用できない会社は、 今後成長できないと思います。 我が社の特徴として、 内定者には店でのアルバイトを経験させています。 ミスマッチを防ぐこと、 仕事を早く覚えられること、 社風を早く感じてもらうこと、 いろいろな効果があります。 今年も21名、 昨年は36名の新入社員が行いました。 採用は戦術です。 売上げの何割かを削ってでも社員を採らないと企業は成長できませんよね。
佐藤(元)  本物の快適生活環境創造企業になるために、 建ててよかった住まいづくりと同時に住んでよかった暮らしづくりが提案できる会社、 人づくりをめざしています。 また、 地域とのかかわりでいえば、 まちづくりのリーディングカンパニーになろうと今、 力を入れているのが掃除です。 会社、 そして現場の周りはきれいにしようということで、 現場は日に5回掃除しています。 また向こう3軒両隣や道路も掃除しています。 おかげさまで、 ご近所の方からの仕事も増えています。 掃除、 挨拶、 スピード対応、 これらを徹底的に磨くことで我が社は少しずつ地域の評価を得られるようになってきました。

中小企業が地域を支える

五十嵐 最後になりましたが、 今後の方向性についてお聞かせください。
伊藤 会社全体的には、 ジャスダックに上場しようとプロジェクトチームをつくって準備を始めています。 上場し、 他人資本が入ることで優秀な人材の採用、 有益な情報もたくさん入ってくるのではないかと思います。 そのための人づくりということで、 いろいろな角度からも社員教育には今まで以上に力を入れ、 私自身も同友会でもっともっと学んで頑張りたいなと思っています。
福王 上場については私もいろいろ考えましたが、 現在はやらない方向でおります。 上場すれば M&A を前提とした対策も考えなければなりません。 その場合、 われわれのように人を育てるなんていう思想はもっていません。 業績の伸びている業界1位の会社が狙われるのです。 そういう意味でも、 自分は上場しないままでどこまでやれるか挑戦していきます。
佐藤(隆)  これまで我が社が手を打ってきたことには、 同友会の学びを生かしたことが多くあります。 特に同友会大学の学びから参考にしていることは多々ありました。 その中で同業他社との差別化をはかっていきます。 それから今年、 同友会に共生福祉部会を立ち上げ、 中小企業での障害者雇用を考えようと例会も開催しています。 自社の技術力向上、 社員の質、 それから社会貢献がさまざまな場面で評価される時代がやってきます。 私も実践してまいりますので、 皆さんもぜひ、 考えていただきたいと思います。
佐藤(元)   「会社経営は片手にソロバン、 片手にロマン。 同友会運動は片手に中小企業憲章、 片手に経営指針」 だと考えています。 経営指針があったおかげで、 ここまで歩んでくることができました。 変化に対応し、 小回りのきく会社として地域にあてにされる企業になることが大切ですが、 一社でできることには限界があります。 だから中小企業憲章制定運動に本気で取り組んでまいります。 日本では全事業者の99.7%が中小企業、 商業労働者の80%が中小企業に働くといわれています。 同友会が掲げる中小企業憲章は、 「中小企業が日本経済のバックボーンであり、 主要な雇用の源でありビジネスの発想を育てる大地である」 と掲げる EU の小企業憲章をモデルとしています。 この憲章をまず学ぼうという学習運動が全国的に始まっています。 われわれ中小企業がよくなれば、 日本国内の80%の人々が元気になる、 99.7%の事業所が元気になるということですから、 日本を元気にすることに直結しているというふうに思いませんか。 20世紀はカネ・モノの時代。 でも21世紀は心の時代です。 同じ方向を向いた人が手を携える、 それが中小企業制定につながります。 まずは地域振興条例からです。 他団体の皆さんにも力添えをいただき、 学校も行政の方も交えながら、 ワーキングテーブルみたいなもので条例をつくり、 そこから国単位で中小企業憲章制定に向けて運動を展開していくという形ができればいいなと考えております。 具体的には中小企業庁を省にし、 担当大臣をおいてもらう。 これが最終到達点です。 そのためには我々もそれに見合った会社づくりをしていかないと片手落ちになりますからね。 自社の発展とともに、 経営環境も改善していく気運が熟してきたということを皆様にご理解いただきたいと思います。 皆さん、 頑張りましょう。

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