No.198(2008年新春号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

新春対談「良い会社づくりと豊かな地域づくりは車の両輪」
〜学んで会社を良くする仲間を増やそう〜


     

中小企業家同友会
全国協議会 会長
鋤柄 修氏

 

宮城同友会代表理事
佐藤元一氏
((株)佐元工務店社長)

 

組織活性化委員長
五十嵐弘人氏
(マルチプライ(株)社長)

 

全研実行委員長
鍋島孝敏氏
(日東イシダ(株)社長)

「あの企業はちょっと違う」 と言われることが、 仲間づくりの源泉

【司 会】リーダー、 特にグループ長は良い会社・良い地域をめざすリーダーづくりと結びついていると思います。 私たちも現在、 すべてのグループ長が宮城から輩出できることを目標に全研に臨んでいます。
 全研をきっかけとしたいもう一つの課題は組織づくりですが、 この1年間取り組んできた 「仲間を増やそう運動」 について、 五十嵐組織活性化委員長からお願いいたします。
【五十嵐】地域の元気は、 地域の一員である私たち企業の元気な会社づくりと結びついていますから 「良い会社づくりと豊かな地域づくりは車の両輪」 のテーマのもとに、 元気な会社をめざす会員経営者を増やし、 地域を活性させたいという思いで取り組んでいます。 それは会社の中で人が育つ環境づくり、 そして地域の中で会社が育つ環境づくりの運動ですから、 経営者には必要なテーマではないでしょうか?
 入会をお勧めに伺うと、 一人で悩んでいる経営者が思いのほか多いことに気づかされます。 一人で悩む経営者をなくして一人でも多くの経営者に元気になってほしい。
 県内でも、 企業から元気が失われているのが日々進行してそれが当たり前になり、 意識や心情のうえで会社づくりの障害になっているとか、 前進できないという状況を生み出しているように感じます。 この全研をきっかけにして仲間を過去最大の会勢にし、 会員同士あるいは地域みんなで解決できる幅を広げていきたいです。 同友会が発展する姿が経営者の希望となるように、 さらに取り組んでいきます。
【鋤 柄】今年は各地同友会が会勢を伸ばしています。 私は全国をまわるたびに 「会員が増えなければ学んで実践していることにならない」 と言ってきました。 ときには 「会員増強が会の目的ではないのだから、 良いことをやっていれさえすればいい」 という意見を聞くことがあります。 同友会の目的は“3つの目的 (よい会社をつくろう・よい経営者になろう・よい経営環境をつくろう) ”ですから、 会員を増やすのは確かに目的ではありません。 しかし、 その3つの目的に向かってチャレンジし追求した結果が会員数に表れます。
 経営者だったら 「良いことさえやっていれば…」 という自己評価の自己満足に陥ってはいけません。 自分が良いことを実践し続けてそれを仲間に伝えて賛同した仲間をいつでも迎え入れ、 お互いに磨きあっていくのが同友会ですから、 目的にふさわしい実践をする人が何人いるかが大切です。 企業の調子が悪いときは仲間同士で助け合い、 地域のいろいろな角度で同友会の会員さんたちが影響力を持つ団体になっていきたいですよね。 そういう意味で、 宮城同友会には東北の雄にふさわしい会勢がほしいですね (笑)。
【五十嵐】日常的に仲間づくりをしているのは、 栗原登米地区ですね。 会社づくりと仲間づくりと地域づくりが一体になっている。 商店街がシャッター通りになり、 隣の人が中央へ移り住むという地域の現状を目の前にして、 地域の危機感を共有して自分たちがまず元気になって同じ思いの経営者を増やしている。 地域への思いが栗原登米地区の会員経営者を動かしているのです。
 一方、 仙台においては地域というものが捉えにくいかもしれません。 人口も多いためか、 地域の問題と自社のことが結びつかないのでしょう。 もちろん、 仙台でも自社を通して地域の問題にあたる人たちもおられますが、 いま一度、 地域と自社の関係、 都市部の中の地域というものを考えてみなくてはならないと思います。

“わき”が甘い?

【鋤 柄】仙台はまだまだ余裕があると、 外の人間からはそう見えますね。 宮城、 特に仙台は東北の中心であるのは間違いなく、 人口もそれなりにある。 また、 宮城同友会も相応の歴史がある (1974年設立)。 リーダーもいる。 それなのに1000名の会員数は宮城に見合わないですね。
 厳しいことをあえて言わせていただきますが、 お許しくださいね。 宮城同友会を相撲の力士に例えると、 体格もよくて体力もあって三役を張れる力があるのに、 わきが甘いために平幕の相撲をとる力士のように見えるのです。
【司 会】大変厳しいご指摘です。 しかし、 そこを乗り越えるのが宮城同友会の課題かもしれません。 佐藤代表理事から、 全研の先にある宮城や宮城同友会の展望をお聞かせいただけますか?
【佐 藤】いつの時代も熱意が人を動かすのだと思います。 自分の人生、 自社の経営と同友会の関わりが不明確になると熱意が上がらなくなってしまいます。 私は建設業界にいて、 今まで経験したことがない出来事が次々に起こり、 それを逃げ口上にしたくなる自分がいるのも確かです。 そういう時こそ 「トップが勇気と熱意と実行力を持たなければならない」 と自分に言い聞かせます。 宮城同友会にも能力の高い会員さんがたくさんおられますが、 会員増強も会社経営も、 熱意を常に持てるような働きかけは必要でしょう。 東北は経済的に落ち込んでいるが、 同友会が頑張っているから大丈夫だ、 と地域の人に安心してもらえるような、 また東北の会員さんたちも同友会に入っていて良かったと思えるような動きをつくりたいですね。 東北6県の経済基盤は第一次産業だという共通点がありますから、 ベクトル合わせがしやすいと思います。 全研をチャンスにして東北が一致団結し、 自分たちの故郷を元気にしていく動きに取り組んでいきたいと思います。
【司 会】 「人のせいにしない」 ということは同友会でよく言われることですが、 この時代の中で知らず知らずのうちにそうしてしまうのかもしれません。 それがわきの甘さを生み出しているのかもしれませんね。 そこを超えるためにはどうしたらよいでしょうか?

自ら動きたくなるしくみづくり、人を生かすしくみづくり

【鋤 柄】全ての流れを一人で担うような増強は、 1000名の同友会にはお勧めしません。 かけ声をかける人、 実際に入会に結びつける人、 失敗をフォローして再チャレンジさせる人、 それぞれ人にそれぞれの得意分野があると思いますが、 そういう人たちをチームで生かすことです。 お勧めに行くときもそれぞれの得意分野を持つ2〜3人で行くとか、 とにかく楽しむことですよ。
 わきが甘いのは、 チェックするしくみを見直す必要があります。 人間は自分で自分を評価するときは 「結局ダメだったけど自分は一生懸命声をかけたし、 これくらいでいいかな」 となりがちです。 愛知同友会では現在、 理事会の出席簿を作っています。 理事は38名です。 「参加するか参加しないかは自分の意志だし、 実業家だから出席100%は難しいかもしれないが、 理事ならば8割は出席すること」 と規約に謳い、 年間スケジュールを年度初めに決めています。 出席簿には理事が会員増強したら人数を書き込むところがあって毎月の理事会で回覧します。
 それを見て 「理事ならばかけ声で動くのではなく、 何を言われなくとも日常的に仲間を増やす」 のだとお互いがチェック機能になっています。 出席簿は翌年の役員選考委員会のデータとなって、 出席が8割に満たない人や2〜3年理事を続けていても1人も増強できない人は理事解任となります。
【五十嵐】学んで現場に落として成果を出して、 実体験をふまえてまた改善を図る。 会社もチェックのしくみがないとめざす方向にはいきませんから 「何をやっているのか」 だけではなく 「どこまでできたのか」 という到達点を確認していくことが同友会でも大切ですね。 どんな役職においてもやるべきことを全うしなければ到達できませんし、 何よりも本人に得られるものが少なくなってしまいます。 会社では意識していることですが。 同友会でもそこをしっかり構築していこうと感じています。
【鋤 柄】1000名になれば大きな組織ですから、 大企業のしくみの良いところは参考にしたほうが良いと思いますね。 大企業で強い会社は、 課長職 (現場最前線のリーダー) がしっかりしていて、 組織全体を強くしています。 逆にここが弱いとか、 まだら模様で安定しない会社は伸び悩んでいます。 同友会では現場最前線のリーダーにあたる地区会長がその鍵を握っています。 愛知同友会も2600名ですから、 機能的な組織づくりを常に意識しています。
 愛知同友会の組織目標は3000名です。 各地区からの申告を合算すると毎年10%増ですが、 その積み重ねでここまで来ています。 最初は3000名の目標に実感がなかった人も、 年が経つごとに 「なんか達成する気がしてきたなぁ」 「目標が手に届くところまで来たね」 と目標達成までの過程を楽しんでいます。 行動を積み重ねて目標に近づいたとき、 人はやるべきことを自ら実践します。 ですから、 毎年の繰り返しが蓄積される流れをつくることが大切です。 そういうしくみが宮城同友会に出来て増強が日常活動になれば、 本来の力が発揮されると思いますよ。
 会員増強は一つのマーケティングです。 マーケット分析がなければ戦略から戦術に落とし込んだときに、 どんな日常活動を取ればよいのか明確でなくなってしまいますね。 それに、 いろいろな得意分野を持つ人を生かすにも、 組織が大きくなればしくみがなかったら生かせません。

増強運動は自分が変わったかどうかのバロメーター

【司 会】目標を全体のものにして共有していく、 お互いに確認していくというのは大切だと思います。 増強の論議で必ず出される、 増やす前に減るのをどう抑えるかという意見については、 鋤柄会長はどのような見解をお持ちですか。
【鋤 柄】経営が前に進んでいないとき、 減るほうに向かう論議になりがちですね。 中小企業は、 社長の目の届く範囲でやっていることが多いから、 減らさない経営も可能といえば可能です。 しかしそのやり方には限界がありますね。 例えば、 野球も9人の選手と監督を合わせた10人だけで試合に出たら負けますし、 それを続けたら負ける体質になってしまうのです。 ですから経営の側面から見るとあまり良い傾向ではありません。 仮に、 10年経っても変化も成長もない会社に高卒18才の若者が入社したら育ちますか? 28才、 38才になったら社会に貢献できる人間になっているでしょうか?
 同友会も全く同じです。 新会員が入ってきたら、 先輩会員の存在というのはとても大きいのです。 入会して年月が経つほどに、 変わっていく姿を見せていく立場にあるのです。 増強運動は、 自分が変わっていくことが前提の運動ですし、 賛同してもらえる人を増やすというのは自分が変わった証と言えます。 同友会では自分を鍛え、 成長して、 成長した自分に見合うように会社を変えていく過程を学べると思いますし、 それを実践した人は周りから一目置かれます。 そういう人が増えていくことが、 組織の活性化なのです。
【佐 藤】 『経営指針を創る会』 はそういうキラッと光る会員さんを輩出する役割を担っていると思います。 劇的に変わる人が毎期ごとに生まれて、 それぞれの地域でしっかり実践しています。 ただ、 せっかくの可能性の芽をつんでしまわないためにも、 『創る会』 修了後にお互いに触発し合うことを意識的に組織的にやっていく必要はあるでしょう。 経営指針の取り組みは成文化が目的ではなく、 実践まで落とし込んでさらに良い会社をつくるのが目的ですから。 私も含めてお互いのチェックする場を作って積み重ねていきたいと思います。
【鋤 柄】成果にはなかなか表れないけれども、 エネルギーが蓄積されている時期というのがありますね。 それを諦めずに積み重ねていると、 あるとき一気に花が開きます。
 しかし、 積み重ねを支える人たちが報われるしくみがないと花は開きません。 学んで実践して成果をあげる経営者と、 発言ばかりで実践もせずに責任も取らない経営者。 本人に自覚がなくとも周りはシビアに判断しているでしょう。 実践する努力をした人たちが馬鹿を見ないしくみ、 不公平感が生まれないしくみは大きな組織に必要です。 大きな組織にはそういう厳しさが伴うのです。
 宮城同友会も努力して実績を上げた人が会の中で 「やっていて良かった」 とか 「同友会の理事に選ばれるのは、 実績をあげた証拠」 と思えるようなしくみが必要でしょう。 現状のデータをしっかり把握して、 公明正大に民主的なしくみを作ってください。
 各地同友会がそれぞれに自分たちの特徴や良いところを自覚して、 それを毎年繰り返しながら磨いていく。 そうすれば同友会の3つの目的は達成されていきます。 こういう目的を持っている団体は他にない。 だからこそ、 その誇りをもって宮城の底力が発揮され 「あの人が、 あの会社がいてくれて良かったね」 と言われる経営者たちの団体になるのを、 心から期待しております。
【司 会】いろいろと示唆に富んだお話をありがとうございました。 自分の会社に置きかえても参考になることばかりでした。 宮城同友会も、 全研をきっかけとしてさらに飛躍していきたいと思います。 鋤柄会長、 今日はどうもありがとうございました。

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