No.200(2008年3月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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発行日/毎月1日発行

夢文コンクール 〜 入賞作品紹介 〜

夢文コンクールの授賞式

 この「夢文コンクール」は、共同求人委員会が主催し、高校生のうちに「働くこと」、「生きること」を真剣に考えてもらおうと16年前から開催しているものです。これまで約2300通に及ぶ「夢文」が送られてきましたが、どの文章も若々しく新鮮な目で「働く」ということについて考えたものばかりです。今年もたくさんの作品が寄せられましたが、その中から最優秀賞、優秀賞に選ばれた3作品をご紹介します。
 なお、最優秀賞(1編)・優秀賞(2編)・佳作(3編)に入賞した皆さんには、12/7(金)に仙台市シルバーセンターで開催された『人づくり例会』(共同求人・社員共育・経営労働の3委員会が主催)で表彰を行いました。

最優秀賞「仕事をする母の姿を見て」

仙台白百合学園高等学校 3年 橋恵梨香

 「温泉に行きたいと思った時点で心はある意味、病んでいる。」
 これは私の母がいつも口にする言葉である。私の母は、江戸時代から続く老舗旅館の女将だ。女将という仕事に誇りを持ち、常にお客さまの心を緩和して差し上げるよう努めている母のこの言葉は、どこか重みがあり自己の責務を感じる。それと同時に将来の旅館像を冷静に見つめているように思えた。
 母はお客さまの心の寂しさや疲れの緩和をサポートできるよう「精神対話士」の資格を取得した。精神対話士とは、孤独感や喪失感を持った方に対するメンタルケアのスペシャリストだ。臨床心理士のように治療として問題解決をするのではなく、対話士は聞き役に徹し、本人の気持ちの向上と気力の充実をサポートする立場だ。これからの旅館は、食事をして宴会をし、お風呂に入るという楽しみだけの時代ではないと母は考えている。温泉に入り、旅館に泊ることで、心もきれいに治して差し上げたいという願いから、この資格を取得したのだ。この資格を取得したことで、「心のエステ」をお客さまにご提供することができるのだ。
 私は当初、接客の接客の仕事にはたして精神対話士のような資格が必要なのか疑問に感じた。ただお客さまと接し、お客さまのご要望に気付き、そして、そのご要望にこたえて差し上げることが、接客業であり、旅館の女将の仕事だと思っていた。しかしそれは甘い考えだったのだ。幼い頃から仕事をする母の姿を見て、母の見様見まねで接客に携わってきた。私が幼少の頃は「かわいいから」ということや「まだ子どもだから、しょうがない」などの理由で大体の失敗は許されてきた。しかし、今はどんな理由があろうと失敗は許されない。私は母から、たった一つの失敗のせいで何百人ものお客さまを失ってしまうという接客の厳しさを学んだ。その時、精神対話士という資格を取得したことで持つことができた、良い意味での自信と女将への責任が母から強く伝わってきたのだ。
 精神対話士の資格を取得することは、勿論お客さまの心のケアをして差し上げることができるということだ。しかし、資格取得により責任感が強まり、モチベーションが上がったということも事実だと思う。実際、資格取得のために学校へ通い努力を惜しまず勉強した母は、資格を取得した時、仕事への意欲がより高まっていた。そして勉強のかいあり、聞き上手になり、お客様の心をともすことができるようになった。母とお客さまの会話のやりとりを見ると、母と接しているお客さまは「この人は自分の話を聞きたがってくれているな。」と感じているようで、生き生きと母との会話を楽しむように話していた。
 元アナウンサーだった母は、大変話し上手で講演依頼も多い。様々な題材で講演活動を続けていることも、仕事をする母のもう一つの顔だ。臨機応変に聞き上手と話し上手の切り換えができ、そして「言葉」というものに対して敏感だ。母は一つ一つの言葉には魂が宿っている、という「言霊」を信じている。何気ない言葉でお客様を傷つけるようなことがあってはいけない、と気を付けているのだ。女将業、司会業、講演活動と様々な面で活躍する母を私は偉大だと思う。そして、母から接客の厳しさを学んできたと同時に「人と出会える喜び」という楽しさも肌でふれてきた。「ありがとう」と目の前で感謝して頂けるのだから、接客業ほどカルマの落ちる仕事はないと私は思う。
 私にとって仕事をする母の存在は大きい。三人の娘の母として、妻として、嫁として、そして精神対話士を含めた女将として、四役を完璧にこなしている。そんな母を大変誇りに思う。そして、母から学んだ接客の厳しさと喜びを将来に生かそうと、私も接客のできる仕事がしたいと強く希望している。今の私だったら到底、母のように完璧に仕事をこなすことはできないだろう。しかし、いつかこの老舗旅館をつげるような、十六代目女将に誇りを持ち働けるような立派な女性になりたい、これがこれから大人へ一歩近づく私の夢だ。母のような内面からきらきら輝く人になり、仕事を楽しくこなす大人になりたい、そう強く思う。

優秀賞 「就きたい仕事」

東北工業大学高等学校 3年 安達 勇

 私の将来の夢は、数学の教師になることです。しかし、数学の教師とは言っても数学が数学だけが好きだからという理由だけではありません。最近話題になっているいじめ問題や自殺などの問題を解決したいと思っているからです。
 その夢である教師になるためには、やらなければならない事があります。それは学力はもちろん、人の心や感情を読み必死になって人の気持ちを考えられる人間にならないといけないという事です。私はこのように考えるようになったのも、信頼できる先生がいたからです。私が中学生の頃に家庭のことで悩んでいるときに、先生が相談にのってくれたからで、私は先生の存在には心からの尊敬と感謝の念を頂いています。それからというもの多くの先生方との出会いを大切にして行こうと考えて生活をしてきました。そして、いじめや自殺などのニュースを見てから、あの頃私を先生が救ってくれたように、悩みを抱えている人達の力に少しでもなれるのであればと思う気持ちが日を追うごとに強くなりました。しかし今は、先生に対して生徒が反抗するような時代になっています。私は、もちろんそのような傾向に歯止めをかけなければならないと思っています。私自身も、反抗しそうになったこともあり、又、授業がつまらない、大変だと思うこともあり、正直にいうと、日々の授業はワンパターンのようにも感じます。しかし、当たり前に勉強を教えてくれるからこそ、そのありがたさに気づけないのだろうと思います。しかし私は、ふとした瞬間気づく事ができました。それは、先生が授業中に良く雑談をするのですが、その雑談の中に人生の教訓やテストに関わる分野の事などたくさんあります。なにげない一時間という授業の中で、如何に教科書に載っていない話や先生が歩んできた足跡を聞くことにより、今の自分を改めて知る事ができます。また、教師の仕事は奥が深く多くの困難を伴う事ではありますが、それだけに大きなやりがいを感じることができると思います。
 私は、冒頭から述べているように教師という職業に就きたいと願っているのですが、願っているだけでは、夢は決して掴む事は出来ません。最初に私自身がなさなければいけないこと、改めるべき点をしっかりと見つめ、自信を日々向上させる努力を積み重ねて行く必要があります。私は、人から「積極性がなく、おとなしく、覇気がない。」と言われるので、その点を改善しなければなりません。しかし、私自身は、全く積極性のない人間とは思っていません。私は、確かに気軽に人と話す事はあまりせず、積極性がないというよりも人を避けているように思われます。しかし、話すよりは聞く方がどちらかといえば好きなので、そのように相手に思われているということは、教師を志す私が改めるべき点だと考えます。
 次に、社交的でない部分を変えていかなければなりません。前に述べたように、あまり積極的でないため、社交的でないと思います。でも、教師の仕事に就くには、話す事はとても大切で、話をし、手を差延べ、相手のことを考えておもいやる気持ちを持って、それを伝えることが必要です。以上の点を改善し、夢へ近づけて行きたいと思います。
 最後に、如何なる時でも中学生の時から考えていた夢に向かって、努力を惜しまず、邁進して行きたいと思います。

優秀賞 「私の夢」

仙台白百合学園高等学校 3年 早坂朋美

 私の夢は看護師として「国境なき医師団」で働くことである。
 私は小さい頃から友だちがすり傷を負った時に傷口の手当てをすることや、幼い子の世話をすることが好きだった。そのためか、将来は人と関わる仕事をして、いつまでも人を思いやる心を持ち続けていたいと考えていた。
 私がこの仕事に憧れを抱いたのは高校二年生の時である。叔母、いとこ、そして一番身近にいる母が看護師であることから、私が看護に対して興味を抱くことは自然な流れであったのかもしれない。しかし、母からは「看護師なんかになってはいけない。」という反対意見が出された。確かに、看護師という職業は、肉体的にも精神的にも大変なのかもしれない。最近騒がれている「看護師不足」も、看護師の仕事の過酷さを表していると思う。だが、私は諦めたくはなかった。むしろ、厳しさを理由に逃げることが嫌だった。物事はやってみなければ分からないことばかりなので、挑戦してみようと自分自身に誓ったのである。
 では、私は一体どんな看護師を目指せばいいのかと考えていた時、ふと留学先でであった日本人の先生を思い出した。彼女は今もなおオーストラリアで中・高生を対象に日本語を教えている。オーストラリアでは日本語教育が盛んなので、たくさんの日本人がオーストラリアで日本語教師として働いているのだ。彼女も日本語教師の一人であり、私自身も彼女の授業を受けたことがある。私は、オーストラリアに行くまで、日本人がこのような形で国際的に働いていることを知らなかったため、とても驚いた。しかし、日本人が働いている姿を見て、かっこいいと感じた。私には海外で働く日本人は日本で働いている人よりも生き生きしているように思え、何よりも自分の仕事に誇りを持っていると感じた。その姿から、私も国際的に働いて、自分を必要としている人のために、国際貢献をしたいと思うようになったのである。
 今、世界のあちこちで、看護師としてはたらく日本人が活躍している。それは、青年海外協力隊としてであったり、国境なき医師団としてであったりとさまざまである。
 世界には、日本とは違って、まだまだ医療の面で発達していない国々が多い。こういった国々では、ワクチンや適切な医療処置を受けられないがために命を落とす人々がたくさんいる。私は、そういった国の人々に、マザーテレサのような愛の精神と奉仕の心で接することの出来る看護師になりたいと強く願っている。
 看護師という仕事上、医師のように直接病気を治したりすることはできないかも知れない。でも、看護師は医師とは違って患者さんの心を癒すことができる。
 夢を夢で終わらせないということが私のモットーであり、目標でもある。やりがいのある看護師という仕事を天職とすることが、今の私の目標である。

「夢文コンクール」 の受賞作品および受賞者は下記のとおりです。

●最優秀賞
  「仕事をする母の姿を見て」  仙台白百合学園高等学校 3 年 橋恵梨香さん

●優秀賞
  「就きたい仕事」       東北工業大学高等学校 3 年  安達 勇さん
  「私の夢」          仙台白百合学園高等学校 3 年 早坂朋美さん

●佳作
  「将来の夢」         東北工業大学高等学校 3 年  高橋雄紀さん
  「私の夢」          仙台白百合学園高等学校 3 年 熊谷めぐみさん
  「仕事をする母の姿を見て」  常盤木学園高等学校 3 年   佐藤友美さん


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