白石蔵王地区5月例会

若者が輝く地域を目指して

 
〜 企業と学校で若者を育てる 〜


<パ  ネ  ラ  ー>



<コーディネーター>

日 東 イ シ ダ(株)

(有)蔵王プロヴァンスファーム
宮城県蔵王高等学校
(株)オ ー ト パ ル
社長 鍋島 孝敏氏
(宮城同友会共同求人委員長)
社長 倉繁 正人氏
校長 石井 正樹氏
専務 佐藤  全氏

昔と今、 子どもたちは変わったか

【佐藤】昨年白石蔵王地区の役員を中心にはじめて地域の学校を訪問し、 子どもたちが地元で働く場が少ないという現実を知りました。 地元企業として若者を受け入れられる企業づくりをしていくと同時に企業と学校がお互いを知る機会として、 今年県南地域で合同企業説明会ができないかと考えています。 単なる採用活動としてではなく、 子どもたち、 先生たちに地元の企業を知ってもらう。 その中から働くことを自分の就職活動と合わせて考えてもらえるような企業説明会にしたいと考えております。 それではパネラーの皆さん、 自己紹介をお願いします。
【鍋島】日東イシダ(株)の鍋島です。 重さをはかるハカリを製造、 販売しております。 社員数は、 今年の新入社員8名を含め140名です。 平成7年に同友会に入会し、 翌年から共同求人委員会に参加しました。 30年程前から会社独自で新卒採用を行っていましたが、 同友会で新卒採用を始めて10年になります。 ここ7〜8年の定着率は、 17〜18名採用し12〜13名が残っていますので74.5%と上がっています。 同友会の共同求人活動とは、 単に中小企業が共同で新卒採用をするということではなく、 社員ひとりひとりの人生に責任をもって、 いかに社員が定着する社風をつくっていくかです。 同友会での共同求人活動がわが社の新卒採用の定着を高めていると改めて感じています。
【倉繁】(有)蔵王プロヴァンスファームの倉繁です。 会社は蔵王高原、 標高500mのところに位置する牧場です。 平成7年に農家形態から有限会社に法人化しました。 現在、 社員数は6名です。 設立当初は規模も小さく家族経営でしたが、 3年目頃から忙しくなりハローワークなどから中途採用をおこなっていました。 ところが、 2年〜3年で社員が辞めていくという状況の中で同友会に出会い、 2年前に経営理念を創ったことを機に社員を雇用することを基本から考える機会を得ました。 それまでは私の指示通りに働いてくれる人が良い社員と考えていましたがそこに大きな問題があったと気付かされました。 現在は社員と今後どんな会社にしていきたいのかと話をしていく中で定着しつつあるというのが現状です。
【石井】蔵王高等学校は平成8年度に開校し、 今年で11年目になります。
1年生はクラス単位で授業をうけますが、 2年生からは単位制を導入しております。 就職と進学は半々です。 地元就職希望が多く内定率が96%、 進学はほぼ100%です。
  今の世の中、 学校だけでは人を育てられません。 学校教育と企業の接点を見つけてどうにか未来ある若者を地元で育てていきたい、 そう考えて同友会の白石蔵王地区の例会に参加させていただき1年が経過しました。 企業の方々の考えをグループ討論などで聞かせていただき、 毎回大変勉強になっております。
  近年、 高校に入学するまでの社会的な体験が少なくなっているため、 高校で教えることが多くなってきていると感じます。 狭い集団の中でのおしゃべりは得意ですが、 初対面の人に、 どのような言葉を使ったら良いのかが分からず、 相手の言葉を理解するまでにも時間がかかります。 しかし、 しっかりと教えれば素直に受け取りますので、 私から見て30数年前の生徒と現在の生徒は何も変わっていません。
【鍋島】石井校長先生が言われるように30年前の新入社員と現在では本質的に変わってはいません。 しかし、 社会から受ける影響が明らかに違ってきているように思います。 その社会をつくってきたのは我々大人たちです。 企業としてひとつはその子どもたちを社員として受け止め一から育てていく覚悟を持つこと。 もうひとつは、 大げさに言えば社会そのものを変えていかなければならない。 中小企業に日本を変えられるのかと思われるかも知れませんが、 宮城同友会には1000社の会社があり、 大なり小なり社員を雇用して経営をしています。 そういう企業が社会を変えなければならないと考えて動き出せば社会は変わってくるのではないでしょうか。 近年親が子どもを育てられないと言われますが、 その親の多くは我々中小企業の従業員です。 そういう観点でわが社は社員教育を考えております。
【倉繁】我が社は勤務時間も朝5時からでそんなに高い給料も払えないという職場環境ですから目的意識がないと長く続けられないのが現状です。 そんな中、 自社の理念を創り、 4, 5年前から新卒採用に取り組んできました。 我が社では、 経営理念に 『蔵王の自然環境に基づいた…』 ということを掲げています。 宮城県の酪農施設でありながら広々とした牧草地に牛が見えないよねと、 今年から放牧に取り組みました。 その取り組みには社員の意見も多く含まれています。 新卒採用を通して、 指示待ちだった社員が積極的に関わるようになってきたというのが現状です。

仕事を体感
〜インターンシップで働く喜びを〜

【佐藤】採用の際、 求人票や応募書類から企業や生徒を判断するのは難しく、 実際に入社してみると違うというミスマッチを防ぐためにインターンシップがあります。 これはどう捉えていますか。
【鍋島】我々が考えるインターンシップの目的は、 社会がどうなっているのかを知ってもらいたいということです。 テレビで CM を流しているところだけが企業なのではなくて、 自分の住んでいる町にどんな企業があって、 何を目的に事業活動しているのか、 そこで働く社員は仕事を通してどんな関わり、 育ちあい方をしているのかを肌で感じてもらいたいのです。
  新入社員には 『収入のためだけに会社に時間を提供し見返りに給料を得る。 そんなことだけのためにあなたを採用するのではないし、 人はそんなことのために生きているのではないはずだ』 と語りかけています。 働く目的をぜひ見つけて欲しいのです。 学校にいる間にそういうことを考えるきっかけが必要ではないでしょうか。
【倉繁】わが社ではインターンシップで仕事の内容を知ってもらうため一日体験をおこなっています。 朝5時に起きて牛の世話をして、 合宿のような生活になるので、 先輩社員と一晩だけでも夜遅くまで話をすることによって、 実際に働くって大変だなあと思ってもらうことが大切だと思います。 今まで5時に寝ることはあっても、 5時に起きることはなかった、 でも働くっていいよなと思ってもらえればしめたものだと思います。
【石井】自分が働くことに対して実感が持てていない生徒が比較的多くなっているように思います。 蔵王高校の場合はインターンシップだけではなく1年生の時に職業人インタビューを行います。 『どうしてこの仕事を選んだのですか?辛かったこと、 よかったことは何ですか?』 そういう質問から入っていきます。 その後職業体験学習をおこないますが、 デイサービスセンターに行った生徒の感想ですが 「この2日間を通して、 私はこの施設で働いて…。 やりがいを感じる仕事でした。」 と、 この 「やりがい」 という言葉を書いたところに、 この生徒は非常に良いものを持ち帰ったなと感じました。 体験でしか得られないものはのちに大きな財産になります。

企業の役割・学校の役割

【佐藤】では今の若者にとっていちばん必要なものは何でしょう。 石井先生いかがですか。
【石井】インターンシップを通して、 自分がつくったものがお客さんに喜んでもらえるのだと一緒に働いた方から教えていただき、 彼ら自身が実感してきたということがあります。 私が同友会さんにお世話になっているのは、 生徒を育てるのに学校と企業がどう連携できるかという思いからです。 仕事をしたいと思っている生徒に仕事の場を与えていただけば彼らの可能性はもっと伸びるのではないかという思いがあります。
  入社して1年ぐらいすると、 『この企業に入ってよかった』 という声を聞きます。 働くことが生きがいなのだということが分かってきます。 そういう機会を与えていただきたいのです。 私たち学校は、 それと合わせて社会人として一人前になる基礎の基礎を作っていると思っています。 挨拶は大事、 決まったことはやらなくてはならない、 社会のルールは守らなければならないということを、 実際に身につけさせて送り出さなければなりません。 口幅ったいことを申しあげるようですが、 企業さんは、 そんな彼らを一人前の人間に鍛えていただければと思っています。
【倉繁】高校生活を通じて彼らの適性を知っている先生方から、 この子はこういう仕事なら合うのではないかと、 ぜひ推薦してもらいたいと感じております。 「好きこそ物の上手なれ」 という言葉がありますが、 自分に適していないと、 やめてしまうことも多いのかなと感じます。 私たちは就職率何%という数字ではなく、 実際に生徒さんをあずかっていくという気持ちで接していきたいと思っています。
【佐藤】企業と学校がお互いを知る機会が必要ですね。 鍋島社長は若者に必要なものはなんだと考えていますか。
【鍋島】中小企業は大企業の下請け、 もしくは大企業の途中過程としか社会的に認知されていない。 我々はそうじゃない。 ひとつに独立した企業として理念を掲げ、 目指すところを明確に社員にも分かるように成文化し、 企業活動をしている。 決して売上や利益追求だけが企業の目的ではありません。 そういう企業が白石蔵王地区でも数十社、 宮城県内には約1000社あるということをご理解いただきたいのです。 自助努力で社員と経営者が目的をもって企業活動をしている。 そういう活動をしている企業が世の中にあるということを先生ご自身がまずご理解いただいて、 それを子どもたちに伝えていただきたい。 働くことそのものが人を成長させるのだという基礎の部分を学校で教えていただきたいのです。 毎日悪戦苦闘しながらやっているのが企業ですが、 基礎能力さえしっかりと教えてくだされば後は任せてくださいというのが現時点での本心です。

地域文化を育み若者を育てる

【佐藤】企業は学校の成績が優秀な人間が欲しいのではなく、 自らの可能性を伸ばせる人間が欲しいのです。 IQの天才が企業の天才ではない、 学校ではそんなに成績は優秀でなくとも、 経営者や幹部社員になっているのです。 現在企業と学校が向き合おうと様々な取り組みを行っておりますが、 学校と企業が同じ方向を向いて、 地域で若者を育てる必要があると思います。 最後に今後の抱負をお願いします。
【倉繁】毎年ひとりは新卒を採用していこうと考えています。 教えるよりも自分でやってしまったほうが早いのですが自らが先輩になり後輩に仕事を教えることで人間は成長するものです。 そのためには、 社員が増えて赤字というのは困りますので、 私の仕事はどうやって新しい仕事をつくり出し、 毎年新卒採用ができる企業にしていくかが務めだと思っております。
【石井】生徒は自分が育ったこの地域が好きです。 就職する多くの生徒は、 地元に就職したいと考えています。 自分が育ったこの地域の文化に根ざして、 学校と企業、 そして地域の方々と一緒に若者を育てていければと考えています。
  私のスローガンは、 『社会の中に学校を、 学校の中に社会を』 です。 今の時代、 学校の中だけで生徒を育てることはできません。 生徒に学校の外での活動に参加させ体験させたり、 社会の方々に学校にきていただき生徒に話をしていただいたり、 我々と懇談していただいたり、 こういうことによって、 生徒が社会に対して様々な認識をもっていただけるのではないかと思います。
【鍋島】我々自身もこの地域から逃げずに、 地域の文化を育みながら事業活動を継続していきたい、 そのためには次世代を担う若者がどうしても必要です。 学校と企業が一緒にできることがあるのではないでしょうか。 我々の果たす役割も重要で、 それに対応できる企業づくりをしていかなければなりません。 改めて同友会のテーマとして中心に掲げて取り組んでいきたいと考えています。



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〜 部会活動活発化 〜

 

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