鼻っぱしらが強かった一年目
大学生のとき、 お金を稼げるようになって早く一人前になりたいと思っていました。 何かしたいことがとりたててあったわけではなく、 人とのコミュニケーションが好きという理由で営業職を志望し、 マルチプライ(株)に入社することになりました。
マルチプライは清掃資材の販売、 清掃管理、 エレベーターの保守点検などを行っている会社です。 その中で私は清掃資材の営業になりました。 初めて触れるものばかりで、 商品を覚えるので精一杯でした。 ワックスや洗剤だけで数十種類、 それにほうき、 モップ……、 多くの商品から売れ筋を選び出し、 それらの説明をまとめてカタログを作って商品を覚えて、 上司について営業が始まりました。
三ヶ月が経っていよいよ一人で営業に出ることになったとき 「挨拶だけは元気にやってこい」 と言われて送り出されました。 私は野球部出身ですし、 人との会話も得意だから問題ないと思っていたのですが、 いざお客さまのところへ行くと挨拶の声が出ないのです。 お客様を目の前にしたら頭が真っ白になり、 自分でも何を説明しているのか訳が分からなくなる始末でした。 会社に戻るとすぐ、 上司に 「もう一度同行させてほしい」 とお願いしました。 上司の説明や応対を見て勉強し直して、 少しはお客様と会話できるようになったものの、 思ったようにできないのがとても歯がゆく、 悔しかったです。 また、 名刺に 「新入社員研修中」 と書いてあるのが嫌で、 会社からもお客様からもまだ一人前として見られていないのが悔しくてたまりませんでした。
そういう中で、 初めての注文をいただけたときは本当に嬉しかった。 自分の説明で 「じゃあ、 試してみるから、 持ってきて」 と言っていただけたときは、 お客様に認めてもらえた気がしました。 それが初めて感じた営業の楽しさです。
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