三井逸友氏 (助言者) の報告の一部
憲章から SBA (スモールビジネスアクト) への動き
憲章は制定後の検証が重要だと思います。UEAPME (欧州クラフト・中小企業同盟) では 『チェックも決して充分ではない。むしろ弱まってきている』 という不満の声がありましたが、毎年EUはレポートを出し会議を召集して実行のチェックをしています。ただ単にアリバイ的にやっているのではなく、検証の取り組みには各国政府関係者、EU関係者、そして中小企業団体等からも必ず参加し自分達の抱える問題点等を積極的にアピールしています。検証の取り組みの中で中小企業の声を聞くこと自体が重要な目標になっています。この取り組みは今後、日本型中小企業憲章の運動を考えていく上で大事なところの一つです。また、UEAPME からの問題点として 『憲章は完全な拘束力を持っていない。あくまで精神的な部分がかなりある。もっと強制力、拘束力のあるものを求めている』 ということを強調していました。それが実は現在進行形で発展を遂げつつあり SBA (スモールビジネスアクト・小企業議定書) というものが出てきています。その文案が欧州委員会の方から発表され10の原則が示されています。
- 企業家と家族経営が繁栄し企業家精神が報われる環境を築く。
- 倒産に瀕した正直な企業家は第二のチャンスをすぐに得られるようにする。
- Think〜の原則に沿った諸規則を設定する。
- 中小企業のニーズに応える行政機関を設ける。
- 中小企業のニーズに公共政策のツールを適合させる。
- 官工事への中小企業の参加機会を推進し中小企業への各国支援策をもっと利用しやすくする。
- 中小企業の金融アクセスを推進し商取引における適切な支払い。(これはいわゆる支払い遅延問題、ここについての法的、事業的環境を築く。)
- 市場統合から生じる機会から中小企業が一層利益を得るのを支援する。
- 中小企業でのスキルの高度化とあらゆるイノベーション形態の推進を図る。
- 中小企業が環境問題を事業機会と変えられるようにする (いわゆる中小企業にとって環境問題を経営の制約ではなくて、逆に新しいビジネスチャンスでもあるという考え方)、そして、いろんな市場の成長から中小企業が利益を得られるように奨励、支援する。
欧州委員会が出した文案ですから最終的にどうなるかはわかりません。個人的に言えば小企業憲章の格調の高い文章に比べて少し生々過ぎる気がします。こうした形で大きな枠組みが強制力を伴う形で形成され、それに合意されれば今後のEU各国、各地域の取り組みにとって非常に大きな推進力になることは間違いないと思います。Think Small First の考え方をあらゆる制度、政策に積極的に生かし、中小企業の声を反映させる。それが経済の発展、社会の安定につながるという共通理解が着々と進みつつあり、その為にヨーロッパの中小企業団体等は、いろいろ努力し声をあげている。こういう現実を我々は見ることが出来たと思います。 |