家族みんなで気持ちよくご来店してほしいから
コーヒーのサービスも行っています。 これはもう今では全国的にも行われていますが、 10年前はほとんどなかったサービスです。
当時私は、 ガソリンスタンドで洗車中に待合室のなかで雑誌を読みながらコーヒーを飲む時間がとても好きでした。 ところが、 ある日そのサービスをやめてしまったのです。 僕はそこのスタンドに来る理由がなくなってしまったので、 同じお店をやっている人間としてこれはやってみようと思ったのです。
私が気になったのは、 旦那さんと奥さんで買い物に来て、 旦那さんは車に残っているか外でタバコを吸っていて、 店に入ってくるというケースはあまりないことでした。 お店をやっている以上は、 家族みんなが行きたいと思うような店づくりをしていきたいと、 さっそくコーヒー豆屋さんに 「私たちは無料でお客さんにコーヒーを出したい」 と言ったら、 「それはいい話だ。 私たちも協賛します」 と破格の値段でコーヒー豆を出してくれました。 機械もそのコーヒー豆屋さんが協力してくれました。 そのうちに、 そのコーヒー豆を販売するのもいいのではと思い、 必要なグラム単位で値段を設定し、 挽きたてを2割だけ仕入れ値にプラスさせていただいてお客さんに提供しましたら、 とても喜ばれました。 無料でお出ししているので古い在庫はなく常に新しい豆なわけです。 グラム単位でどこよりも安く買えて、 試飲はいくらでも出来ます。 このコーヒーの売り上げも好調で、 うちで負担しようと思っていたサービス分が埋まるようになりました。 それから、 大人だけでなくこどもさんにも何かできないかということで、 ディスペンサーを用意してジュースを飲んでもらうことにしました。
従業員にとっても、 パンの焼き上がりまで待ってもらうときに 「すいません」 と言うしかないなかで、 「コーヒーでも飲んでお待ちください」 と一言添えるきっかけができたり、 気が利く人になるとコーヒーを入れてお客さんにさしあげたりとサービスのしやすい環境をつくるということにもつながりました。
地域とのつながりと人材を育む
「こどもパン教室」
「こどもパン教室」 という取り組みを続けています。 父の日や母の日に何かイベントのようなものはできないかと、 福笑いのようにパンのパーツを作ってあげて、 それを組み合わせてお父さんやお母さんの顔を作るのです。 その後に膨らませて、 焼いて包装して手渡すのですが、 会場のお店の2階の狭い休憩室の床が抜けてしまうのではと思うほど盛況で、 お父さんお母さんは一生懸命ビデオを撮りながら、 そしてこどもたちもかわいいエプロン姿でやってくるのです。
これに関しては、 お金をいただくということも大切かなと思いました。 無料であればどんな形でも喜んでもらえますが、 それだと私たちの努力が欠けてしまうので、 利益を上げるためではなく、 きちんとお金をいただきながらどう喜んでいただくかを考えました。
最初の頃は私が中心になって行いました。 私もまだ駆け出しだったので 「先生」 と呼ばれる機会もないし、 そう呼ばれるような人間ではないと思っていましたが、 意外にこどもたちが 「先生、 先生」 と呼んでくれて、 ものすごく気持ちがいいのです (笑)。 「これはいい!ずっとやっていこう」 と思っていたら、 今店長をやっているサポート役の男性社員がとてもやりたそうな顔をしていました (笑)。 「次回はどうしようか?」 と話したら、 「僕にやらせてください!」 と言うので、 「じゃあ、 やってみたら」 ということで始めたら僕なんかよりもずっと上手だったので、 サポート役と合わせてみんなで順番にやっていくことになりました。 こうしたなかで従業員の違う一面を見ることができます。 生き生きと楽しそうにやっていますし、 現場に帰ってきてからが大きく違います。 現場では注意されたり指示されたりばかりの人が、 自分の仕事に対するプライドや価値がよく分かるようになり、 現場に帰ってもその勢いが持続するようになりました。
「どうしたら売り上げが上がるか?儲けられるか?」 でなく 「お客様は何を求めているか?どうしたら喜ばれるか?」 ということを基本に経営することが大切だと思います。 トップが金儲けを考えれば、 従業員もただの手段、 こうやればOKということだけで考えますから、 同じことをやっていても気持ちが入ってなかったり、 一言が足りなかったりという小さなことで結果が大きく変わってくると私は思います。
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