No.200(2008年3月号)

どうゆう みやぎ

宮城県中小企業家同友会
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【同友会3つの目的】
●よい会社をつくろう。
●よい経営者になろう。
●よい経営環境をつくろう。
発行日/毎月1日発行

例会報告A 石巻支部11月例会

経営指針はなぜ必要か?
〜経営指針の成文化で学んだこと〜

<パネリスト>
  シグマ建工(株) 社長 阿部 一郎氏
  (有)境 運 輸 社長 境  俊一氏
  佐藤造船所    佐藤 文彦氏
<司   会>
  (株)あいのや 社長 相野谷真一氏

● 「現状を変えたい」 その切実な思いが自分を動かした

【司会】経営指針を成文化されるにあたり、 お三方に共通している宮城同友会 『経営指針を創る会 (以下 『創る会』)』 受講までの経緯についてお聞きします。
【佐藤】同友会に入会してから、 「今まで何をしていたのか」 などを自分に問いかけるようになりました。 この仕事に携わっているのも、 両親や祖父母が命がけでこの仕事を守ってきたからこそと考えるようになり、 自分が今やらなければならないことは何なのか、 自分だからこそ出来ることは何だろうか、 自分たちが思い描いたものを実現できないのは何故なのか、 それらのはじまりは佐藤造船所の生き様を理念として成文化することであると確信し、 『創る会』 を受講しました。
【境】同友会入会とほぼ同時に受講しました。 当時の会社の状況は大変だと思えることが続いており、 トレーラーの全焼事故・社員2名の病気入院。 20年間勤務したベテラン社員が心筋梗塞で倒れたことで大きな支えを失ってしまい、 新しい社員と一緒に会社を作っていくにはどうしたらよいかと悩んでいたときであり、 『創る会』 受講を決めました。
【阿部】2006年秋の経営研究集会に参加し、 『創る会』 を受講されたという報告者の劇的な変化に興味をもったのがきっかけです。 私は大学を卒業して石巻市内の建設会社に20年勤務した後、 独立創業しました。 今までは利益だけを追求しており、 施主・会社・協力業者・自分という四者の間にあるものを損得勘定でしか見ていませんでした。 社員をパートナーと思っていない、 もちろん会話もない、 自分が会社そのものと言わんばかりの姿勢でした。

●自分、社員、家族と真剣に向き合う

【司会】受講される中で悩みや気付いたこと、 経営者として変わったことを具体的な例を交えてお願いします。
【境】指針の成文化に際し、 何のために経営しているのか、 会社をどうしたいのかという問いかけに、 自分は何も答えることが出来ませんでした。 しかし、 これらの問いかけから改めて、 取引先や社員に助けられ生きていることに気付き、 最も大事なことは、 社員を幸せにすることであり、 社員とともに大きな目的を持ち、 そこを目指す環境を作る、 そして会社を長く繁栄させるための努力をすることが、 経営者の仕事なのではないかと思うようになりました。 『創る会』 受講前までは会社は自分のものだと思っており、 続けるのもやめるのも自分の自由だと思っていました。 指針の成文化をする中で、 会社は公のもので、 だから責任を持った経営をしていく必要があることに気付きました。 社員に対し 「何のために仕事をしているのか」、 と問いかけたところ、 家族を幸せにするため、 何かを買うためなど、 必ず何か目標を持って仕事をしていました。 みんなのそれぞれの目標と会社の目標を重ね合わせて、 目的が一つできたならばみんなの夢も大きくなり、 社内に信頼関係も生まれればお互いに頑張ることが出来る。 みんなの力が一つになると考えました。
【阿部】 「シグマ建工はあなたが経営しなくても良いのではないか?」 という問いかけに反論できませんでした。 そういう私に与えられた課題は、 女房との真剣に話し合ってみることでした。 その中から自分というものが少し見えて来ました。 「地域のため、 地域の方々の生活の向上」 が自分の人生の目標であることに気付き、 利己的な自分との闘いが続きました。
 私が考える魅力ある地域とは 「親子三代で生活ができる」 ということに凝縮されます。 心豊かに子どもたちが育ち、 コミュニティができ、 そこに文化ができる。 そういう地域づくりが地域貢献であると確信し、 一つでも良いからそこに事業を通して貢献しようと思うようになりました。 社員に対しても自分の本当の姿、 心をさらけだして話をしなければならないと気づくことが出来ました。 人は 「出来なくて当たり前」 とも教えて頂きました。 まず 「社員の言動や仕事を受けとめ、 尊重しよう」 と考え、 耳を傾けました。 そして彼らに任せてみる、 ことから始めました。
【佐藤】 『創る会』 を受講しながら、 弟と真剣に向かい合いました。 その結果、 支えてもらっていたのは実は自分の方だったことに気付きました。 自分の最優先課題は最大のパートナーである弟と、 全ての現状を共有することが必要と考え、 財務も数値化しました。 限られた短期間の中でたたき台を作り、 新しい仲間を会社に迎え入れることができるように、 しっかりした理念をつくっていこうと思いました。 『創る会』 の毎月一回の講義のほかに任意で補講も行い、 そのときも同期生仲間や先輩たちが必死に手を引いてくれました。 それがなければわが社の指針書は完成しなかったと思います。
 受講時の経営指針は期末から半年が過ぎた頃に出来上がりましたが、 現在は経営指針書に沿って事業を進めながら、 弟と二人でもっと中身の濃いものにするために話し合い確認しあっているところです。

●会社に、地域に・・・、豊かな心を育む企業をめざす

【司会】経営理念に込めた思いや、 経営指針を社内で発表してからの社員やお客様との関わり方について、 お聞かせください。
【阿部】発表会では各自の目標を発表してもらったのですが、 「経営理念に沿って自分も協力していきたい」 という発言もあり、 少しは社員との間に信頼関係が生まれてきたのかなと感じました。 世間話から始まって会社に対する私の考えを私から話すように努めてみて、 社員も自分の考えを私に伝えてくれるようになり、 考え方や行動にも自立心が芽生えてきたように感じます。 朝礼のスピーチも建設的で前向きになってきました。 お客様に対しては指針書と 『志企業のすすめ』 という本をお届けしました。 信頼を深めることが出来たと思います。 協力業者にも無理なお願いはせず、 双方にメリットがあるように工夫をしなければならないという姿勢に変わったのだと思います。 最近、 社員から 「共存・共栄」 という言葉が私の口からよく出るようになったと言われました。 相野谷支部長に 「人を育てて、 立派な社長になれば、 立派な地域貢献になるのではないか」 と言われたことがあります、 目先の損得ではなく、 みんなで地域を良くしていくという大きな視野で物事を見ていきたいと思います。
【境】目に見えないことを大切にしようと言い合っています。 お客様のところに車を停めるときでも、 邪魔にならない場所に停める気持ちを持てる社員を育てる、 荷物もすぐに積める状態に整理されているとか、 そういう小さいけれども心のこもったサービスをしていきたいと思います。 環境問題についても、 アイドリングを減らす装置を購入し、 排気ガスを減少させる取組みを始めたほか、 社員も燃料節約のために回転数を気にするなどの工夫をしてくれています。 一番の変化は社員が自ら営業してくるようになり、 『創る会』 を受講してから新しい仕事が月200万円くらい増えました。
【佐藤】船大工は命を預かり守るという誇りと使命があったからこそ、 お客様からの厚い信頼があり、 80年も続けることが出来たと思います。 経営指針を成文化しながら、 これまで支えてくださったお客様や地域の方々との関わりをより一層大切にして、 信頼される技術やサービスでお役に立つ努力をしていこうと思いました。
 経営理念には、 伝統技術や地域ならではの自然環境・船文化を生かし、 船を使った安全で楽しい企画を準備して、 豊かな心を育める地域づくりに貢献していくという心を込めました。 本当の伝統技術はどんな時代でも生かせるものであり、 それをやらなかったら自分たちはこれを受け継ぐ資格がない、 という思いに達することが出来ました。

●幸せは“一人”ではなく“みんな”でつくる

【司会】最後に今後の展望を、 経営指針を踏まえてお話しください。
【佐藤】単なる船造りから、 お客さんの困りごとを一つずつ解決していく造船所になっていきたいです。 平成12年は売上げが46%ダウンでしたが、 『創る会』 に参加した年は27%アップ、 今期は35%アップすることが出来ました。 たまたま修繕を頼んでくださったお客様が多く一過性のものではありますが、 「おたくでなければこれは任せられない」 と言っていただき、 祖父や父が築きあげてきた信頼が土台にあるからだと改めて思っています。 これからは掲げた 「夢」 を実現しようと、 弟とも話合っています。
【境】経営指針を常に意識し、 基本方針・個別方針を着々と実行していきたいと思います。 目に見えない部分を大切にしてお客様を増やし、 厳しい環境下でも健全経営が出来る強い企業体質を作って行きたいと思っております。
【阿部】建築業は20〜40社が協力して一つの建物を造ります。 「お客様に感動を提供する」 ことは業者間の協力がないと不可能です。 自分の思い、 会社の思いを理解してもらい、 共感を得て、 心からの協力をもらう。 そして自分たちもお客様に感動される企業を目指したいと思います。 ですから、 指針の舵取りがぶれると社員、 協力会社、 お客様に迷惑をかけてしまう、 経営指針はみんなを引っぱっていく旗印だと思っています。

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