No.196(2007年11月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
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発行日/毎月1日発行

新入社員フォローアップ研修会

「どうせ仕事をするなら楽しく、 精一杯に」


マルチプライ(株) 土井裕貴さん (入社3年目)

鼻っぱしらが強かった一年目

 大学生のとき、 お金を稼げるようになって早く一人前になりたいと思っていました。 何かしたいことがとりたててあったわけではなく、 人とのコミュニケーションが好きという理由で営業職を志望し、 マルチプライ(株)に入社することになりました。
 マルチプライは清掃資材の販売、 清掃管理、 エレベーターの保守点検などを行っている会社です。 その中で私は清掃資材の営業になりました。 初めて触れるものばかりで、 商品を覚えるので精一杯でした。 ワックスや洗剤だけで数十種類、 それにほうき、 モップ……、 多くの商品から売れ筋を選び出し、 それらの説明をまとめてカタログを作って商品を覚えて、 上司について営業が始まりました。
 三ヶ月が経っていよいよ一人で営業に出ることになったとき 「挨拶だけは元気にやってこい」 と言われて送り出されました。 私は野球部出身ですし、 人との会話も得意だから問題ないと思っていたのですが、 いざお客さまのところへ行くと挨拶の声が出ないのです。 お客様を目の前にしたら頭が真っ白になり、 自分でも何を説明しているのか訳が分からなくなる始末でした。 会社に戻るとすぐ、 上司に 「もう一度同行させてほしい」 とお願いしました。 上司の説明や応対を見て勉強し直して、 少しはお客様と会話できるようになったものの、 思ったようにできないのがとても歯がゆく、 悔しかったです。 また、 名刺に 「新入社員研修中」 と書いてあるのが嫌で、 会社からもお客様からもまだ一人前として見られていないのが悔しくてたまりませんでした。
 そういう中で、 初めての注文をいただけたときは本当に嬉しかった。 自分の説明で 「じゃあ、 試してみるから、 持ってきて」 と言っていただけたときは、 お客様に認めてもらえた気がしました。 それが初めて感じた営業の楽しさです。

手厳しい一言で自分の現状を知らされた二年目

 二年目には6人の後輩ができました。 営業に4人が配属され、 上司と私の2人だけだった部署が活気づきました。 後輩に教えていく立場にもなり、 去年にはできなかったことができるようになっていて嬉しいものの、 後輩に質問されて分からないこともたくさんあり、 いい加減な答えはできないので勉強しました。 後輩に教えることで自分の知識やスキルも増え、 一人前の気分でいました。
 あるとき、 後輩と一緒にお客様のところへ行って、 分からないことを質問され答えられないことがありました。 そのお客様は久しぶりにお伺いするお客様でしたが 「そんなことも知らないで、 よく営業やれているな」 とか 「現場のこと、 何も知らないだろう」 と、 後輩の前で厳しい指摘を受けて帰ってきました。
 新入社員の頃は、 自分がつき合いやすいお客様を訪問する傾向がありましたし、 「分からないので、 調べてきます」 というのも通用しました。 新入社員が入ってきたことで顧客数を増やしていかなければならないと、 半ば使命感のようなものを持って訪問したお客様からの手厳しい指摘です。 後輩の手前、 恥ずかしさもありましたが、 それ以上に 「もう知識を詰めこむだけではダメだ、 去年の営業のしかたとはもう既に違う」 と思いました。
 そのお客様のところへはその後も訪問し続けました。 何度も足蹴にされましたが、 お客様に 「たいしたことのない会社と営業マンだな」 と思われたくなかったのです。 実はこのお客様とは現在、 良いお付き合いをさせていただいています。 これも営業の楽しさを知る出来事でした。 あのときに私に 「お前はまだまだだよ」 と教えてくれたお客様に感謝しています。

部署全体を見ることになった三年目

 そして現在、 三年目を迎えました。 会社を辞めようと本気で思い悩んだのは今年が初めてで、 その時期をちょうど過ぎたところでこの報告をしています。
 今年は直属の上司が異動になり、 私が事実上の営業リーダーとなりました。 今までは自分の目標達成に専念すればよかったのが、 今年は私が責任者となって売上計画を作ることになり、 今までに体験したことのないプレッシャーを感じました。 売上はどうしたら上がるものなのか? どうしたら達成するのか? ……悩んでいる私の様子を見かねた後輩や他部署の同期も親身になって考えてくれ、 なんとか目標と年間計画をつくりました。
 新しい期を迎え、 後輩をどう使っていけばよいかを社長に相談しました。 社長は 「人は使うものではない、 それでは人はついてこない。 まずは自分自身がどうありたいかを考えろ。 そして模範とされる人間をめざせ」。 自分で考えろ、 何を? 今年も新入社員が入り、 二年目を迎えた後輩たちについてもらうことになっています。 そういう状況の中で、 どうすれば目標達成できるのか? 誰にも相談できず、 苦痛な毎日が続きました。 今すぐ逃げ出したい…。 他の会社へ勤めた友人たちの話は良く聞こえるし、 上司がそばにいないことやまだ三年目の自分にこんな大役を与える会社への不満が頭でうず巻いて、 退職以外のことを考えられなくなりました。 当然、 仕事への集中力も生まれません。 そんな私に社長の声が飛んできました。 私の心の中を分かっているかのように 「おまえは別のことを考えているだろう。 悩んでいるなら、 その悩みを忘れるくらい一生懸命になってみろ! おまえはまだ何もしていない」。 ハッとしました。 確かに考えていることは打開策ではなく苦しさからどう逃げるかだけだったからです。
 社長の言葉で吹っ切れた私は、 リーダーとしてとにかく何かを変えようと思いました。 お客様に 「買うよ」 と言っていただける瞬間はやっぱり嬉しいし、 楽しい! その楽しみを目標とどうつなげるか。 それで考えたのが【あと一軒の営業】です。 営業をしていると落ち込むときがあります。 そういう時こそ 「あと一軒、 訪問してみよう」 「あと一軒、 アポをとってみよう」 とがんばってみる。 それを部署で切磋琢磨しあい、 励ましあいながら実行しています。 後輩たちが楽しみながら仕事をしているのは見ていて嬉しいし、 自分も後輩たちに追い越されるものかと気持ちが引き締まります。 後輩からは常に新しいパワーをもらっています。
 こうして振り返ってみると、 私は上司、 先輩・後輩、 お客様と、 多くの人に支えられ、 多くの人の考え方に影響を受けていることに気がつきます。 出会いの中で人に喜ばれたり感謝されたりした結果がお給料になり、 お客様により喜ばれる仕事を積み重ねれば大きな自信になります。 お給料と自信を両立できたとき、 生活全体が充実していくのだろうと思います。 そのためには 「自分はどうなりたいのかを明確に持って、 一生懸命に、 そして楽しく仕事に取り組む」 ことが大切なのだと最近は思います。 私は 「必要とされるリーダー」 になりたい。 それを楽しみながら達成していきたいと思っています。

今月の内容

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