No.204(2008年6月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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発行日/毎月1日発行

ワークライフバランスと少子化社会 〜 仕事と生活の調和した働き方を 〜

 いま、 少子化社会を克服するための、 「ワークライフバランス」 (仕事と生活の調和) が求められています。 非正社員の増加や近年の人事・賃金システムの変化等によって、 正社員の働き方はますます余裕の無いものになっています。
  「平成19年版労働経済白書」 を受け、 我々中小企業がこの実現に向けてどのように取り組んでいくべきか、 昨年12月の 「中小企業家しんぶん」 に掲載された 「少子化問題を考えるシリーズ」 より、 桜美林大学 鬼丸智子 准教授のレポートの一部を抜粋してお届けいたします。

雇用戦略の転換が少子化の一因

 現在、 日本の少子化は予想以上のスピードで進んでいます。 2007年11月に国立社会保障、 人口問題研究所で発表した最新将来推計人口をみても、 女性や高齢者に対する雇用対策が進まない限り、 2030年の労働力人口は2006年の6,657万人から1,070万人も減少すると試算されています。 このような危機的な状況をふまえ、 「労働経済白書」 では、 人口減少へと転じたわが国社会が、 「今後も持続的な経済発展を実現していくために」 「仕事と生活の調和を図ることができる雇用システム」、 すなわち 「ワークライフバランス」 (以下WLB) 推進を軸にしながら日本の雇用システムを再考しようとしています。

余裕の無い働き方が正社員の生活を蝕む

 処遇格差・賃金格差が拡大する中で労働者間競争と長時間労働が労働者の心身を蝕むまでに激化することも少なくありません。 正社員として働く女性は、 企業の期待にこたえながら家庭責任を全うするのは、 男性以上に難しくなるため、 結婚や出産の先送りや生み控えを招く要因となっています。 また、 育児や介護などの理由で正社員としての働き方を諦めるなど、 非正社員としての採用が労働市場参入の一つの追い風になっています。
  しかし、 非正社員として働くマイナス面も少なくありません。 雇用は不安定で、 賃金水準は正社員と比べて著しく低く、 勤続を重ねても年収の上昇も見込まれません。
  このように将来展望を描きがたい状況に置かれた非正社員は金銭的余裕のなさから結婚に踏み切れず、 また結婚したとしても子供を持たない、 あるいは希望より少ない数の子供を持つ選択を余儀なくされ、 非正社員の経済的な恵まれなさが少子化の一因ともなっています。

WLBの推進は企業にとってプラス

 今回の白書のポイントは、 このような状況の改善に必要なWLBの推進が企業にとってもプラスになることを示そうとしています。 すなわち、 WLBによって長時間労働の是正や仕事の効率化による勤労意欲・生産性の向上を図り、 中・長期的には、 女性の労働人口の上昇や少子化対策に貢献することにより、 企業に必要な人材の確保が可能になり、 国内経済循環の円滑な展開に役立つことが強調されています。 そのうえ、 今後の人口減少社会を支える社会的基盤づくりや、 消費支出を通じた国内の経済循環の円滑な展開に役立つことも強調されています。

中小企業の強み 「顔の見える関係」を生かして

 では、 どうすれば中小企業がWLBの実現に踏み出せるのでしょうか?
  非正社員も含め、 「同じ職場で働く仲間」 に柔軟な処遇を行っていく姿勢が必要です。 短時間正社員制度や柔軟な労働時間の導入といった制度的側面も重要ですが、 中小企業の強みの一つである 「顔の見える関係」 を大いに生 かすべきでしょう。 たとえば各種制度や資格を取得しやすい雰囲気づくりや、 長期的な観点からの人材育成は、 労働者にとって 「働き続けていいのだ」 というシグナルを送ることになります。 また、 WLBにかかわる問題で悩んでいる労働者に対し、 時差出勤や短時間勤務を認めるといった柔軟な対応も必要となります。
  WLBは 「それぞれの労働者が置かれた状況を理解しあい、 お互いに譲り合う心を持てるような職場の実現」 を目指すものであるともいえるでしょう。 そして、 その成否は企業のトップが握っているといっても過言ではありません。 まず社長からWLBに積極的に取り組んでいただきたいと思います。
  現在の中小企業は、 概して経費の削減によって利益を作り出す傾向にあります。 このような状況ではWLBの実現に伴う負担増を受け止めがたい面も出てくるかもしれませんが、 今後、 同友会としては、 WLBに取り組むための情報提供や勉強会など、 さまざまなバックアップ策を講じるとともに、 企業規模に関係の無いWLBの実現に向けての政府や財界に対する働きかけを行うべき時期が来ているのではないでしょうか。

仕事と生活の調和を図るための制度を整備することの効果

資料出所 労働政策研究・研修機構 「経営環境の変化の下での人事戦略と勤労者生活に関する実態調査」(2007年)
  (注) 1) 仕事と生活の調和を図るための制度とは、 短時間正社員制度、 在宅勤務制度、 法定以上の育児休業制度等仕事と生活の調和に資する勤務時間制度や休暇制度等のことである。
     2) 無回答を除く。
(平成19年版 「労働経済白書」 より)

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