日本酒業界の構造改革のなかで
日本酒業界は近年厳しい状況にあり、毎年 5%くらいずつ売上が落ちてきています。一ノ蔵を設立した1973年ころがピークでした。当時は生産量が 1000万石 (1升瓶で10億本分、180万キロリットル) に近づこうという数字でした。いまや400万石を切り、まもなく300万石を切るだろうと予想されています。ここ30年で6割の市場を失ってしまったわけです。
酒造メーカーの数も、私が業界に入ったころは約4000社近くありましたが、現在は実質1500〜1600社ぐらいまでに激減しています。そのうち13社で生産量の5割を占めているというのが日本酒の業界です。
69年に自主流通米制度ができて、酒の業界も、それまで国税庁が全て需給バランスを取って酒を作る量を決めていた温室のような状況から突然外に放り出されてしまいました。そして4つの大きな選択を迫られました。大手として卸を通して販売、卸を通さず、直接小売店に販売、桶売り (原酒販売) 専門の業者になる、廃業する。廃業するときは転廃給付金を出します、とのことでした。
この構造改革がきっかけとなって73年、宮城県内の(株)浅見商店、勝来酒造(株)、(株)桜井酒造店、(株)松本酒造店の4つの蔵が1つになり、一ノ蔵が誕生しました。
最初は苦労しましたが、この30年で6割も減った市場の中で、一ノ蔵は売上を 5 倍くらい伸ばしてきています。これも、いろいろな人との出会い、そして社員の懸命な努力があったからこそだと思います。
|