No.198(2008年新春号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
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発行日/毎月1日発行

太白地区9月例会 「後継者としての使命」


<パネリスト>
 新野自動車(株) 専務取締役 新野統一氏
 (株)  米  庄 専務取締役 庄子裕介氏
 (株) 岩 見 組 常務取締役 岩見圭記氏
<座  長>
ジャパンインシュアランス(株) 代表取締役 庄司 誠氏

【座 長】 「後継者としての使命」 というテーマに沿って話を進めていきたいと思います。 まずは、 それぞれの会社の概要をお話しいただけますか?
【岩 見】土木工事、 外構工事の基礎工事を主に行っています。 資本金は1000万円で、 社員は社長以下11名です。 東京から山元町に疎開してきた祖父が地域の方に請われて大工を始めたのが当社の始まりです。 その後は主にハウスメーカー等の建築の仕事を行っていたのですが、 父の代で土木の専門会社を併設しようと岩見組を作りました。 現在は公共工事が約50%、 民間の仕事が約50%、 民間の中でも下請け約60%、 お客さまから直接にいただく仕事が約40%の比率となっています。
【庄 子】明治元年の創業、 来年で140周年という節目の年を迎えます。 現社長である父が4代目、 資本金は2000万円で、 従業員は約120名程です。 創業時から主食であるお米を中心に外食産業やホテル、 学校給食、 食堂などのお客さまが99%を占めています。 26年前に、 仙台で60号店となるセブンイレブンを立ち上げ、 平成3年に炊飯会社、 平成5年にはとんかつ店 「庄や」 を設立、 翌年には藤崎百貨店に 「おむすび亭」 というおにぎりショップ、 平成14年には石巻で 「フレッシュフード」 というお弁当屋を展開しています。 昨今の厳しい情勢の中、 「おいしいお米を提供する」 「完全に競争がない」 「浮気されない信頼関係を取引先とつくる」 という考えでやっております。
【新 野】父はマツダのディーラーに勤務しており、 昭和40年6月に独立して会社を立ち上げました。 現在資本金は2000万円、 社員は9名となっております。 創業時は一般家庭でも車を持つようになった時代で、 黙っていてもお客さんが来てくださっていたので、 お客様のニーズに応えられるような整備力を身につけるのが企業努力の柱でした。 ここにきて整備業界の棲み分けが崩れてきて、 一般整備や車検も少しずつ減るようになりました。 そこで当社は今年の3月に、 お客さまへのサービスを強化し、 新たな事業開拓をしようと 「コバック」 という、 車検に特化した全国チェーンフランチャイズに加盟しました。 集客や接客のノウハウをはじめ、 合理的な車検整備をそこから学んでいます。

家業を継ぐきっかけとなったもの

【座 長】お三方とも現在は、 お父君が社長をされていますが、 自分も家業に携わるようになったきっかけは何でしたか?
【岩 見】小学生の頃は自分も家業を継ぐことになるのかな、 程度にしか考えていませんでした。 中学生の時、 父に 「おれは将来どうしたらいいのか」 と聞きましたら、 「人に使われるより使ったほうがいいだろう」 と言われて継ぐことが明確になりました。 大学卒業後5年は他の会社で修行しました。 そこでは入社と同時にトンネル工事の仕事を与えられ、 1日1メートルずつ掘っていく作業にそのやりがいとおもしろさを感じ、 トンネルが開通した時に感じた達成感と喜びと感動が、 土木業の家業を継ぐ決意となりました。
【庄 子】私は大学を出て、 地元百貨店に入社しました。 仕事も職場環境も好きで、 一生働きたいと思っていました。 父とは疎遠ぎみでした。 ある日、 母から商売が厳しいことを聞かされました。 当時は食管法が廃止されたことや、 平成5年の大凶作による外米輸入など、 いろいろな要因が重なって業績を大きく下げてしまったのです。 私も父とはつながっていかなければならないとどこかで思っていたのと、 父を支えたいという思いで、 平成8年に百貨店を辞め米庄に入社しました。
【新 野】私が生まれて半年後に父が会社を興しましたので、 常に仕事が身近にありました。 昔はレッカー車のようなものはなく、 夜に車の修理が終わってから親父と一緒に車を届けるという生活を過ごしていたので、 密着していました。 いつかは自分がこの仕事を継ぐだろうという思いが根底にありました。 長男として一番良い選択をしようと、 家業を継ぐことにしました。

後継者だからこそ出来ること

【座 長】入社して数年が経過した現在、 どんなことに取り組んでいますか?
【新 野】社長は昭和6年生まれで75才になります。 私は入社して16年ほど経ち、 そろそろ世代交代しなければいけないというところです。 今は現場は私が中心で行い、 経営の判断は社長に仰いでいます。 この度、 コバックにフランチャイズ加盟をしましたが、 昔ながらのお客さまから 「身売りしたのか」 と言われました。 コバックの看板を見て、 新野自動車が乗っ取られたのではないかと心配されたようです。 こういう長いおつきあいのお客さまへの対応と、 新しい車検のシステムに期待して来店していただくお客さまへの対応は違うので、 どちらのお客さまにも満足していただけるように取り組んでいるところです。
【岩 見】父と息子という関係は腹を割って話しづらいと言われることがありますが、 私も社長とずっと距離を置いて仕事をしていました。 去年 『経営指針を創る会』 を受講した時に 「社員や社長の考え方に接点がないと仕事はできないよ」 と教えられても、 そのときの私には実践できませんでした。 『創る会』 の中でも、 いつ社長交代するのかと問われ、 『創る会』 修了後の11月に家族と話し合い、 「俺はいつ社長になったらよいのか」 と相談しました。 母は父に生涯現役でいてもらいたいようでしたが、 逆に父からは 「お前しだいだ。 俺はいつでも任せたいと思っている」 という本音を聞く事ができました。 そして自分が父に甘えすぎていたことを知りました。
 創業者は自分の意志で仕事をやっていきますが、 後継者には先代が作った土台があり、 そのうえで経営できるのは恵まれていることだと思えました。
【庄 子】 「社長の息子として生まれたこと」 に感謝したいというのが、 正直な気持ちです。 社長と疎遠だった頃には、 後ろめたいことをすると社長の目を見られなくなったり、 社長のことに必要以上踏み込んでいけないと感じたりする時期もありました。
 米庄に入社してからも、 商売が順調に進んでいれば問題はなかったのでしょうが、 どこかへ逃げ出したくなるような時もたびたびありました。 今は逆に、 私の方から社長に対してこういうところに営業に行きましょうと提案も出来るようになったので、 現在は良い関係になっていると思います。

社長や社員とのコミュニケーション

【座 長】現在の社長と社員、 社員と皆様の関係はいかがですか?
【新 野】わが社は半分が身内なためか、 従業員も社長も家族的な雰囲気があると思います。 社員と社長の関係を見ると、 社員は社長のことを慕っていると思います。 私は現場を指揮する立場として社員に厳しく接することもありますので、 私に対しては慕っているというよりは恐がっているのではないでしょぅか?ただ社長と私の方向性はずれていないので、 そのうえでは社員も安心し、 信頼関係はあると思います。
【庄 子】社長は親分肌で、 社員をひっぱっていくタイプです。 そのためか、 社長の意志に従って動く社員もおります。 社員には自分で考えて行動するということが今まではあまりなく、 自分一人で判断しきれないことがあるとすぐ社長や私に意見を求めてきました。 社内でも活発な意見がなかなか出てこないということがよくありました。
 しかし、 私が入社から直接に関わった30代の社員が遅くまで残って仕事をするようになり、 自分の考えを理解してくれる努力をしてくれるようになりました。 お客さまのために動いて喜んでもらうことが自分たちの喜びとして還元されるということを、 私は繰り返して言っています。 外食部門も業界的に厳しい状態ですが、 「お客様の健康づくり」 をテーマに、 おいしいと言って喜んでいただけるお客様をより多くつくるため、 スタッフとともに一から作り変えている段階です。
【岩 見】私は、 経営者が一人で動けば会社も動いていくと思っていました。 社員とはあまりコミュニケーションも取らず、 「俺の姿を見ろ」 とばかりに私一人が一生懸命に頑張ってみても会社は一向に良くなりませんでした。
  『経営指針を創る会』 の受講中に、 理念は社員と一緒につくりなさいと言われたのをきっかけに、 自分から話かけるように努めました。 社員の方からも少しずつ話をしてくれるようになったとき、 自分一人で出来ないことも社員と一緒なら出来るということに気づきました。 それによって社員にもだんだんとやる気や責任が生まれてきたようで、 現在は向上心をもって、 いろいろな現場に行きたいと自ら言ってくれるようになりました。 これも社員と一緒に経営指針を成文化したおかげかなと思います。

次世代への架け橋となる

【座 長】最後に、 今後の展望を後継者としての覚悟を踏まえながらお話しいただけますか?
【新 野】わが社は 「仙台一の車検屋」 を目指しています。 後継者という立場を意識するよりは、 社員と共に目標の設定をし、 達成までの仕事を楽しんでいきたいと思います。 給料や待遇面だけではなく、 社員との目標の共有やベクトル設定がうまくいったときに初めて、 私は本当の経営者になれるのだろうと思います。
 一般的な車検実施台数は1000〜1500台くらいですが、 私どもの会社では去年は500台でした。 これを5年後に車検取り扱い3000台、 10年後には仙台に3店舗展開し10000台が目標です。 経営者としてきちんと利益を出すのは当たり前なのですが、 社員には直接的に利益率で話をしても実感がわきませんから、 現場で実感できる数字 「5年後3000台、 10年後10000台」 で表わしています。 それを社員と一緒にめざして達成すれば、 わが社は仙台で一番の車検会社になれるし、 社員の誇りや自信にもつながります。 目標をきちんと持たせられるかどうかが経営者の仕事だと思います。
【岩 見】地域になくてはならない会社にするということが今一番の目標であり、 社員も同意してくれています。 地域に貢献できる会社になるためには、 地域だけではなくもっと広範囲の視野が必要ですし、 社員の頑張りにも応えられる会社にならなくてはいけない。 これを達成させることが私の後継者としての覚悟です。
 今までは幹部社員のミーティングはしてこなかったのですが、 これからは月2回、 幹部社員とのミーティングを行って、 身近な数字の目標とその達成を一つ一つクリアし、 積み重ねていきたいと思っております。 それは全て将来につながることだと思っています。
【庄 子】まずは従業員が安心して働ける環境を作ることが大前提だと思います。 まだまだ小さい会社ですが、 内容はしっかりした会社、 福利厚生が出来る会社、 定年後も安心できるような会社を作っていきたいと考えています。
 創業明治元年という古い歴史、 伝統という看板を背負って仕事をしてきましたので、 その歴史を閉ざすことなく、 後世に継承していきたいというのが後継者としての一番の本音かもしれません。 歴史と地域が育くんでくれたこの会社をしっかり受け継いで次世代にバトンを渡せるようにするのが、 今の私が持っている展望です。


今月の内容

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