新入社員フォローアップ研修会

「私の生きがい、 働きがい」

〜 同じ“働く”ならば、 自分から楽しく働きかけよう 〜
 

マルチプライ(株) 宍 戸 雄 太さん (入社3年目)


 マルチプライ(株)に入社して今年で三年目を迎えます。 当社の業務内容は清掃用資機材の製造・販売、 建築設備の保守点検です。 その中で私が行っている仕事は、 エレベーターの保守・点検で、 契約を結んでいるお客様のエレベーターを毎月一回訪問し、 定期点検の作業を行っています。 入社してすぐにエレベーター部門に配属になりました。 希望していた仕事でしたので、 スタートというよりはゴールした気分でした。

電話が鳴るたびにビクビク……

 少しずつ仕事に慣れて楽しくなりかけた入社一年目の5月、 私の指導をしてくれていた先輩が辞めることになりました。 エレベーター部門はその年に新設されたばかりで担当は先輩と私だけでしたので、 楽しさは一転してプレッシャーに変わりました。 「すべて自分一人で対応しなければならない」 自分の力以上のことを求められることになり、 その重圧で私は会社を辞めたいと思うようになりました。 一人だけで悩み、 社内で相談することもできず、 会社の電話が鳴るたびにビクビクする毎日。 悪い考えしかできなくなっていました。
  そんな時、 京都にある同業者の企業へ研修に行かせてもらえることになりました。 そこで初めて同業者の考え方や意見に触れ、 自分と同年代の人たちが同じような仕事をしている姿も見て、 自分も負けてはいられないという気持ちになりました。 今まで故障の連絡や緊急の対応にビクビクしていた自分が、 何かあったら“相談できるところ”“相談できる人”に出会えたことで安心し、 自信へもつながりました。

好奇心から出た失敗

 落ち込んでいた気持ちを少し持ち直して仙台へ戻り、 気分も新たに業務をこなしていたある日、 私は重大な過失をおかしてしまいました。 それはある店舗の定期点検で安全装置を作動させてしまったことです。 それは通常の点検では作動させないところなのですが、 その日は興味からつい作動させてしまいました。 京都から戻って仕事を覚え、 自分の気持ちにも余裕ができ 「今の自分なら対処できるだろう」 という過信から生じた行為でした。 しかし実際はなかなか復旧させることができず、 結局6時間もエレベーターを止めてしまったのです。
  エレベーターの保守・点検は 「問題がないのが当たり前」 の仕事のはずなのに、 自分勝手な過信でお客様にご迷惑をかけ、 会社の信頼を損ねてしまいました。 再び自信を無くし、 当然怒られるだろうと思いながら帰社して状況を説明する自分を、 社内の人たちはとがめることもせず、 「お客様にはきちんとお詫びするから」 と言ってくれ、 暖かく迎えてくれたような気がしました。 初めて、 会社に安心感と仲間ができたと感じました。

自分が嫌だったことは
後輩に体験させたくない

 さまざまな失敗を繰り返しながら一年が立ち、 とうとう私にも後輩ができました。 しかし後輩にどう接していいのか分からず、 ちょっとしたことでも後輩にあたってしまいました。 これではいけないと思い、 何か良い方法はないかと悩みました。
  そんな中で昨年10月、 あるエレベーター会社に勤めていた方が期間限定で私の指導にあたってくれることになりました。 その人との出会いは私の大きな財産です。 20年間ずっとエレベーターの職に就いていた人で技術面はもちろん、 人間としても影響を受けました。
  その人に教わったことは“まず自分で何が最善策かを考え、 そしてすぐ動くこと”。 その人の仕事をする姿勢や準備の前では、 私の考え方ややり方は、 ただの甘えでしかありませんでした。 そう感じてから、 どんなことでもまず自分の考えを持って一貫した仕事の姿勢を持つようにし、 後輩にもまず自分で考えてもらうようにしました。
  そして今年4月、 6人の仲間が新しく加わりました。 後輩にも後輩ができたわけです。 私は先輩がいない中でも自分でやってきたという自負心から、 新しく後輩ができた彼に対して彼の力量以上のものを求めていました。 気がついたら、 昔の私がプレッシャーに感じていたことを彼に押し付けていました。 改めて人に教えることの難しさを実感しました。 葛藤しながら、 後輩がいかに自信を持って仕事ができるかを一緒に考えているところです。
  エレベーター業界がマスコミを賑わせていますが、 私の仕事は 「問題がないのが当たり前」 の仕事です。 そういう使命を持ちながら、 来年に新しい仲間が加わるまでには私自身も後輩たちももっと技術的・人間的に成長していたいと思っています。

「この仕事は俺がやったのだ!」

 正直に言えば、 仕事は楽しいことばかりではありません。 しかし 「この仕事は俺がやった」 という達成感を味わえたときには、 それまでの苦い経験や辛い気持ちをはるかに上回る気持ちになれます。
  辞めたい・逃げ出したいと思うときは誰にでもあり、 また、 そのような気持ちにさせる“カベ”はどんな環境でも必ずおとずれるものだと思います。 そのまま逃げ出すか・乗り越えるかは一人ひとりの意識の違いがあるかもしれませんが、 乗り越えようと思ったら今の自分自身の状況を把握し、 どうすればいいか一生懸命考えなければなりません。 一生懸命やれば必ず良い知恵が出ます。 また自分一人の力だけではなく周りの仲間の支えがあってこそあらゆる“カベ”を乗り越えられるものだと思います。
  私も今後、 辞めたい・逃げ出したいと思うことと出くわすかもしれません。 しかし私自身、 まだまだ勉強することがたくさんあります。 周りの人たちからたくさんのことを吸収し学び、 自分の将来像を想定し、 今自分でやっておくべきことを身につけていきたいと考えています。 そうしているうちに 「あのときに逃げ出さずにいて良かった」 と思う日は必ず来るのだと確信しています。



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