東北大学大学院経済学研究科 教授 大滝精一
今回の調査をみると、 会員企業の景況感が前回と比較して悪化している。 全国的には景気の回復が言われ、 大企業の中には過去最高益を更新する企業も少なくない中での今回の結果は、 やや意外な感もするが、 これが地域の中小企業が直面する実態であり、 マスコミ等での報道と中小企業の現場の間には、 一定のずれがあることを改めて認識させられたともいえる。 中小企業を取り巻く環境は、 依然として厳しいものがある。
意外と言えば、 今回の調査で行われた後継者問題についても、 会員企業の7割で後継者が既に存在することが明らかになった。 また残りの3割の会員企業の中でも、 およそ6割の企業が 「今後、 後継者育成に取り組む」 と回答しており、 「企業売却を検討している」 と回答した企業は、 わずか2.5%にとどまっている。 このような結果は、 後継者問題が多くの会員企業にとってあまり深刻な問題ではないことを示唆しているようにもみえる。 この結果がやや意外なのは、 近年全国的にみれば中小企業のM&A (合併・買収) が急増しており、 その原因の一つは後継者問題にあると言われているからである。 もっとも、 M&Aという言葉に抵抗感をもつ経営者は少なくないだろう。 巷間話題になっている敵対的買収などは、 中小企業と無縁なものと考えておいてよい。 私のみるところ、 戦略的企業合併ないし合同を必要としている中小企業は、 宮城県内でも必ずしも少なくないように思えるのだが・・・。
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