No.201(2008年4月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
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●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

宮城同友会 景気の状況に関するアンケート結果

3月号にて 「2007年下半期 (7月〜12月) の景況調査」 をお知らせいたしましたが、 この景況調査は 「景気の状況に関するアンケート」 を宮城同友会会員企業247社にお願いし、 うち115社から寄せられた回答をもって出されたものです (回答率 46.6%)。
この調査を取りまとめるにあたっては、 東北大学大学院経済学研究科・地域イノベーション研究センター権奇哲教授、 大滝精一教授ならびに福嶋路准教授の協力を得ています。
権教授、 大滝教授により分析されたコメントをご紹介いたします。

優れた経営指針に求められる知識

東北大学大学院経済学研究科・地域イノベーション研究センター 権 奇哲


  今回は、 会員企業における経営指針の成文化と運用の状況について調査が行われた。 同友会の長年にわたる 「経営指針を創る会」 の活動が実り、 また経営者たちの努力によって多くの企業が成文化による効果を上げていることは大変嬉しいことである。 企業経営にとって最も重要なことは、 どのような商品をどのような顧客にどのように売るかという決定である。 経営指針は、 経営環境の変化に対応しつつその決定を継続的に導き、 そして力強く実行していくために求められる。 こう考えると、 経営指針の策定と実行にとって最も基本的なレベルで必要なのは、 自社の商品と想定される顧客に関する豊富な知識である。 商品と顧客に関する豊富な知識こそがほんものの経営指針の決め手となる。
 J.W.ヤング (1886〜1973) という人物は、 米国の広告史に名を残した広告マンである。 彼は広告アイデアづくりにおいてこの知識の重要性を強調する。 著書 『アイデアのつくり方』 の中で彼が指摘したように、 私たちは、 商品と顧客について身近な知識をもつことの重要性を絶えず口にするけれども実際にはめったにこの知識の探求をやっていないのではなかろうか。 この知識の探求について、 ヤングは、 19世紀フランスの代表的な作家モーパッサンが小説を書く勉強法としてある先輩の作家からすすめられた勉強法を紹介している。 「パリの街頭に出かけてゆきたまえ。 そして一人のタクシーの運転手をつかまえることだ。 その男には他のどの運転手ともちがったところなどないように君には見える。 しかし君の描写によって、 この男がこの世界中の他のどの運転手ともちがった一人の独自の人物に見えるようになるまで、 君はこの男を研究しなければいけない」。 ヤング自身、 石けんの広告アイデアを探すのに、 石けんと皮膚と髪の毛との関係を研究し、 かなり分厚い一冊の本を書き上げ、 この本から5年間広告に使えるいろいろなアイデアを得たという。

経営指針の全社的で継続的な取り組みを

東北大学大学院経済学研究科 教授 大滝 精一


 今回の調査では、 特に会員企業の経営指針の成文化および運営について調査が行われたので、 この点についてコメントすることにしよう。
 言うまでもなく、 経営理念をはじめとする経営指針は、 中小企業の経営にとって極めて大切なものである。 経営指針は、 船の航海にたとえれば、 大海原にあって船を正しい方向に導く星のような存在である。 その経営指針を成文化し、 トップのみならず社員全員がそれを共有することほど、 中小企業の経営にとって心強い支えはない。 にもかかわらず、 今回の調査で経営指針を成文化していない企業が全体の20%近くに達していることは、 やはり驚かざるをえない。 このうちの約65%が 「成文化のきっかけがつかめない」 と回答していることは、 同友会としてまだまだなすべきことが多くあることを示唆するものといえる。
 他方において、 同友会の 『経営指針を創る会』 が、 会員企業にとって重要な役割をはたしていることも、 今回の調査は明らかにしている。 実に回答企業の40%以上が 『創る会』 で経営指針を成文化しており、 また社員と共に成文化している企業も30%近くある。 同友会の面目躍如たるものがあるといえよう。
 成文化は、 その努力に見合う成果をあげているのだろうか。 回答結果をみる限り、 「経営者として重視すべきことが明確になった」 (26.1%)、 「わが社の存在意義が明確になった」 (18.7%)、 「社員との経営指針の共有がすすみ、 社員が自主的に行動するようになった」 (17.6%) など大きな効果をもたらしていることがみてとれる。
 もっとも継続運営については、 経営理念で約25%、 経営方針で約40%、 経営計画で約45%の企業が何らかの点で問題を意識していることがうかがえる結果となっている。 継続運用に関しては、 同友会として問題の所在をさらに明確にし、 改善に向けてフォローアップをしていく必要があるといえよう。

今月の内容

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