No.208(2008年10月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
〒981−3133 仙台市泉区泉中央2−11−1 リバースビル302
TEL (022)218-2571  FAX(022)218-2575
E-mail miyagi@m-doyu.gr.jp
【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

2008 経営研究集会まであと1ヶ月余!

 「今こそ自らの手で宮城同友の旋風を巻き起こそう!」のキャッチフレーズのもと、経営研究集会の準備が着々と進んでいます。これまで実行委員会も仙台、大崎、石巻での3回に渡り開催され、各支部・地区より副委員長としてエリア担当者を選出、それぞれの地域の参加目標に向けて、真壁実行委員長を中心に支部・地区の役員会、例会に積極的に出向き、研究集会への参加をお願いしています。
  研究集会は決して特別な場ではありません。宮城同友会各支部・地区で行われている毎月の例会の“集大成”として、必ず自社が抱える問題解決の糸口が見えるはずです。ぜひ会員皆さんの力を結集し、会員自らの参加はもとより、多くのゲストの参加を募っていただければと思います。

2008 経営研究集会見どころ聞きどころ

第1分科会 経営指針の全社的実践

テーマ:「“第2創業”で時代を切り拓く 〜経営指針の全社的実践が未来を変える〜」

報告者:東洋産業(株) 専務 玄地 学氏

 玄地専務は、大手企業で営業を経験ののち、父親が経営するケミカル産業(株) (山形本社) に入社。1999年、仙台の業界のライバル会社である東洋産業(株)が安売り主体の営業で行き詰まり、M&Aと経営再建を託され会社を引き継ぐことになりました。しかし、社員はやる気があっても、会社は数字では表せない部分 (整理整頓・在庫管理・日報など) がなっていない売上だけを競う状況でした。社内でも、ある社員からは「今まで、いい事をしても褒めてくれないし、悪いことをしても叱ってもくれない。」と労使のコミュニケーションができていない状態でした。
  その中でも順調に業績は回復しますが、「このままのやり方で本当に会社を経営していけるのだろうか?」と不安に思い、自社の生き残りをかけ第18期「経営指針を創る会」を受講します。その中で、社員と一緒に経営理念を創ることの大切さに気づき、これまでやっていた仕事も社員に任せるようになりました。社員が着実に成長していくなかで、「リーダーとは、常に先頭に立って引っ張っていくことだと思っていたが、そうではなく社員と正面からしっかりと向き合い、社員が自信と誇りをもって自主的に考え行動できる環境をつくることだ。」と気づき取り組むようになりました。実践を通して、玄地専務自身も「俺について来い!」経営から、「困った時の社員頼み!」ということを実感とし、同友会の入会前は「会社にとって都合のいい人づくり」を行っていたのではと改めて気づかされたのでした。
  現在、業界を取巻く環境が厳しく先の見えない状態であるからこそ、卸売業から「総合衛生プロデュース業」へ変革し、地域社会に本当に必要とされる企業を目指し実践しております。第1分科会は、自社の方向性やビジョンを明確化したい、さらには社員へ浸透させるにはどうしたらいいのか?と考えている人へたくさんのヒントが詰まっている分科会です。ぜひご参加ください。

第2分科会 社員教育の実践

テーマ:「人が育つ会社を目指して 〜社長と社員の信頼関係づくり〜」

報告者:(株)オプス 社長 菅原俊樹氏

 (株)オプスは創業から数年、同業下請け100%の業態で【売上重視・効率追求型】の経営をしていました。そんな時、菅原氏は同友会に入会し大きなテーマを突きつけられます。それは「自社の強み」、「なくてはならない会社」、「価格決定権を持つ」の3点でした。このテーマに経営者として明確に答えられず悩む日が続きます。しかし、ある時、日々必死に働く社員を見て、創業時に描いていた会社の未来とは違う、『このままで社員は幸せになるのだろうか?自分達の仕事は報われるのだろうか?』 と考え始め、7年前にオプスの誇りと未来をかけて下請けから元請け転換への決心をし、第一歩を踏み出します。
  当時の菅原氏が考える良い社長とは、全て先頭に立ち、安い給料で人の何倍も働き、いちばん仕事ができる。社員は指示通りやればいいと考え 『自分の教えたとおりにやりなさい』 と社員全員を直接育成していました。しかし、ある時、「社員同士の中に信頼関係がつくられていない」、「社員同士会社に尊敬する人がいない」状況になっていることに気付き、大きなショックと危機感を感じます。その時に、部下を育てるという一番やりがいのあるところを自分が独り占めしていたことに気付き、幹部の人育て・学ぶ場の環境をつくっていくことが経営者の仕事だと考えるようになりました。以来、幹部が人を育てること、社員同士の信頼関係を築くことの2点を経営の重要テーマに位置付け 『他人 (ひと) を育てる人』 を育てる連鎖をつくる取り組みをしています。『人を育てるには上司 (幹部・経営者) の心構えが必要不可欠です。現状は上司の力量の投影だと覚悟を決めることなしには信頼関係は絶対に在り得ないと考えています』 と菅原氏は語ります。
  菅原氏が悩み続けた3つのテーマは単体のものではなく実は経営の根幹を意味する一つに繋がるテーマでした。菅原氏と社員、会社の“今”と同時に“未来”を守るために取り組んできた(株)オプスの 『共に生きる経営』 の挑戦から学びます。

第3分科会 幹部によるパネルディスカッション

テーマ:「幹部社員がわが社を語る 〜もう一人の経営者〜」

報告者:日東イシダ(株)  取締役部長 藤見時雄氏
          中央営繕サービス(株)  取締役部長 長島和行氏
          (有)ほのぼの介護  取締役所長 鈴木秀明氏

 第3分科会は3人の幹部社員さんによるパネルディスカッションです。@社員から経営参画者としての変化、A社長との徹底的な関わり、B部下との関わりについてお話しいただきます。
  パネリストの3人に共通しているのは、社長とは血縁がない取締役の方々ということ。そして会社の変革期に経営の参画者として活躍していることです。「社長がどうしてこういう会社をつくりたいと言っているのか・みんなにとって良い会社とはどんな会社なのか」を考えながら、現場の責任者としてその足元を固めてきた方々です。
 「何のために働くのか?」という素朴で本質的な問いかけを自分自身に課し、自らの実践で答えを出そうとするお三方は、自分の業務に意識を向けるだけでなく、豊かに人生を語れる人間をめざし、社内で「何のために…」と問いかけあう、話しあいの場を起こしています。自ら成長したいと思う社員を社内に増やしていくこと、一人ひとりの個性や強みを一緒に見つけてあげること、スキルアップ・バージョンアップした社員には自分の周辺のことや自分の仕事の先を考えられるように応援すること、そしてそれが会社の発展につながるようにすること…。三者三様の取り組みを報告していただきます。
  幹部社員だけでなく、青春の若さを失わない魅力ある自分づくりをめざす方にも必聴の分科会です。

第4分科会 採用と共育を新たな運動へ

テーマ:「採用と共育こそが成長の源泉」

報告者:(株)テクシード 社長 奥河内博夫氏

 (株)テクシードは建物・コンクリート構造物の診断とリニューアル事業を柱にしている建築業です。バブル崩壊から10数年。倒産や赤字経営の厳しい嵐が吹き荒れる建設業界で奥河内社長は、大手セメントメーカーに25年勤務し47才で一念発起。設立の翌年2名の社員を迎えて現在は22名の社員と共に力を併せて頑張っている企業です。設立から10年で年商10億を突破、当時を振り返ると5億までは社長自信のマンパワーで何とかなるのかもしれないが、そこから先は社員の力が必要になると語る奥河内社長。雇用する時に必要な事は社員自信が「ここで頑張ろうと思える会社かどうか」「会社の中で自信の将来を描けるかどうか」「頑張った先に何があるのか?」を明確にしなければ人は集まってこないといいます。最初から全てが順調なわけではなく、同友会会員の先輩に採用について相談をしたり、同友会の研修、求人活動に参加しながら1つずつ経験、失敗を繰り返し会社を作ってきたそうです。奥河内社長はこう言います。

  • ちょっとした社員"共育"で競合他社と差が付く。社員のいうことを良く聞く、ほめる、声を掛ける。いい人材が来ないではなく、いかに長所を引き出すかである。月1回は、グループ討論をするといったことも大事だ。社長を超える幹部、社員を育てる。それには、社長が一番勉強しなければならない。
  • 小さな会社は気をつけなければ、社長が何とかしてくれると、親方日の丸的になってしまう。社長自らが動く、ガラス張りの経営。会社をそして社員を私物化しない。常に目標を持つそして社員に希望を持たせる。

奥河内社長の生の報告をぜひお聞き下さい。

第5分科会 自社・業界・地域を一体として

テーマ:「経営危機からつかんだ展望」

報告者:(株)タケウチ 会長 竹内昭八氏

 (株)タケウチは主婦が家庭の中で消費する洗剤や歯ブラシ、紙類や線香、ローソクなどの日用品雑貨の地方卸問屋です。規制緩和によって大手大型店の出店・価格競争が過熱し、取引先である地域小売店・地場スーパーは売上が激減して吸収・合併や倒産・廃業が相次いでいます。これによって(株)タケウチも30%以上の売上激減に直面し、経営危機に陥っていました。
  そんな中、竹内会長は学習を続けてきた「中小企業憲章」「中小企業振興基本条例」 の視点から「第2創業」 を実現します。
  地域を見渡せば、大型店の無差別出店と無責任な撤退によって、商店街はシャッター通りとなり、人と人との繋がりは分断され、空き店舗が無惨に放置されたままになっている。
  改めて今まで自社を支えてくれた得意先、同業者、メーカー、地域の人々を見つめ直せば、自分たちが地域の人々の暮らしを支える存在であり、特に小売店とは 「競争的共存」 の関係を構築することが重要であることに気がつきます。
  こうして竹内会長は、「細脈流通」 を担う存在として自社を位置づけ、社員とともに小売店との「競争的共存」関係をどのように打ち立てていくのかを全社的に追求していきました。
  さらには、新しい中小問屋のネットワークとして注目されている地方問屋の全国組織「(株)サプリコ」の設立にも携わり、共同企画・商品開発・商談代行などの機能の充実と 「ミドルプライス」 (ロープライスのものを郊外大型店で買うよりも交通費や時間のかからない地域小売店で買った方が少し高くても得である) という考え方のもと、本来あるべき秩序ある市場への変革を目指し尽力しています。
  この分科会では、企業規模や業種業態の違いを超えて多くの経営者が直面している「経営環境の変化」に対して、われわれがどのように取り組んでいくのか?まさにリアルで実践に即した竹内氏の報告を聞くことができます。また、グループ討論では、各社の現状から未来を語り合い、明日への希望と勇気を共に持つことができるでしょう。
(去る 9/8 に(株)タケウチを訪問・懇談した(株)伸電・原田誠会長のレポートを参考にいたしました)

第6分科会 事業継承パネルディスカッション

テ ー マ:「伝承し進化させる主体者として」

パネラー:(株)八木澤商店 社長 河野和義氏
           (株)八木澤商店 専務 河野通洋氏

 「食べ物は小手先を使わずに、材料と時間を惜しまないのが一番」 と「古式てこ絞り」(720mlを500本つくるのに1週間かかる) というほんもの醤油づくりを徹底する八木澤商店の8代目が河野和義社長。9代目となるのが通洋専務です。八木澤商店のほんものづくりは全てに徹底しており、漬物は保存料、化学調味料は一切なし、きゅうりは自根 (じこん) きゅうりと言う昔のイボイボきゅうりを自分の畑でつくっています。
  河野社長は有名な陸前高田の太鼓フェスティバルの生みの親でもあります。味噌醤油業を営むかたわら、ないものねだりをするのでなく、あるもの生かしで古里の良さを伝えようと、20年前、「いのちは鼓動から始まる」を合言葉に市民ボランティアで立ち上げ、今も続いています。高田地元学を起こし、市民が自分のことばで自分の町を語る魅力にひかれて人々が訪れグリーンツーリズムになる、など多彩な活動の仕掛人です。
  通洋専務は、10年前に入社。「経営が大変なのは社長が悪い、俺に任せろ」と合理的経営手法を押し通し、社長や社員と対立します。同友会に入って04年、第15期経営指針を創る会に参加しますが、孤独な経営指針づくりは一歩も進みません。「諦めるな。最後までやり抜くのが経営者だ」という同期の仲間に励まされ、社員の協力がなければ一歩も進まないことをはじめて痛感します。鼻っ柱をへし折られ、謙虚に「頼む、協力してくれ」という専務の声に応えた社員の手で改善の提案が次々と実行されました。
 「昔の八木澤商店では 『使用人』、その後も 『従業員』、しかし、専務が社員と共に経営指針を創ってからは 『社員』 に変わった。これまでの八木澤商店の歴史にはなかったことだ。」と和義社長は語ります。
  現在、小中学校の生徒と一緒に米、豆、自根きゅうりを育て、社員が先生となって味噌や豆腐を作り、命の大切さを教えています。21世紀を東北の時代、陸前高田の時代にしよう、八木澤商店がその礎になろうと夢を語りながら歩む、親子の志を聞いて下さい。

今月の内容

バックナンバー一覧に戻る