与えるシステムでなく使いたくなるシステムを
私は、 商売をするのではなく 「仕組みをつくること」 が大切だと思います。 日本で上勝町ほど仕組みをつくっているところはないのです。
まず、 日本で初めて防災無線を使っての電波送信を考えました。 たった1秒で送信することができます。 行政のものも全てみんなで使えればいいのです。
そして、 日本で初めておばあちゃんが使えるコンピューターを開発しました。 コンビニの商品棚を見て 「必要な人に必要なものを必要なときに届ければいいんだ」 とひらめいたのです。 大型店にできない 「小回りと敏速さ」 を戦略にすればいいと思いました。 そのためにはどうしてもコンピューターが必要だったのです。
議員さんに提案したら 「わしらに使えんもんが親につかえるか!」 とごもっともなご意見をいただきました (笑)。 そこで大手メーカー出身のコンピューターに強い同級生にシステム開発をお願いしました。 ところが、 導入した家に見に行くと使ってないのです。 「使うことがない」 と言われました。 このときに 「システムはこちらがつくって投げかけたらいけないんだな。 何が見たいのか?何でこのスイッチを押すか?を考えないといけないんだな」 いうことに気づきました。
自らヒットが打てる環境づくり
社員が元気になる、 小さい会社が元気になるには 「出番と評価」 です。 自信がない、 やったことがない人に絶対空振りさせてはいけないのです。 コツンとヒットを打たせることです。 ホームランではなくセンター前にコロコロとヒットを打たせると、 「あっ!打てた!」 と思います。 そして 「次もヒットを打ちたいな!」 と思うのです。 これがとても大事です。 成功体験がある人は必ず成長できます。
ですからコンピューター画面のなかで空振りをさせないようにするのです。 まずは個人情報である自分のやった成績と順位が出てきます。 おばあちゃんたちにとって 「何人中何番」 というのを見るのは面白くてしょうがないのです。 1番の人が北海道へ旅行に行くときに、 「3日休んだら、 2番の人に負けんかなぁ?」 と聞いてきました。 3日間いないうちに抜かれると思うとソワソワするくらい気になるのです。 やったことが目に見えることがとても大切です。 空振りを何回も繰り返すと人は自信をなくします。 「自分はダメなんだな」 と思ってしまいます。
商品の動きは先読みをかけます。 ホテルの混雑状況や天候や結婚式の件数などの必要な情報が入ってきます。 1ヶ月で一番売れる日と売れない日で10倍も違うのです。 その売れる日に自分がコンピューターの前にいないとダメなのです。 (株)いろどりでそれらの情報を分析しておばあちゃんたちに発注します。 見たら得する情報だったら絶対に見たくなるわけです。 家にいながらスイッチひとつでどんどん情報が自分のものになるのです。
人は日々の生活習慣からなかなか抜け出せないものです。 昔の上勝町も、 講師を呼んだり視察に連れていったら 「いい勉強になった。 ありがとう」 と言うものの家に帰れば元通りということが多かった。 変えないほうが安心できるから、 その上にどっぷり浸かってしまうのです。 上勝町が一番変わったのは、 「与えられている環境」 から 「自分の頭で考えるという習慣」 を一人ひとりが持つようになったところです。 講習会や研修会で学んだことが次へのステップにいかなければならないですが、 たいてい元に戻って前に進まないものです。
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