No.193(2007年8月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
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発行日/毎月1日発行

活き生き企業訪問記

地域に笑顔を提供し愛される企業をめざして


有限会社 竹鶏ファーム 社長 志村浩幸氏(白石蔵王地区会員)


竹炭との出会い

  「いらっしゃいませ!!」 竹鶏ファームへ行くと、 従業員の皆さんが笑顔一杯で迎えてくれます。 竹鶏ファームは創業42年、 現在は三代目の志村浩幸社長が従業員8名と3万羽の鶏と元気いっぱい仕事に取り組んでいます。 竹鶏ファームではこの鶏たちを 「私たちの彼女」 と呼んで大切に育てています。 その彼女たちは毎日2万3千個近くの卵を産んでくれ、 その卵は、 通信販売と直販販売を通じてお客様に届けられています。
 志村さんが長年思ってきたことは、 「なぜ自分で作った卵に値段をつけられないのか?いつか自分たちの作ったものに自分たちで値段をつけたい」 ということだったそうです。 自分たちで作ったものを自分たちで売る喜び、 感動、 そしてそれをどのようにして伝えるかが課題となりました。
 竹鶏ファームは国道4号線沿いにあります。 緑に恵まれた蔵王の土地と環境の中で、 鶏は元気一杯育っています。 ところで志村さんには以前から1つの悩みがありました。 それは畜産独特の 「ニオイ」 です。 養鶏場の回りには住宅も並んでおり、 このニオイについて気になってはいましたが、 近所の人たちから何も言われなかったため、 志村さんは近所の人たちの思いを知ることはありませんでした。
 ある日、 炭には脱臭効果があるという話を聞き、 蔵王の農場の山にある竹を竹炭にしてニオイを取ることができないかと考え、 実験してみることにしました。 その結果、 気になっていたニオイが驚くように取れたのです。 それから数日して、 近所の人から 「畜産のニオイが取れて、 夏になっても車の窓を開けて走れるようになったよ」 と言われた志村さんは、 改めてこのニオイの対策に取り組むことへの決意を固めました。 竹炭の用途を調べてみると、 炭にはさまざまな効果がある事を知りました。 その効果とは、 ニオイを取る作用。 水の中に入れると浄化する作用。 そして炭を炊飯の時に入れて炊くと、 ご飯がふっくら美味しく炊きあがる作用などさまざまです。 これが竹鶏ファームで炭を使うきっかけにつながりました。
 さらにうれしいことがありました。 ある日、 卵を買いにきたお客さんから 「卵の味が変わったよ」 と言われたのです。 最初は信じられませんでしたが1人、 2人、 3人と 「味が違う」 と言っていただいたことをきっかけに、 詳しく調べてみることにしました。 そこで愛知大学の教授に依頼して、 調べてもらった結果、 DHAの吸収を高めるインスリンに似た物質が発見されました。 ニオイを取ろうとした竹の炭をエサに混ぜて使用したことが、 結果として健康な卵を作り出すことになったのです。

自分が販売している 「卵」 とは?

 こうしておいしい卵が生まれた時、 志村社長は 「たくさんの人にこの卵を食べて健康になってもらいたい」 という気持ちで一杯になりました。 しかし鶏は卵を産んでくれる 「モノ」 としか見ておらず、 卵をたくさん売ることばかり考えていました。 従業員に対しても 「皆で一所懸命、 卵をどんどん売れ」 と言ってきました。 しかしそうした考えはいつまでも続くわけではありません。 その考えを変えたのが同友会の 「経営指針を創る会 (以下創る会)」 です。 創る会では、 「あなたの売っている商品は何なのか?」、 「ほんとうのお客様は誰か?」 などを問われました。 初めは、 そう問われている意味も解らなかったそうです。 しかし深く考えてゆく中で、 「お客様に笑顔を届ける大切さ」、 「従業員に対する感謝の気持ち」 「地域に生かされている」 という思いを付加価値として卵に付けることを徹底しました。 また 「まずは自分たちが元気にならなければ、 お客様に元気を与えることはできないし、 鶏も元気にはならない」 と思い、 従業員との話し合いを徹底することにしました。 初めはなかなか口を開いてくれなかった従業員も、 毎日の会話のなかで少しずつ話してくれるようになりました。 従業員の提案で、 会員カード、 リサイクルカード、 地元の醤油を販売することなどさまざまな意見を取り入れ、 すぐに取り組みました。 秋には竹鶏ファームとして 「かぐや姫」 という米ができあがる予定です。 お客様に直接触れ合うことで従業員の意見がひとつの形となり、 喜び、 感謝、 責任が生まれ竹鶏ファームを元気づけています。

命から命へのバトン

 志村社長は語ります。 「私は卵を売っているのではない。 幸せと健康を地域に発信している」 「近隣の人が 『美味しい』 と食べてくれない卵を地域の人は食べてくれない。 地域の人が食べてくれない卵は全国の人が食べてくれない。 近隣の人と手をつないでいく事が地域に全国へと広がって行くんだ」 と。 「私たちは命をいただき、 命を食べ生活している。 この感謝の気持ち、 命からのバトンを大切にしなければ人間は生きていくことはできない」。
  「竹鶏物語」 ―― それは鶏と竹炭と従業員、 そしてお客様や地域の人たちの思いがつながる命の物語です。 志村さんは従業員にお給料を渡す時に 「このお金は私が払っているのではない。 彼女たち (鶏) が大切に産んでくれた卵を、 お客様に喜んで買っていただいて初めて払えるんだよ。 だから、 彼女たち (鶏) とお客様に感謝して受け取ってほしい」 と話しています。

夢を卵にこめて仲間づくり

 竹鶏ファームの卵を割ると、 ふっくらしてツヤツヤとした卵が出てきます。 食べると口いっぱいに美味しさが広がります。 竹鶏ファーム全てに係わる仲間たちの笑顔や元気、 思いがひとつの卵となり美味しい卵を作っているのです。 志村社長はこれからのビジョンを 「自分たちの地域で同じ目標を持ち前進できる仲間を増やし、 地域の人たちと手をつないで地域のすばらしさを発信したい。 そしてそのすばらしさをみんなで分かちあい、 次世代の子どもたちに伝え、 全国へ広げていきたい」 と話しています。

今月の内容

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