景況調査より 〔 寄 稿 〕

宮城同友会の景況調査にご協力いただいている東北大学経済学研究科の吉田助教授より景況調査の見方、 活用法について寄稿いただきました。

経営情報としての景況調査の活用法
− 経営の健康診断として −

東北大学経済学研究科 助教授 吉 田  浩

1. はじめに

  同友会の行った、 景況調査に回答してくださった企業には、 全体集計結果とともに、 それぞれの会員企業がどのように回答をしたのかを併せて資料を作成して、 還元しています。 ここでは、 この景況調査の結果をどのように見たらいいのか、 どう活用したらいいのかについて、 健康診断の場合を例にとり、 考えてみたいと思います。

2. 他社の平均と比較することの意味

  還元された景況調査の見方として、 全体の平均値と自社の回答を比べるということはあげられます。 これは、 全体と比べて自社のポジションを知るということになります。 この場合、 平均より上か下かということよりも、 「この業界で、 このぐらいの規模なら、 どのような経営状況が当たり前なのか」 を知るという観点から結果を見ることが考えられます。 健康診断でいえば、 単に体重が多いかどうかではなく、 「この年齢で、 このぐらいの身長なら、 このぐらいの体重が標準」 ということを見た後に、 だからあなたは 「太りすぎ、 やせすぎ」 ということが言えるのと同じです。

3. これまでの自社と比較することの意味

  次に、 他社との比較ばかりでは十分でないということも考えてみたいと思います。 つまり、 他社の平均値からすれば自社が上回っている結果でも、 これまでの自社との比較では業績は悪化している可能性があるということです。 健康でいえば、 「ここのところの体調は、 いつもと違うな」 ということに気がつくことが、 大病の早期発見につながるということです。 このためには、 景況調査に継続的に回答いただき、 自社の日頃の経営状況に関する情報を蓄積して、 その変化にいち早く気づくことが大切と言えるでしょう。


4. おわりに

  健康診断を100回受けても、 治療ではないので病気を防いだり、 治癒したりすることは出来ません。 しかし、 自分の身体の状況に関する情報が的確であれば、 早期に回復のための適切な処置が出来ることになります。 景況調査も同様で、 回答しただけではその効果も半減です。 還元された結果を吟味し、 経営の方向を調整するのに活かして調査は役目を果たしていると言えます。
  自社に関する情報を収集しない経営は、 ちょうど倉庫にあといくつ在庫があるかも調べずに、 行き当たりばったりの製造、 販売活動をしているのと同じです。 これまで、 情報というと社外の情報を得ることと思っていた経営者の方も多かったかもしれませんが、 自社の情報を的確に把握することもとても大事と言えます。
  私たち調査を集計する側も、 みなさんの経営に役に立つ情報を還元するために、 今後も分かりやすくそして参考になる還元資料、 指標の工夫をして行きたいと思います。

※2005年下半期 (7月〜12月) の景況アンケートはどうゆうみやぎ2006年5月号に掲載。
  2006年上半期 (1月〜6月) の景況アンケートはどうゆうみやぎ2006年8月号に掲載予定です。


■きめ細かな学び合いで企業経営に活力を

 

■第33回定時総会記念講演

■新入社員共育研修

 

■「同友会大学」 第9期生募集のご案内
■景況調査より 〔 寄 稿 〕   ■お知らせ