No.196(2007年11月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
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発行日/毎月1日発行

中同協 第35回 青全交 in 山口報告

みんなちがってみんないい”〜 人間尊重の経営は“共育”が原点 〜

 9月13日〜14日、 山口県下関市において 「第35回青年経営者全国交流会 (青全交)」 (中同協主催・山口同友会設営) が行われ、 全国から935名の参加者が14の分科会と対談、 映画に学びました。 メインテーマは 「みんなちがってみんないい〜人間尊重の経営は“共育”が原点〜」。 宮城同友会からは21名が参加。 また、 (株)ヴィ・クルー 社長の佐藤全氏 (白石蔵王地区会員) が 『社員と創る“第二創業”への夢 〜人と車の絆をつなぐ企業づくり〜』 をテーマに報告者を務めました (以下、 分科会報告を掲載)。
 来年2008年3月6日〜7日には 「第38回中小企業問題全国研究集会 (全研)」 (中同協主催・宮城同友会設営) が、 宮城で行われます。 懇親会では、 全研実行委員長の日東イシダ(株) 社長の鍋島孝敏氏が中心となって 「第38回全研」 のアピールを全国の参加者に行いました。
 全研開催までいよいよあと4ヶ月!毎月の例会の充実で、 3月6日・7日、 全国からの皆さんを迎えましょう。

第2分科会 『社員と創る“第二創業”への夢
〜 人と車の絆をつなぐ企業づくり 〜』


(株)ヴィ・クルー 代表取締役 佐藤  全 氏

はじめに

 私の好きな言葉に【Be daring Be first Be different 〜勇気を持って誰よりも先に人と違ったことをする〜】という言葉があります。 周りが出来ないから行動に移さないのではなく、 自分で決断し誰かがやっていなくても行動に移すという想いで社員と共に挑戦し続けてきました。 その取り組みついてお話させて頂きます。

絶望の中でも語り続けた夢

 (株)オートパルは昭和48年2月に設立した会社で、 社員数45名、 業務内容はバス、 乗用車の車両販売と車体整備 (板金・塗装・電装)、 製品開発・販売、 解体、 及びパーツの販売をやっていました。
 私が入社した当時の会社は倒産寸前でした。 年商以上の設備投資をして東日本で一番大きなバス専門の修理工場 (バスセンター) を建設したことが原因です。 地元ではあの会社はまもなく潰れる、 潰れたという噂が飛び交い、 取引先は次第に減り全ての取引が辛い条件になっていきました。 しかし、 何がなんでもよい会社をつくりたいと 「3年後に東北一の会社にしよう、 どんなに厳しいことがあっても俺は逃げない、 絶対によい会社にしてみせる」 と社員の前で宣言し、 徹底的に社員に夢を語りました。

現場の改革、 わが社の DNA はお客様の立場になって考えること

 当時の現場は敷地面積では東日本最大を誇っても年間2〜3台しか仕事が入ってこない、 仕事の質も悪い、 社員は挨拶もなくしゃべりながら仕事をしては夕方5時半には帰るという状況でした。 社員が誇りを持って仕事が出来る環境づくりが自分の仕事だと考え取り組んできました。 この頃はとにかく仕事の数をこなし、 クレーム時には失敗は成功の種だとその場でクレーム会議を開き一つ一つの仕事を積み上げていきました。 また、 常に 「わが社のお客様は誰か?」 という問いかけをし、 「バス会社・ディーラーも大切なお客様だがバスに乗る人の立場になって考えよう」 と確認しました。 ありがたいことにお客様から紹介を頂くようになり、 当社のファンも増え、 債務超過を脱出したのはこの頃です。 そして、 何よりも潰れそうな会社だった俺たちでもやれば出来るのだという社員の自信が生まれたことが非常に大きなことでした。

同友会との出会い、 経営指針成文化

 (株)オートパルの専務の時に倒産寸前の状況から東北・東日本でトップシェアを獲るまでになりましたが、 今後エリア拡大か他地域への進出か、 と今後の方向性が見えなくなった時に出会ったのが同友会でした。 当時の不安は@会社の3年後が見えない、 A財務分析が本当の意味で理解していない、 Bメーカーの下請け体質による将来への不安、 C後継者という立場でも経営責任はとってきたが、 もし社長になった時にそのままやっていけるのか、 という4つの不安があり、 次の年に 「第15期経営指針を創る会」 を受講し、 経営指針を成文化しました。

メーカーへの業態転換・新たな扉を開く製品開発

 成文化後に感じたことは価格決定権の必要性でした。 一修理工場からメーカーへ@人、 車、 地球へ元気を与えられる、 A一生使い続けられる安心を創る、 B再び生まれ変われる循環を創る、 という3つの定義でメーカーを目指す決意をします。 当時の経営指針書にはメーカーへの転換・元気商品の開発ということを明記していましたが、 具体的にどんな商品にするのかは分かりませんでした。
 そんな時、 現場で路肩灯 (巻き込み防止の為に後ろのタイヤを照らす装置) を目にします。 これは鉄製で腐食しやすく電球の玉切れが多いという消耗品でした。 これを腐らず、 玉切れが起こらない製品にする為にはどうしたら良いかと考えるようになりました。 周りからも無理だと言われていましたが、 どうせ誰もつくれないのであれば自分がつくると一念発起し、 製品開発に没頭していきます。 一から3次元設計、 光学、 材料ついて勉強し、 試行錯誤を繰り返しました。 完成までに2年間を費やし、 鉄を樹脂に、 電球を LED に変えた従来の電球の3割増の照度の 『SHINEMARKER』 を完成させました。 当時、 自動車部品の LED 照明器具としてははじめての製品でした。

新たな可能性を追求した分社の決断

 製品が完成し、 全国販売をきっかけに商標登録の問題から社名変更か分社かという議論に発展していきます。 最終的には新たな可能性を追求していくという視点に立ち、 (株)オートパルを車両販売部門 (バス、 小型車両の販売・整備) と(株)ヴィ・クルーをアフター部門 (車体整備、 製品開発・販売、 リサイクルパーツ販売) とに分け、 27名の社員を連れて分社しました。 この27名がほぼ10年間新卒で採り続けてきた社員で、 平均年齢が28歳という非常に若い現場になりました。 会社再建中の中でも新卒採用を続けてこなければ現在の展開はありませんでした。 現在この2社は経営理念を共有し、 私は(株)オートパルの非常勤取締役を兼ねています。

『人・車・地球を元気にするメーカー』 の事業戦略・ビジョン

 経営理念ができたことにより自社の事業定義が 『人・車・地球を元気にするメーカー』 へと変化し、 様々な事業展開が生まれてきました。
 @製品開発・販売事業です。 路肩灯 (SHINEMARKAR) をはじめ、 サイドマーカー (TURNLIGHT)、 車外灯 (SPACEMARKAR) など長く使用可能で最終的に資源が循環できることを開発コンセプトに進めています。
 Aリサイクルパーツ販売事業です。 『環境』 という視点で見ると日本は資源のない国です。 バスは乗用車と違い非常に高価 (新車で約4000万〜4500万円) で、 限界まで使用した後はスクラップするか、 海外へ輸出されている状況。 また、 『バス会社』 という視点で見ると規制緩和による運賃の価格競争の激化で、 安全面へコストをかけられないという状況があり、 当社のネットワークを生かしこれらを何とか解決したいと事業を立ち上げました。 これは日本ではじめての取り組みになります。
 BB (business) to B (business) オンライン決済によるインターネットショッピングモール事業です。 これは信販会社をはじめ数社と取り組む事業で@一つのサイトで小売と卸売りが可能、 A法人名義で分割での支払いが可能、 B信販会社と共同の取り組みで貸し倒れが無いという特徴があります。 バス会社の経営が厳しい中、 24時間どこでもネット上で修理が必要な時にリサイクルパーツを分割払いで購入し修理が出来ればバスを止めずに済むことになります。 修理工場から見ても新しい仕事が生まれます。 これは日本で初めての取り組みで今後、 金融決済の革命になっていくと思います。
 経営理念を追求していく中でこの全ての土俵づくりをしていくのが当社の事業定義です。 この土俵づくりが結果、 環境保全にもつながり安心した社会をつくれると考えています。

経営者の責任は夢を持てる会社つくること

 単に売上を伸ばす・明日の仕事を探すということだけでは目的は小さい。 その先にある理念が必要です。 また、 どんなに素晴らしい戦略であっても社員の協力と成長が無ければ絶対成功はありません。 経営状況が厳しかった時の社員は生活をする為だけに働いていたと思います。 当然です。 夢を持って成長していきたいと思っている人が潰れそうな会社には来ません。 そんな中でも入社し、 今まで頑張ってくれたことを本当に感謝しています。 経営姿勢を客観的に見つめ、 自社がお客様・業界・地域にとって必要とされる会社になっているかを考えていくと、 やはりよい会社をつくっていくしかないのです。 私の夢は現在働いている社員の子ども達と一緒に働くことです。 親の仕事を見てヴィ・クルーで働きたいと言ってもらえるような会社を社員と一緒につくっていきたいと思っています。



 

中同協 第35回青年経営者全国交流会 in 山口 に参加して

(株)ゾウケイ社 小島幸文 (経営者)

 私自身、 中同協の全国三大行事に初めて参加し、 非常に学ぶものが多い山口青全交でした。 分科会では、 第8分科会に参加しました。
 岩手同友会の(有)アンドーコーポレーションさんの報告で、 「地域づくり」 がテーマでした。 安藤社長の郷土を思う強い気持ちが、 人を動かし地域を動かし、 やがて自主制作というカタチになり、 参加者全員の想いの詰まった映画の完成に至りました。 完成後の上映会を通しても、 地域活性化に貢献していく…。 氏の映画製作を通して、 スタッフ (住民) 一人一人の参加意識の高さが、 結果として良い映画作りにつながった、 会社経営も同様といいます。 よい脚本は=経営指針書であり、 よいスタッフやキャストは社員である、 よい経営をする事も、 よい映画を作る事も、 多くの人が関わって成立っている以上、 日々の地道な取組が (参加意識) 最も大切である事を改めて、 報告者と共に学び合う事ができました。
 二日目の全体会では 「ヘレンケラーを知っていますか」 という大変感動的な映画を鑑賞する事ができ、 偶然にも前日の分科会の事もあり、 決して順風とは言えないなか、 この映画づくりに関る山本プロデューサーの話にも 「一貫した想いの強さ」 の共通点を感じました。
 金子みすずの詩からくる、 今回の山口青全交テーマ 「みんなちがってみんないい」 がイベントの随所に感じられる演出がほどこされ、 山口同友会の会員さん一人一人が、 青全交を成功させようとする意気込みがビシビシ伝わった素晴らしい会に参加でき、 本当に良い経験ができたと感じています。
 また、 宮城同友会は他県からいろんな意味で 「注目度の非常に高い」 事も知りました。 来年3月の 「第38回全研」 を宮城同友会としてはまず、 成功裡の内に終了させなくてはならないと誓いを新たに帰途につきました。

(株)佐元工務店 佐藤真生 (幹部社員)

 今回は2回目の全国大会参加でした。 “気付き”と“学び”の期待を持って初めての地である山口県下関市へと向かいました。
 私が参加したのは 「不動産業界に新しい風を〜社員全員辞職で気付いたこと〜」 の第6分科会で、 社員教育についての分科会です。
 営業マンから突然社長に転進し、 試行錯誤を繰り返す中で突然全社員が辞めてしまい、 そこから 「人の問題」 を深く突き詰めるようになった、 と話す北端社長の報告は、 わが身に置き換えると気付きの多い内容でした。 全社員が辞めた原因であると語っていた“自分の傲慢さ”“自分だけがよければよい、 という驕り”。 気付いていないだけで今の自分にも当てはまることではないか?本当に部下の立場で物事を考えているか?
 “部下が全員辞めてしまう”といった経験はまだありませんが、 自分で気付き、 自分を変えていく努力をしなければ人の上に立つことはできないと改めて学ばせて頂きました。
 また、 どん底の状況から這い上がる為に“自分を変え”“社員と本気でぶつかり”その中で、“人と社会の役に立ってこそ自社の存在価値がある”との理念・考えに行き着いたという話にも気付きがありました。 それは、 いまだ自分自身の中に一本芯の通った“仕事の理念”がないということです。 ここが不明確では、 もちろん社員教育うんぬん以前の問題です。 まだまだ社員・部下とのぶつかりあいが足りないと反省すると共に、 自身の“考え方”を深め、 明確にする必要性を痛感させられました。
 最後に、 多くを学ぶ機会を与えてくれた自社と同友会に心から感謝し、 今回の“気付き”を今後の業務に活かしていきたいと思います。 有難うございました。

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