No.194(2007年9月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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発行日/毎月1日発行

コラム

宮城同友会2007年上半期 (1〜6月)
景気の状況に関するアンケート結果より

東北大学大学院経済学研究科 教授 大滝精一

 今回の調査をみると、 会員企業の景況感が前回と比較して悪化している。 全国的には景気の回復が言われ、 大企業の中には過去最高益を更新する企業も少なくない中での今回の結果は、 やや意外な感もするが、 これが地域の中小企業が直面する実態であり、 マスコミ等での報道と中小企業の現場の間には、 一定のずれがあることを改めて認識させられたともいえる。 中小企業を取り巻く環境は、 依然として厳しいものがある。
 意外と言えば、 今回の調査で行われた後継者問題についても、 会員企業の7割で後継者が既に存在することが明らかになった。 また残りの3割の会員企業の中でも、 およそ6割の企業が 「今後、 後継者育成に取り組む」 と回答しており、 「企業売却を検討している」 と回答した企業は、 わずか2.5%にとどまっている。 このような結果は、 後継者問題が多くの会員企業にとってあまり深刻な問題ではないことを示唆しているようにもみえる。 この結果がやや意外なのは、 近年全国的にみれば中小企業のM&A (合併・買収) が急増しており、 その原因の一つは後継者問題にあると言われているからである。 もっとも、 M&Aという言葉に抵抗感をもつ経営者は少なくないだろう。 巷間話題になっている敵対的買収などは、 中小企業と無縁なものと考えておいてよい。 私のみるところ、 戦略的企業合併ないし合同を必要としている中小企業は、 宮城県内でも必ずしも少なくないように思えるのだが・・・。



東北大学大学院経済学研究科 准教授 藤本雅彦

 今回の調査で明らかにされた後継者問題への取り組みについて、 会員企業の4割で後継者が決定しており、 3割で未確定だが候補者がいるという結果に注目したい。 これまで多くの中小企業の後継者不足が喫緊の課題になっていたからである。 実際に、 2006年12月の会員データによれば、 経営者の平均年齢が51.4歳で平均在籍年数が7年1か月であり、 経営者の平均年齢は徐々に低下傾向にあるという。
 これらの調査結果からすると、 地域経済の担い手である中小企業経営者の世代交代が確実に進展していると思われる。 そしてこうした経営者の世代交代は、 地域経済のイノベーションにとってプラスに作用すると考えられる。 『中小企業白書』 (2001年版) でも事業継承による世代交代を 「第二創業」 のチャンスとして積極的にとらえており、 過去からの業界の慣習や考え方にとらわれずに新たな視点や発想でイノベーションを誘発する起爆剤になることが少なくないからである。
 そのための後継者の育成への取り組みとして、 今回の調査では 「自社内で広範囲な業務を経験させている」 (34.3%)、 「段階的に権限を委譲している」 (33.3%)、 「会合・経営者向けのセミナー等に参加させる」 (20.4%) となり、 経営者としての職能横断的な経験や幅広い見識を養うことが重視されている。 しかし、 昨年度実施した我々の調査では、 イノベーションを牽引する 「企業家型後継者」 は、 他社での勤務経験 (武者修行) や海外企業の長期視察などを通した 「視点を飛躍させる経験」 が重要な役割を果たしていることも明らかにされた。 後継者の育成には長期的な取り組みが要求されることは言うまでもないことではあるが。

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